病院で臓器を奪われた 中国から逃れた母娘がドイツで告発

2025/10/12 更新: 2025/10/12

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9月21日、ドイツ・デュイスブルクで中国共産党(中共)総領事館が開催した「中国文化祭」の会場で、一組の母娘が突如として抗議を行った。二人は中共による違法な臓器収奪を非難し、「すべての人が安全ではない」と訴えた。

張琦さんが生体臓器収奪の犠牲となったと訴えている。張さんと母親の杜廷香さんによれば、中国・河南省の鄭州大学第一附属病院で胸部外科主任を務める崔広暉氏が、欺瞞的な手口によって張さんの左肺を全摘出したという。

こうした悲劇は、張琦さん一人にとどまらない。

最近、武漢市の三甲病院(中国で最高等級に位置づけられる総合病院)に勤務する看護師の張宇さんが、大紀元の取材に対し、「中国の病院では患者の臓器が摘出されることは公然の秘密であり、医療従事者の間では誰もが知る事実だ」と証言した。

張さんによれば、こうした行為は一部の医師による独断ではなく、院長や党委書記、科主任、執刀医から実務担当者に至るまで、多層的に関与する「高位の利益構造」を形成しているという。

9月21日、ドイツのデュースブルクで開催された「中国文化祭」に対し中国の反体制派が抗議活動を行った。張琦さん(左)と母親の杜廷香さんは抗議活動に参加(写真提供:王守峰)

風邪がもたらした悲劇 

2018年6月、当時23歳だった張琦さんは、ただの風邪をきっかけに、人生を一変させる事態に直面した。

取材映像の中で、張さんは服をめくり、胸部に残る傷跡を示した。喉元から腹部にかけて長い手術痕が走り、左胸から背中にかけて深い切開痕が残っていた。これは、本人の同意や説明のないまま左肺を摘出されたことを示すものである。

さらに左脇の下には大きな穴が開いており、現在も毎日、消毒と包帯の交換を続けている。

母親の杜廷香さんによると、当初その穴は拳ほどの大きさがあり、鉗子を十センチ以上も差し込めるほど深かったという。複数回の手術を経て、ようやく肺の空洞が徐々に縮小していったと語った。

張さんは、「気管がきちんと縫合されておらず、胸腔内に感染が広がり、膿が溜まっている」と述べている。

張さんの脇の下には、鄭州大学付属第一病院の医師らによって左肺全体が摘出された穴が開いている。(インタビューのスクリーンショット)

7年前、母娘が病院側から何の説明も受けないまま、医師は張琦さんの左肺を完全に切除した。気管の縫合はずさんで、医療用のホチキス針(ステープル)で無造作に留められていたという。

張さんは「何本ものステープルが乱雑に打たれていて、今でも内部が見える。咳をしたとき、ステープルが1本外に出てきたこともある」と語った。

胸腔内に溜まった膿を吸い出すため、医師は背中に穴を開けてドレーン管を挿入した。しかし、管の交換作業中に誤って食道を損傷した。

この結果、食べ物が肺に流れ込む危険が生じたため、医師は腸にチューブを固定し、そこから栄養を送る処置を行った。母親の杜さんは、毎日注射器を使って少しずつ食べ物を腸に流し込み、栄養剤を点滴して娘の命を支え続けた。

その後になってようやく、食道の修復手術が行われたという。

左肺が摘出された際、左胸から背中にかけて10センチを超える切開が行われた。(インタビューのスクリーンショット)
 

杜廷香さんは昨年10月にドイツへ逃れ、娘の張琦さんも今年2月に中国を離れた。

二人がようやくドイツに到着した際、診察した医師たちは口をそろえて「彼女が生きてここに来られたのは、まさに奇跡だ」と語ったという。

医師たちは、張さんの状態では長時間の飛行は絶対に避けるべきだと強調した。胸腔内で大量出血が起きた場合、飛行機内では救命措置が不可能であるためだ。それでも張さんは命をかけ、15時間のフライトに臨んだ。

