山梨県の長崎幸太郎知事は25日と26日、JA山梨中央会の小池一夫会長らとともに、小泉進次郎農林水産大臣および林芳正内閣官房長官を訪問し、農林水産省が検討するシャインマスカットの海外ライセンス展開方針に強い懸念を表明した。
国内産地が国際市場で正当に競い合える環境を整備することを最優先課題として政策転換を求める緊急要請を行った。県選出の国会議員や主要産地のJA組合長も同席した。
シャインマスカットはその優れた食味や食感、栽培の容易さから国内外で人気を博し、日本の果樹農業の中でもフラッグシップ的な品種となっている。多くの産地が地域の特性を生かし「圧倒的な品質の高さ」を追求し、安価な海外産品との差別化やブランド価値の向上に力を入れてきた。輸出拡大は地域経済を支える重要な柱だが、国内市場の縮小や海外展開の遅れが課題となっていた。
しかし、農林水産省が検討するシャインマスカットの海外での生産許諾(ライセンス展開)は、国内産地の輸出環境が十分に整っていない現状で急速に進められている。これに対し、山梨県は拙速な海外ライセンス展開が国内産ブドウとの競合を生み、周年供給による季節感や稀少性の喪失、価格低下、ひいては国内産ブドウのブランド価値毀損や有望な海外マーケットの喪失といった深刻な問題を招くとして、「到底容認できない」と強く批判した。
山梨県は、まず国内産地が持つ実力を十分に発揮し、国際市場で正当に競い合える環境を整えることを最優先とした政策への転換を要請した。新規輸出先国の開拓、輸出条件の整備促進、海外市場における差別化プロモーションの支援、輸出対応のインフラ・制度の整備を強く求めている。これは、国内農業者が将来に希望を持てる環境づくりに不可欠な施策だとしている。
さらに海外での生産拡大ではなく、国内産地の競争環境を最優先すべきとし、国との建設的な協議の場を求めた。
この要請に対し、小泉進次郎農水相は「産地の理解が得られない状況の中では、海外ライセンス許諾を進めることはない」と明言し、慎重な姿勢を示した。また、林芳正内閣官房長官も「同じ競争の土俵に乗せてほしいという声は当然であり、海外ライセンスは慎重に考える必要がある」と産地の立場に理解を示している。
農林水産省からは「産地に丁寧に説明し、海外輸出の拡大にしっかり取り組む」との回答があり、山梨県は今後も産地に寄り添った対応を期待している。
この要請は山梨県の公式X(旧Twitter)で発信され、瞬く間に拡散されて500万インプレッションを超えた。SNS上では「長年の努力と技術は国の財産」「産地の努力を守るために重要な要請」といった支持の声が続出し、政策課題としての注目度が高まっている。
長崎知事は、「国内産地の輸出環境が整わないまま海外ライセンス展開を進めることは、果樹産地の衰退につながりかねない。まずは国内産地が国際市場で正当に競争できる条件を整えることが必要だ。輸出先国の拡大や物流・制度の整備を急ぎ、産地が力を発揮できる体制づくりに注力する」と強調した。
山梨県は今後も県内産地と連携し、日本の果樹農業の持続的発展に向けた取り組みを続けていくとしている。
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