アメリカの大手メディア企業「ペンスキー・メディア・コーポレーション(Penske Media Corporation=PMC)」は9月12日、ワシントンD.C.の連邦裁判所においてグーグル(Google)を提訴した。PMCは、GoogleのAI要約機能「AI Overviews」がメディア側の同意を得ずにニュース記事を利用した結果、同社のサイトへのアクセス数と収益が大幅に減少したと主張している。
今回の訴訟は、アメリカで大手出版社がGoogleのAI自動要約機能を巡って提起した初めての法的措置である。Googleのこの機能は親会社アルファベット(Alphabet)が開発したもので、利用者がGoogle Chromeで情報を検索すると、検索結果の最上部にAIによる要約が表示される仕組みとなっている。
ペンスキー・メディア・コーポレーションは、ハリウッドの実業家一族ペンスキー家により所有されており、傘下メディアが発信する記事やコンテンツは毎月およそ1億2千万人のオンライン訪問者を集めている。同社が保有する主なブランドには、音楽雑誌「Rolling Stone」、音楽チャート誌「Billboard」、エンターテインメント週刊誌「Variety」、映画・芸能ニュースサイト「Deadline」、ファッション誌「Women’s Wear Daily(WWD)」などが含まれる。
オーナーのジェイ・ペンスキー氏は、「AIによる要約の表示がアクセスを奪い、広告収入や購読料収入を急減させている」と述べた。PMCは訴状で、Googleが出版社の記事をAI要約に利用する時、検索結果にメディアサイトを反映させていると主張している。約20%のGoogle検索結果は本来PMCのウェブサイトへリンクされていたはずだが、現在、検索ページ上でAI自動生成の要約が直接表示されることになった。
同社は、将来的にこの割合がさらに拡大すると見込んでいる。また、AI要約機能によりウェブサイトへの訪問者が分散し、検索経由のアクセス数の減少が広告収入に直結し、2024年末の時点で収益はピーク時の3分の1以下に落ち込んでいるとしている。
さらに訴訟は、Googleがアメリカの検索市場をほぼ独占(シェア約90%)し、強い交渉力を持つ点を指摘した。Googleはこの優位性を背景に、出版社に記事内容の要約利用やAI学習への提供を事実上認めさせており、同意しない場合には検索流入を失うリスクを負っているとする。訴状は、Googleがこうした条件を押し付けられるのは市場における支配的立場のためであり、本来なら記事利用に対して対価を支払うべきだと強調している。
ペンスキー氏は「我々にはデジタルメディアの未来と業界の健全性を守る責任がある。Googleの現行のやり方はそれを脅かしている」とも述べた。
Google側の反論
AI要約機能に関する提訴に対し、Googleは「機能はユーザーの検索体験を改善し、より多くのウェブサイトへのアクセスを促進している」と主張した。
Googleの広報担当者は「AI要約はユーザーの利便性を高めると同時に、利用機会を増やし、コンテンツ制作者に新たな露出の場を提供している」と説明した上で、今後は自社の立場を守り、原告の主張に反論していく方針を明らかにした。
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