張さんは「逃げなければ殺される。生き延びるために、どうしても来なければならなかったのだ」と胸中を語った。

医師の言葉を信じた母娘 「治療」の名の下に奪われた左肺

2018年6月、張さんは1週間ほど風邪の症状が続いたため、インフルエンザではないかと心配し、病院で検査を受けることにした。

母娘は「この病院が最も評判が良い」と聞き、鄭州大学第一附属病院の内科を訪れた。

当時、医師はこう説明したという。
「外来での診察は保険が効かないが、入院すれば費用は保険でカバーできるし、それほど高くはない。我々も責任をもって対応する」

母娘はその言葉を信じ、入院することにした。
しかし入院後、医師は「張琦さんの肺にカビ(真菌)感染がある。胸腔鏡を使って少し処置すれば治療できる」と告げた。

そのため、張さんは胸部外科に移され、胸外科主任の崔広暉医師が「ほんの小さな穿刺手術(せんししゅじゅつ)だけで済む」と保証したという。

手術の途中で、看護師が手術室から出てきて言った。

「胸をすでに開いてしまった。穿刺(せんし)ではなく、手術方法を変更することになる。時間を無駄にできない。すぐに署名してほしい」

看護師に急かされ、杜さんは事情をよく理解しないまま署名してしまった。

しばらくして再び看護師が出てきて告げた。

「娘さんの肺を切除した。今後の感染を防ぐためだ。下の肺が感染していたので切除し、上の肺も予防のために取った。左肺全体を摘出した」

杜さんはその場で言葉を失った。

崔医師は「これはあなた方のためだ。将来の再発を防ぐ処置だ」と言い、

「人の肺は五つの葉に分かれている。2つ取っても3つ残るから大丈夫だ。普通に生活できる」と説明したという。

だが、このような説明は、中国の病院で患者の臓器をだまし取る際によく使われる常套句だ。

中国の大病院で10年間勤務していた看護師、張宇さんは最近、次のように明かした。

「一般の患者は病院で血液検査を受けると、その血液サンプルは外部に送られ、臓器のマッチングに利用されている。
もし誰かがその臓器を購入し、型が一致した場合、医師は『治療』を名目に患者をだまし、臓器を摘出するのだ」

同氏はさらに例を挙げた。

「医師は患者を脅すように、『腎臓に水がたまっている』『腎臓に異常がある』などと言い、(腎臓の)一部を摘出しても生活には支障がないと説明して、健康な腎臓を切除してしまう」

虚偽の診断 「カビ感染」という口実

張さんは肺を摘出された後、手術後の感染が悪化したため、他地域の病院で再検査を受けた。

しかし、どの検査でも真菌感染は確認されなかった。
北京の医師からも「仮にカビがあっても薬で治療できる。なぜ左肺を切除したのか理解できない」と言われたという。

さらに、鄭州アディコン医学生物検査所の報告書では、張さんの肺に真菌感染の兆候は一切見られなかった。この結果は、鄭州大学第一附属病院での診断と完全に食い違っていた。

病変した臓器と健康な臓器 処理方法の違いが意味するもの

杜さんは、 張さんの左肺が摘出された後、医師は家族に見せようとせず、手術記録には「切除した」とだけ記載されていたと明かした。この不自然な対応について、張宇さんは次のように説明した。

「病院では、摘出した臓器が病変している場合と健康な場合では処理の仕方が全く違う。もし『良い臓器』を摘出した場合、患者の家族は見ることができない」

「悪い臓器を切除したときは、家族に見せるのが決まりだ。その後、検査機関に送って病理検査を行う。しかし、健康な臓器を摘出した場合は、専用の臓器保存箱に入れられ、別のルートで処理される。手続きはまったく異なる」

同じような傷跡を持つもう一人の生存者

張さんの手術痕は、胸部から背中にかけて十数センチの長い切開痕であり、生体臓器摘出の生存者として知られる法輪功学習者の程佩明(てい はいめい)氏の傷跡とよく似ている。

