メキシコ 中国車に50%関税へ 国内雇用保護目線か

2025/09/11 更新: 2025/09/11

メキシコのマルセロ・エブラルド経済相は、アジア諸国から輸入される自動車への関税を現行の20%から50%に引き上げる方針を明らかにした。

今年上半期、メキシコは中国製自動車の最大の輸入国となった。関税引き上げは中国車の対メキシコ輸出に大きな打撃を与えるとみられる。

エブラルド氏はイベント出席時の発言で「すでに関税は課している。今後は認められた上限まで引き上げる」と説明した。50%という水準はWTOの規定に沿っており、国内の雇用を守ることが目的だという。中国車は「我々の基準価格を下回る価格」でメキシコ市場に流入していると指摘した。

トランプ政権は、中国の安価な製品がメキシコ経由でアメリカに流入するのを防ぐため、メキシコに関税引き上げを求めてきた。これを受け、メキシコ政府は「北米の要塞(Fortress North America)」構想を掲げ、中国製品の輸入制限と並行して米・メキシコ・カナダの三国間での貿易・製造業協力を強化する方針を打ち出している。

また、アメリカでは今年4月から輸入自動車への25%追加関税が発効しており、メキシコで生産された車両はUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定))の原産地規則を満たせば免除されるが、基準を満たさない場合は25%の関税が課される。トランプ氏は選挙戦の際から「必要な関税はすべて課す。中国車がメキシコ経由でアメリカに入ることは許さない」と発言していた。

クラウディア・シェインバウム大統領も先に、メキシコと貿易協定を結んでいない国に対して関税を導入する可能性に言及しており、これは地元製造業を強化する「メキシコ計画」の一環とされる。

中国国内ではEV市場の競争が激化し、BYDをはじめとするメーカーは価格競争にさらされて利益率が低下。市場が飽和状態にある中で輸出に活路を求めているが、欧米は相次いで反ダンピング措置を導入した。カナダ、トルコ、ブラジルも同様に対抗策を取り、さらにウクライナ戦争後に経済的に中国依存を強めてきたロシアでさえ、自国企業を守るため中国車の大量流入に歯止めをかけざるを得なくなっている。

中国自動車工業協会の統計によると、2025年上半期の中国車輸出先トップ3はメキシコ、アラブ首長国連邦(UAE)、ロシア。それぞれ23万4500台、21万4300台、17万1千台だった。メキシコ向けは前年同期比30.7%増、UAE向けは58.5%増となった一方、ロシア向けは59.2%減少した。

各国で高まる保護主義の流れは、中国車の輸出戦略に一層の修正を迫っている。

張婷
楊旭
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