中国最高峰の理工系大学・清華大学で1994年に発生した「タリウム中毒事件」の被害者、朱令(しゅれい、享年50)さんの遺骨が8月12日、北京市の公共墓地に納められた。両親は「愛娘は眠ったが、無念は晴れていない。私たちは犯人を追い続ける」と誓いを新たにした。
朱令さんは清華大学化学専攻の才女として将来を嘱望されていたが、在学中に故意に毒を盛られた。一夜にして健康も才能も未来も奪われ、脳に深刻な損傷を負い、下肢は麻痺、視力もほとんど失い、知能は6歳程度に退行。以後30年近く寝たきりで過ごし、2023年に死去した。

捜査は迷宮入り、権力の影
最大の疑いは、ルームメイトの孫維(そんい、女)に向けられていた。孫は当時、大学で厳しく管理されていたタリウムに接触できる立場にあり、動機は「嫉妬」とも指摘された。しかし警察は「証拠不足」として立件せず、孫は改名して海外に移住。いまだ裁きを受けていない。
事件が立件されなかった背景には、孫の強力な家庭の後ろ盾があるとされる。祖父の孫越崎(そんえつせい)は江沢民ら中共の上層部と親交を持っていたとされ、当時、江は「私が生きている限り、あなたの孫娘は牢に入らぬ」と約束したとの証言も残されている。
消えぬ世論の怒り
中国のネット上では、事件が長年迷宮入りしていることに今も強い憤りが噴出している。最高検察院が両親の申請を異例に受理したこともあったが、結局は進展しなかった。
朱令の名は、「司法の闇」と「権力の介入」を象徴する存在として、いまも中国社会に深く刻まれている。

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