程氏は2001年12月、信仰を理由に不当に懲役8年の刑を受け、黒龍江省の大慶刑務所に収監された。

2004年11月、彼は「検査」と称して大慶第四病院に送られ、知らぬ間に臓器を摘出された。

2006年、再び臓器摘出の危険にさらされたが、幸運にも脱出に成功した。

2015年、中国から脱出し、2020年にアメリカに亡命した。渡米後、9回にわたる医学的画像検査の結果、左側の肝臓と肺の一部が切除されていることが確認されたという。

毎日の苦痛 母娘の二人三脚

張さんは怒りを込めて語った。

「彼らは私の肺を盗んだだけでなく、今度は別の人の肺を私に売りつけようとしたのだ」

当時、崔医師は母娘にこう言った。

「肺移植をしたければ、50万元を用意しなさい。3か月以内に適合する肺が見つかる」

退院後まもなく、張さんは高熱を出し、胸腔に膿がたまって咳き込むようになった。

再び病院を訪れると、崔広暉は気管支にステントを入れたが、まったく効果はなかった。

母娘は治療を求めて北京、上海、西安など各地を転々とした。

医師たちは「気管が動くため、ステントは役に立たない」と説明し、結局それを取り外した。

その後、張さんは気管の両端を縫合する手術を何度も受け、胸腔内に空気が入らないようにした。

さらに左脇下に穴を開け、数本の肋骨を除去して肺の空洞を縮小させる処置も行われた。

それ以来、杜さんは七年以上、娘の世話を続けている。
毎日、薬を飲ませる事から食事、身の回りのことまですべてを自分でこなさなければならない。

張さんは気管と食道の損傷により、まともに食事を摂ることができない。鄭州大学第一付属病院の医師たちは、彼女の左肺全体を摘出した(インタビューのスクリーンショット)

現在、張さんは一度にほんの少ししか食べられず、すぐに空腹になってしまう。胸腔に開いた穴のせいで、2022年以降は横になることができず、座ったまま眠る生活が続いている。
そのため、背骨も曲がってしまった。

取材の途中、杜さんは背後の布団の山を指さし、涙ながらに語った。

「これが彼女の寝床だ。この数年間、私たちはこうして座ったまま眠ってきた。私ももう横になって寝ることができない。娘は一人で体を洗うこともできない。まるで赤ん坊のようで、私は片時も目を離せない」

30歳になった張さんは、涙をこらえながら話した。

「本来なら今は、一番楽しく、若く、幸せな時期のはずだった。でもこの数年間、私は病院と病院を行き来する生活しかしていない」

張さんの声はかすれ、時おり咳き込みながら、言葉を途切れ途切れに続けた。

張琦さんはこれまでに二十回を超える胸部手術を受け、損傷した気管を縫い合わせ、崩壊した胸腔の修復を繰り返してきた(インタビューのスクリーンショット)

理不尽な仕打ちに対して、杜さんは2021年、友人と共に河南省衛生健康委員会を訪れ、正式な申し立てを行った。委員会の職員は「内容を登録したので、帰って待つように」と告げたが、その後、杜さんは河南省から出ることを禁止された。

後に彼女は驚くべき事実を知った。

すなわち、鄭州大学第一附属病院の院長兼党委書記が、同時に河南省衛生健康委の主任を兼任していたのだ。「庶民はいったいどこへ行って訴えればいいのか」と彼女は嘆いた。

杜さんの友人が裁判所に申し立て、一緒に行くことになった。その友人は3日も経たないうちに逮捕され、懲役2年9か月の判決を受けた。地元の郷政府(地方当局)は杜さんにも警告し、「まだ従わないなら、お前も逮捕して刑を科す」と脅した。

