ウイグル問題を問う ヤルタ協定から80年 「民族区域自治」70年の節目に国際シンポジウムが開催 

2025/10/02 更新: 2025/10/02

東京・永田町の衆議院第一議員会館にて9月30日、日本ウイグル国会議員連盟と日本ウイグル協会の共催によるシンポジウム「中国の民族政策とウイグルの現在」が開催された。今年は、中国共産党(中共)がウイグル人に対して「民族区域自治制度」を導入してから70年、またウイグルの命運を左右したヤルタ協定から80年という節目の年にあたる。

冒頭、古屋圭司衆議院議員(日本ウイグル国会議員連盟会長)は、「日本国内でのウイグル問題の認知度は極めて低い。中国側からの圧力を受けながらも、声を上げることの大切さを強く感じている」と挨拶した。続いて日本ウイグル協会会長のレテプ・アフメット氏は、「新疆は古来より中国の一部」とする中国政府の主張に対し、東トルキスタンの歴史的独立やソ連による裏切りを挙げながら、植民地支配の構造を批判した。

講演では、国際政治学者・熊倉潤氏(法政大学教授)が登壇。「ヤルタ協定から新疆ウイグル自治区へ」と題し、第二次大戦末期の国際政治がウイグルの運命を決定づけた経緯を述べた。ソ連が自ら支援した東トルキスタン共和国を、中国との取引のために見捨てたこと、そしてスターリンが中共に新疆の早期占領と漢人移住(後の新疆生産建設兵団)を助言した事実を明らかにした。国際政治の力学の中で、ウイグルの独立が翻弄された悲劇的な歴史が語られた。

質疑応答では、中共による占領初期の人民解放軍・王震による残虐行為や、新疆生産建設兵団の成り立ち、中国の同化政策(異民族間の結婚推進)などについて、議論が交わされた。

近年の中国による「越境弾圧」などの深刻な人権侵害に関して大紀元が質問を行ったところ、アフメット氏は、日本に避難したウイグル人が中国にいる家族を「人質」にされ、活動を制限される実態について述べた。また、日本ウイグル協会副会長の田中サウト氏は、留学中の学生が中東諸国から強制送還された事例や、タイで拘束されていた42人のウイグル人が2025年2月に中国に引き渡された件など、国際的な人権法に反する「国境を越えた弾圧」が続いていると述べた。また日本には現在、こうした被害を訴える窓口が存在せず、法整備の必要性を真剣に考えるべきだと発言した。

シンポジウムの後、石橋林太郎議員(自民)は取材に答え、日本と中国の経済的な結びつきが強い中で、人権や法の支配といった普遍的価値を重視し、懸念のある製品を使わないなどの姿勢が日本企業や政府に求められると述べた。

石橋林太郎議員(自民)は取材に答え、日本と中国の経済的な結びつきが強い中で、人権や法の支配といった普遍的価値を重視し、懸念のある製品を使わないなどの姿勢が日本企業や政府に求められると述べた(大紀元)

また田中サウト氏は、日本と中国は地理的に近く、長い交流の歴史を持つ一方で、近年は中国の拡張主義により領土や歴史認識の問題を抱えていると指摘。日本は中国政府の一方的な情報だけでなく、ウイグル人からの訴えにも耳を傾け、中国の真の姿を全面的に理解した上で、適切な対中関係を判断すべきだと提言した。

日本ウイグル協会副会長 田中サウト氏は日本は中国政府の一方的な情報だけでなく、ウイグル人からの訴えにも耳を傾け、中国の真の姿を全面的に理解した上で、適切な対中関係を判断すべきだと提言した(大紀元)
大紀元報道記者。東京を拠点に活動しています。
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