尹錫悦前大統領 内乱首謀罪で初公判

2025/04/14 更新: 2025/04/14

韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領に対する初公判が14日、ソウル中央地裁で開かれた。2024年12月の非常戒厳令発令をめぐり、内乱首謀罪(韓国刑法第87条)で起訴されたもので、大統領に対する同罪適用は韓国史上初。首謀者と認定された場合、死刑または無期懲役・無期禁錮が科される可能性がある。

問題の発端は、尹氏が昨年12月3日に「国家安全保障の危機」を理由として非常戒厳令を宣言したことにある。国民の抗議や国会の反対を受け、発令から6時間後に撤回した。12月14日には国会が弾劾案を可決し、大統領職は停止された。

韓国憲法裁判所は今年4月4日、尹氏が「憲法を擁護する義務に違反し、国民の政治的基本権を侵害した」として弾劾を妥当と判断し、罷免を決定した。尹氏は起訴されたすべての容疑を否認している。11日には官邸を退去し、裁判所から徒歩圏にある私邸に戻っている。

聯合ニュースによると、公判当日、尹氏は黒の警備車でソウル中央地裁に到着し、地下駐車場から入廷。午前10時ごろに開廷し、尹氏は紺色のスーツ姿で被告席に着席した。法廷内での撮影や録音は、裁判所命令により禁止された。

検察は、戒厳令が軍の動員や国会機能の停止を含む「憲法秩序を破壊する反乱行為」だったと主張し、内乱首謀罪で起訴。有罪となれば無期懲役または死刑が科される。一方、弁護側は、北朝鮮の挑発や国内の混乱に対応するための「法的枠組みに基づく統治行為」であったと反論している。

この日の公判には軍高官2人が証人として出廷予定で、その一人、韓国首都防衛司令部・第1警備団の趙成鉉(チョ・ソンヒョン)団長は、2月の憲法裁弾劾審理で「国会会期中の議員を強制連行するよう命じられた」と証言している。これに関して尹氏は、自らの関与を否定している。

今回の事件は、保守派と進歩(リベラル)派の深い政治的対立を改めて浮き彫りにし、軍や国家機関に対する国民の不信を一層強める結果となっている。

清川茜
エポックタイムズ記者。経済、金融と社会問題について執筆している。大学では日本語と経営学を専攻。
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