アメリカ「最大の切り札」 中国共産党に対して今こそ使う時

2025/06/12 更新: 2025/06/13

中国問題の専門家は、アメリカが中国共産党(中共)政権の「超限戦」に対抗するため、強制的な臓器収奪の実態を暴露すべき時だと述べている。

アメリカと中国は戦争状態にあると専門家は指摘する。これは銃弾による戦争ではなく、経済、サイバー空間、文化、情報など、ほぼあらゆる戦略的領域における「超限戦」だ。特に情報戦は、人々が何を知るかを決定し、人々が何を考えるかを左右し、最終的に他のすべての領域での人々の行動を決定づけている。

中共は、包括的な大きな物語を植え付けることから、個々の批判者を中傷することに至るまで、さまざまなレベルで情報戦を展開している。

しかし、いくつかの領域では、中共政権は物語を構築できない。専門家によれば、その行為があまりに凄惨であるため、唯一の選択肢は情報を隠蔽することだという。まさにこうした領域こそ、米国が中共政権に対して厳しい、場合によっては致命的な圧力をかけうる部分であり、もし米国が本気になれば可能だと複数の中国専門家がエポックタイムズに語っている。

「彼らが今行っている最も闇が深い犯罪は臓器収奪だ」と、元米陸軍微生物学者でエポックタイムズ寄稿者のショーン・リン氏は語る。彼はまた、独立系団体「the Present Danger: China(現在の危機:中国)」委員会のメンバーでもある。

「もしかすると、臓器収奪よりもさらに悪質で、より深刻な犯罪が存在する可能性もある。しかし、それは私たちには分からない。だからこそ、中共はこうした事実がさらに明るみに出て、国際社会に広く認知されることを非常に恐れている」

中共が良心の囚人を臓器目的で殺害しているという事実は、2006年、内部告発者の証言に基づきエポックタイムズが最初に報じた。それ以来、この犯罪の証拠は雪だるま式に増え、2019年に英国の独立民衆法廷が「疑う余地のない事実として認定された」と結論づけた。中国の利益を生む移植産業の臓器は、主に中共に迫害されている法輪功修煉者や他の反体制派から得られていると同法廷は結論づけている。

それでも今日に至るまで、いかなる政府もこの問題に関する正式な調査結果を公表していない。

「西側諸国の政府はこれらすべての情報を真剣に受け止めなかった。彼らは依然として『経済的自由を中国にもたらせば、やがて中国も政治体制を変えるだろう』と希望的観測を抱いていた」と、中国問題評論家でエポックタイムズ中国語版上級編集者のナン・スー氏は述べた。

彼によれば、三つの要因が状況を変えた。第一に、COVID-19パンデミックでは、中国が他国の対応に役立つ重要情報を遮断したことで、無責任かつ悪意ある国家であることが明らかになった。第二に、2022年の香港の独立性の切り崩しによって、中国が50年間は「一国二制度」を守るという約束を守らないことが示された。そして、ロシア・ウクライナ戦争での中共のロシア支援は、中国が米欧の敵側に立っていることを意味する。

近年、米議会は中国での臓器収奪を非難する複数の決議を採択したが、「いずれも実効性はなかった」とナン氏は語る。

「もし米政府がこの問題を本気で受け止め、調査に時間と資金を投じれば、それこそ北京の指導者たちが常に恐れてきたことだ」と彼は述べた。

実際、この問題は対中国際対立における「キーポイント」だと、中国政治専門家でエポックタイムズ寄稿者のヘン・ハー氏は指摘する。この問題は、西側諸国が中共を厳しく追及することを可能にするという。

(左から)元国務次官補(民主・人権・労働担当)、中国で強制的に臓器を摘出された法輪功学習者の程培明氏、そして強制臓器移植の調査官チャールズ・リー博士。2024年8月9日、ワシントンで記者会見に臨む。Madalina Vasiliu/The Epoch Times

不公正な貿易慣行や軍事拡張のような問題では、中共は批判を無視できる。仮に中共が台湾侵攻やフィリピンとの戦争を起こしても、「誰かが中国を擁護し、言い訳を見つけることができる」と彼は言う。

「しかし、臓器収奪に関しては、誰も擁護できない」

これほど明確に一方が道徳的優位を取れる問題は稀だと専門家らは示唆する。

「問題は、米政府がこれを暴露し、行動を起こす強い意志を持つかどうかだ」とリン氏は語る。

「中共は今、分岐点にあることを認識している。なぜなら、現トランプ政権は中共に対して最もタカ派的なチームを擁しているからだ」

事態はすでに動き始めている。先月、米下院は「法輪功保護法」と「臓器収奪阻止法」を可決した。これらが法律となれば、臓器収奪に関与した個人への制裁や刑事罰が科され、中共との移植協力を回避する方針が定められる。また、複数の連邦機関に対しこの問題に関する報告書作成が義務付けられる。

リン氏は、中共政権がホロコーストの歴史的前例をよく認識していると述べる。

「中共は、法輪功迫害がホロコーストのようなものになることを本当に恐れている」と彼は語った。

メッセンジャーを撃て

臓器収奪問題を説明できない中共は、被害者の信用を失墜させることで情報を抑え込もうとしていると専門家は述べる。

エポックタイムズの過去の報道によれば、中共党首の習近平は2022年、法輪功の海外での信用を失墜させるため、法的手段や西側メディア・SNSでの悪意ある物語の流布を含む新たなキャンペーンを指示した。「彼らは米国で法輪功の評判を落とし、米政府が法輪功と協力して中共の犯罪を暴露することをためらわせようとしている」とリン氏は語る。

中共はこの問題を特に緊急で重要なものと見なしている。なぜなら、こうした批判が自分たちの最大の弱点である「正統性の欠如」を突くものだからだとヘン氏は述べている。

ウォルター・リード陸軍研究所ウイルス疾患部門の元研究室長、ショーン・リン博士。(大紀元)

かつて中国の王朝は、天命から正統性を得ていた。現代においては、正統性は通常、選挙に由来するものだとヘン氏は指摘する。しかし、中共はその両方を否定している。1960年代から70年代にかけての毛沢東による壊滅的な文化大革命の後、革命的な約束が尽きた今、党は経済成長を疑似的な正統性の源として利用している。

中国経済は大規模な不動産バブル崩壊、帳簿外の地方政府融資機構の債務不履行、外国投資の不足、そして米国との貿易戦争によって揺らいでおり、中共はすでに重大な課題に直面している。リン氏は、もし中共の犯罪が徹底的に明るみに出れば、政権が崩壊する可能性もあると述べている。

「中国経済がハードランディングし崩壊したとしても、中共の指導部が存在する限り、彼らはこの厳しい時期を乗り切ろうとするだろう。しかし、決定的な問題は、彼らが世界や中国国民に対して、ある程度の正統性を維持し続ける必要があるということだ」とリン氏は語る。

「もし中国国内で無実の法輪功修煉者に対する彼らの犯罪が完全に暴露されれば、誰もそのような政府を受け入れることはできず、中共は内部からさえ崩壊する可能性がある」。

Petr Svab
ニューヨーク担当記者。以前は政治、経済、教育、法執行機関など国内のトピックを担当。
関連特集: 百家評論