米国防長官搭乗の政府専用機 フロントガラスに亀裂 英軍基地に緊急着陸

2025/10/16 更新: 2025/10/16

ピート・ヘグセス米国防長官は10月15日、NATO国防相会議を終えて帰国する途中、搭乗していたC-32A輸送機のフロントガラスにひびが入ったため、イギリス国内にある米英合同の空軍基地に緊急着陸した。

事故発生当時、ヘグセス氏はブリュッセルからアメリカに戻る途中であり、直前までNATO会議で各加盟国と国防支出や、ロシアの侵攻に対抗するウクライナ支援について協議していた。

米国防総省のショーン・パーネル報道官はX(旧Twitter)において、今回の「予定外の着陸」は「標準手順に従って実施された」と投稿しており、搭乗者全員が無事であったことを明らかにしている。現在のところ、フロントガラスにひびが入った原因は不明である。

該当の機体はイングランド・サフォーク州にあるミルデンホール空軍基地に着陸した。同基地は米英共同で管轄され、主にアメリカ空軍によって運用されている。ヨーロッパにおける主要基地の一つであり、空中給油、情報収集、特殊作戦任務などへの支援を提供している。

ヘグセス氏はXにて「すべて問題なし。神に感謝。任務続行!」と投稿した。

なお、現時点ではヘグセス氏らが再び離陸してアメリカへ向かったかどうかは明らかになっていない。

緊急降下と引き返し トランスポンダーには緊急コードが表示

フライト追跡サイト「FlightRadar24」のリアルタイムデータによると、C-32A輸送機はブリュッセルを離陸後、アイルランド南西沖付近で高度1万フィート(約3048メートル)まで緊急降下し、直ちに進路を反転させて引き返した。このとき、トランスポンダーには緊急コード「7700」が表示されていた。

FlightRadar24はX上で「高度1万フィートへの降下は通常、客室の与圧系統の不具合と関係している」と説明している。

カリフォルニア航空大学によれば、コード7700は国際的に使用される緊急コードであり、機体の故障、技術的問題、医療的緊急事態、またはその他の飛行安全を脅かす事象が発生した際、トランスポンダーに設定することで、地上の航空管制が直ちに把握し、滑走路や緊急支援を準備する仕組みとなっている。

今回使用されたC-32A輸送機は、ボーイング757-200型機を改装した軍用機であり、アメリカの要人を輸送する目的で特別に設計されている。副大統領が搭乗する場合は「エアフォース・ツー(Air Force Two)」と呼ばれ、また内閣メンバー、議会議員、さらにはファーストレディーの移動にも用いられる。

さらに、大統領が小規模空港を訪問する際には、「エアフォース・ワン(Air Force One)」として運用されることもある。

老朽化するC-32A機体 過去にも緊急帰還の例あり

C-32A輸送機はすでに長年にわたって運用しており、アメリカ空軍は2018年にこれらの機体の更新計画を始動させた。しかし、2021年にはバイデン政権が当該更新計画の予算を打ち切り、その資金を新型の超音速または極超音速旅客機の研究に振り向けた。

今年2月にも、マルコ・ルビオ米国務長官および上院外交委員会委員長であるアイダホ州選出のジム・リッシュ上院議員が搭乗していた空軍機が、操縦室のフロントガラスに問題が発生したため、目的地を変更して着陸する事態があった。

この際の機体は離陸から約90分後にメリーランド州のアンドリュース統合基地へ引き返しており、両議員は別の機体に乗り換えて予定通りドイツおよび中東への外遊を継続した。

世界のニュースを取材・編集する記者。環境調査の経験あり。
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