ファイザーが米政府と薬価引き下げ合意 注目すべきポイント

2025/10/02 更新: 2025/10/02

米政府は9月30日、ファイザーとの合意を発表した。これによりファイザーは米国民に対し薬価引き下げに応じることになる。本合意の特徴の一つとして、メディケイド(Medicaid)プログラムが「最恵国」価格、すなわち先進諸国の中で最も低い価格でアクセスできるようになることが挙げられる。これにより、7,000万人以上が利用する同プログラムでより良い価格が実現される可能性があると、政府高官は9月30日の会見で述べた。

現時点で判明している情報は以下の通りである。

処方薬支出

米国は年間数千億ドルを処方薬に費やしている。他国の患者と比べ、米国民は処方薬に平均してほぼ3倍の費用を支払っていると、2024年の政府報告書は指摘している。

政府関係者によれば、この高価格が世界の製薬業界の利益の約75%を米国から生み出しているという。こうした価格設定の正当化として、製薬研究開発の資金源になるとの主張が挙げられている。

トランプ大統領は9月29日に「米国はもはや、世界の医療を補助する時代を終えた」と述べた。

メディケア・メディケイドセンター副行政官であるクリス・クロンプ氏によれば、この合意には価格上限は設けられていない。同氏は「ファイザーは好きなように価格を設定できる」、「われわれは単に、他国でわれわれより低い価格にしないと約束を求めているだけだ」と述べた。

米国製薬協会は5月、「米国民のコストを下げるには、米国価格が高い本当の理由―外国が適切な負担をしていないことや、仲介業者が米国患者の薬価を押し上げている問題―を解決する必要がある」、「社会主義国の価格を導入すれば、米国患者や労働者にとって不利益となる」と発表した。この団体は、ファイザーとの合意について本記事の発表時点でコメントには応じていない。

関税

トランプ大統領は今夏、製薬会社に対して薬価を下げるよう要請した。とりわけメディケイド患者については、他の先進国での最低価格での提供を求めた。もし応じなければ、政府は「すべての手段」を使い、米国家族を「継続的な不当な薬価から守る」と書簡で伝えた。トランプ氏はファイザーを含む17社に書簡を送っている。

大統領は最近、「10月1日より、製薬品に対し新たに100%の関税を課す」と述べた。米国内で新たな製造工場を建設中の企業のみ、例外とする方針である。

ファイザーのアルバート・ブーラCEOは、関税への脅しが効果的だったと述べた。「関税こそが行動変容を促す最も強力な手段であり、われわれの行動を明確に変えた」と述べている。

合意の一環として、ファイザーは米国内の施設に700億ドルを投資すると約束し、政府は関税の3年間猶予を与える。

新しいウェブサイト

新設される直販サイト「Trump Rx」により、消費者は割引価格で薬にアクセスできるようになると政府関係者は述べた。

「もはや安価な薬を求めてカナダへ迂回する必要はない」とクロンプ氏は述べた。

このサイトは2026年初頭に公開予定であり、詳細は現在調整中である。現時点の枠組みでは、利用者はサイトにアクセスし、希望する薬を入力すると、製薬会社またはその代理業者の購入ページに直接案内される仕組みとなる。

ホワイトハウスによれば、皮膚炎用軟膏のEucrisaは80%割引、偏頭痛治療薬のZavzpretは50%割引、リウマチ治療薬は40%割引でサイト上に登場する予定である。ファイザーによれば、主要なプライマリーケア薬の「大半」や一部の専門ブランドが平均50%割引でこのサイトに提供される。また、最大85%割引となる薬もあるとしている。

他社の動向

トランプ大統領は「他の大手製薬会社とも同様の合意を進めている」と述べた。政府関係者によれば既に複数社と合意済みであり、交渉中の企業、今後接触予定の企業もあるという。ファイザー以外で書簡が送られた企業は、AbbVie、Amgen、AstraZeneca、Boehringer Ingelheim、Bristol Myers Squibb、Eli Lilly、EMD Serono、Genentech、Gilead、GSK、Johnson & Johnson、Merck、Novartis、Novo Nordisk、Regeneron、Sanofiである。

ファイザー以外でトランプ大統領が名指ししたのはイーライリリー(Eli Lilly)のみである。

同社スポークスパーソンはエポックタイムズへのメールで「どこに住み、いくら稼いでいようが、すべての米国民が必要な薬にアクセスできるべきだと考える。本日のホワイトハウス発表は、薬の価格を下げる緊急性を強調するものであり、患者を優先するあらゆる努力を歓迎する。イーライリリーは、患者のアクセス拡大、イノベーション維持、薬の価格適正化について、政府と積極的に協議している。具体的な詳細は現時点では共有できないが、今後政府と協力して最新情報を提供したい」と述べた。

メリーランド州に拠点を置く大紀元のシニアリポーター。主に米国と世界のニュースを担当。