アメリカのトランプ大統領は9月19日、米軍がアメリカ南方司令部(USSOUTHCOM)の管轄区域内で麻薬密輸に関与する船舶を攻撃し、船上の3人を死亡させたと発表した。米軍による麻薬密輸船への攻撃は今月に入って3度目であるが、トランプ氏は今回の攻撃が実施された正確な場所を明らかにしていない。
トランプ氏は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で「私の命令に基づき、国防長官は『指定されたテロ組織』に関連し、南方司令部の管轄区域で麻薬取引を行っていた船舶に対し、直接的な武力攻撃を命じた」と述べた。
さらに「情報機関によれば、その船舶は違法薬物を密輸し、既知の密輸ルートを航行しており、米国民に危険を及ぼそうとしていた。この攻撃により麻薬テロ組織の構成員とされる男性3人が死亡した。発生場所は国際水域であり、米側には負傷者はいなかった」と強調した。
トランプ氏はあわせて「米国内でのフェンタニルや麻薬、不法薬物の流通を止め、米国民に対する暴力やテロを止めよ」と訴えた。
トランプ氏が公開した空撮映像には、船が高速で航行する様子や、攻撃を受けて爆発・炎上する場面が示されており、カラーとモノクロの映像が並べて編集されていた。ただし、日時や正確な座標は公開されておらず、米国防総省やホワイトハウスも船舶の所属については言及していない。
アメリカ南方司令部(SOUTHCOM)は米軍の作戦司令部の一つであり、その担当範囲は中南米およびカリブ海地域の31か国に及んでいる。
対策強化の背景:フェンタニルと麻薬問題
最近、米軍は南カリブ海での展開を大幅に強化している。今月初め、米国のピート・ヘグセス国防長官はプエルトリコ近海の艦艇上で水兵や海兵隊員に対し「ここでの配備は訓練目的ではなく、重要な麻薬対策任務である」と訓示した。
トランプ政権の命令により、10機のF-35ステルス戦闘機が新たに部隊に追加配備され、先週土曜日にはそのうち5機がプエルトリコに着陸したことが確認されている。さらにF-35以外にも、少なくとも7隻の米艦艇と1隻の原子力潜水艦が同地域に展開中である。
9月2日には米軍が初めて「麻薬高速艇」に対する攻撃を行い、11人を死亡させた。当時トランプ氏は、その船が「アラグア火車幫(Tren de Aragua)」というベネズエラのギャング組織によって運行されていたと説明したが、ベネズエラ政府は死亡者が同組織の構成員であることを否定した。
トランプ政権はこれらの軍事行動を「必要なエスカレーション」と位置づけ、米国への麻薬流入を阻止するための措置と主張している。しかし、その合法性については疑問視する声もある。とりわけ米国とベネズエラの間には戦争状態は存在しておらず、人権団体はこれらの攻撃を「超法規的処刑」と呼び、米政府が武力行使を「武装紛争」と位置づけて人権義務を回避することは認められないと批判している。
一方、米司法省はベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を「世界最大級の麻薬密売人の一人」として起訴し、フェンタニル混入コカインを米国に大量に密輸する組織と結託していると非難している。
今年8月、トランプ政権はマドゥロ氏に対する懸賞金を5000万ドル(約740億円)に倍増した。
マドゥロ氏は米国が公開した映像について「これはAIによる生成映像だ」と主張し、米国が麻薬取締りを口実に「脅迫を行い、政権を転覆させようとしている」と非難した。
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