2022年、杜さんはようやく気づいたという。
「彼らは私の自由を完全に制限していた。娘が手術を受けるときでさえ、私は車に乗ることを禁じられ、列車にも乗せてもらえなかった。核酸検査を受けても、健康コードを発行してもらえず、あらゆる手段で行動を封じられていた」

娘を守るため、そして生かすために、杜さんはすべてを捨て、娘を連れて国外脱出を決意した。

追査国際代表の指摘 臓器収奪が生む倫理崩壊

NGO法輪功迫害追査国際組織(追査国際)の代表である汪志遠氏は、次のように指摘している。

「このような悲劇は中国大陸では訴える場所がない。なぜなら、この悲劇の根源こそが中国共産党であるからだ。中共は法輪功学習者の臓器を生きたまま摘出し、社会の道徳的な最終ラインを破壊した。結果として、人間の命を金に換える殺人移植産業が生まれた」

国内で杜廷香 母娘は民主派の人々と交流し、ネット検閲を回避して海外の情報に触れるうちに、初めて自分たちの身に起きたことの真相を理解した。娘の肺は盗まれて売られ、中国の病院が国家ぐるみで違法な臓器移植を行っていることを知ったのである。

彼女たちは調査報告書を検索し、追査国際の資料で、崔広暉が1995年から2004年まで臓器移植に関与していたことを確認した。
(資料出典:https://www.zhuichaguoji.org/node/109270

公的資料によると、同病院は1978年に初めて腎臓移植を実施し、2017年に初の肝臓移植を成功させた。そして2023年上半期だけで臓器移植手術は1261例に達している。

杜さんは次のように語った。

「中国では毎年、これほど多くの若者や大学生が行方不明になっている。どうしても病院と関係があるように思えてならない。

いま中国には188か所の臓器移植を行う病院があり、毎日のように子どもが姿を消している」

彼女は続けた。
「今の若者たちは結婚することも、子どもを産むことも恐れている。

子どもを産んでも、ちょっと目を離したすきに臓器(ドナー)にされてしまうかもしれない。誰が一日中子どもを見張っていられるだろうか。

習近平は『150歳まで生きたい』と公言しているが、そのためにいったい何人の臓器が必要なのか!」

彼女は続けた。

「中共の臓器移植は『需要に応じて殺す』仕組みだ。違法な臓器移植であり、誰かと臓器の型が合えば、その人は突然『消える』のだ。そして『事故』や『事件』に見せかけて、殺してしまう」

張琦さんは涙ながらに訴えた。

「この国では誰一人として安全ではない。彼らは金のためなら、どんな人でも殺します。ある人が臓器を必要とすれば、その人のために別の人を殺す。そして次に、別の誰かが臓器を必要とすれば、今度はその人を殺す。お金を払った者が生き残るのです」

杜廷香さんは「2016年の中国での失踪者は390万人、2023年は300万人、2024年も309万人に達した。毎日これほど多くの子どもが消えている。みんな恐怖の中で生きている。だから臓器移植は今すぐ止めなければならない」と強く訴えた。

民主中国陣線ドイツ副主席であり、新公民運動欧州連盟の発起人でもある王守峰氏は 「張琦さんは奇跡的な存在だ。彼女は海外に逃れ、中共の残虐行為を告発することができた。 しかし、数十万人の被害者の多くは口封じのために殺されている。

奇跡的に生き延び、国外に逃げられたのはほんの一握りだ。
張さんの背後には、数百万人の失踪者と数十万件の臓器移植が存在している。これは衝撃的な事実だ」と述べた。

「人間を『臓器の鉱山』に変えた」

汪志遠氏は、 「生体臓器摘出がもたらしたのは、社会の道徳的崩壊と司法体系の全面的な崩壊である。中共は人を悪魔に変え、白衣の天使を『臓器摘出の罪人』に変えてしまった。
人間性は失われ、彼らの目に映る人はもはや『命』ではない。それはただの臓器提供者、そして巨額の利益を生む『人体の金鉱』にすぎないのだ」と述べた。

邱晨
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