アメリカのトランプ大統領は30日、韓国・釜山の金海国際空港で中国共産党(中共)党首 習近平と会談し、両者にとって6年ぶりとなる対面会談を行った。会談後、トランプ大統領は台湾問題については「一切触れなかった」と述べ、各方面に大きな驚きを与えた。
専門家の分析によれば「トランプ・習会談」で台湾問題が議題に上らなかったことは、むしろ台湾にとって好都合であるという。トランプは「台湾は台湾だ」と述べ、インド太平洋新秩序における戦略的なレッドラインを明確にした。これは「台湾問題」を米中貿易交渉などの他の課題と完全に切り離したことを意味しており、中共も、台湾について言及しなかったと見られている。
30日、世界が注目する「トランプ・習会談」が韓国・釜山で正式に開催された。トランプ氏と習近平は約1時間40分にわたり非公開の会談を行ったが、これは2019年の大阪G20サミット以来、初めての直接的な対面となった。会談後、共同記者会見や共同声明の発表は行われず、台湾問題が議題に含まれたかどうかについても、双方とも一切言及しなかった。
矢板明夫氏「台湾に有利」 なぜ中国側も台湾に触れなかったのか
トランプ・習会談で予想外にも台湾問題が取り上げられなかったことについて、台湾にとって有利なのか不利なのか? 日本のベテランジャーナリストでインド太平洋戦略研究所理事長の矢板明夫氏は、大紀元の取材に対し「トランプ大統領が台湾問題を取り上げなかったということは、現状維持の可能性が高まったということを意味し、アメリカの台湾政策の選択肢が広がる」と述べた。
矢板氏は「もしトランプ氏が習近平に台湾問題を持ち出したとすれば、『台湾に対する武力威嚇をやめろ』といった発言になるだろうが、そんなことはバイデン政権以降、何度も繰り返されてきており、言っても無駄である。だからこそ触れない方が台湾にとって良い」と指摘した。
今回のトランプ・習会談はワシントンでも大きな話題となり、報道番組や討論番組の主なテーマとなった。アメリカの有力シンクタンク「外交問題評議会(CFR)」の前会長リチャード・ハース氏は、番組『モーニング・ジョー(Morning Joe)』で「トランプ氏が台湾問題に触れなかったことは驚きではないが、中国側まで触れなかったのは意外だ」と述べた。
台湾国防大学政治戦略学院の前院長・余宗基氏は、中国側も台湾問題に触れなかった理由について「アメリカの態度が非常に強硬であることを理解しており、台湾を持ち出せば交渉の雰囲気を壊すだけで何の得にもならない。したがって余計な火種を避け、争点を棚上げした」と分析した。これは、今回の会談で中国側が最も重視していたのが関税や経済問題であったことを示しているという。
矢板氏はさらに「これまで中国共産党は外国首脳との会談の際、必ず台湾問題で相手が自国の立場を支持、あるいは黙認することを確認してきた。これは中共外交の慣例であった。しかし今回それに言及しなかったのは、中国にとって好ましい兆候ではない」と述べた。
「つまり、情勢はすでに変化しており、習近平は台湾海峡で何らかの行動を取る際、アメリカの反応を慎重に考慮せざるを得なくなったということだ」と矢板氏は語った。
トランプ大統領「台湾は台湾だ」 北京への衝撃
会談前、トランプ大統領は空軍機「エアフォース・ワン」内で記者に「習近平は台湾問題でどれほどの圧力をかけてくると思うか」と問われた際「台湾について話すかどうか分からない。彼が聞いてくるかもしれないが、話すことは特にない。『台湾は台湾だ』」と答えた。
アメリカ在住の評論家・唐靖遠氏は大紀元に対し「トランプ氏は明確に、台湾問題を米中貿易交渉など他の問題と完全に切り離した」と指摘「トランプ氏は台湾問題を他の交渉材料と一緒に束ねるようなことは絶対にしない。つまり、台湾に関してはすでに一線を引き、明確な範囲を設定した」と分析した。
唐氏はさらに「『台湾は台湾だ』という言葉の前には『台湾は中国の一部ではない』という暗黙の前提がある。なぜなら、台湾はそもそもどの国にも属していないからだ」と述べた。
作家の汪浩氏も30日、自身のフェイスブックで「トランプ氏の『台湾は台湾だ』という一言は北京に衝撃を与え、再び世界の注目を台湾海峡に集めた。これは単なるスローガンではなく、インド太平洋新秩序の戦略的レッドラインである」と記した。
北京の思惑と米議会の反応 「台湾を取引材料にしない」
中共は本当に台湾問題を提起しなかったのか。会談前『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』は、中国側が台湾や、関税、レアアース問題を議題に持ち出し、米側に「反台湾独立」の立場を明確にさせるよう求める意向だと報じていた。これは1998年のクリントン政権時代の「台湾独立を支持しない」という表現よりも強硬な姿勢である。
複数のメディアも、中国側がトランプ氏に対し、台湾問題での譲歩を引き出し、有利な貿易協定を得ようとしていたと指摘している。
これに対し、マルコ・ルビオ米国務長官は25日「貿易上の利益のために台湾を犠牲にする者など誰もいない」と明言した。
同じく共和党のダン・サリバン上院議員も「誰もそのような話はしていない。私は心配していないが、台湾問題には常に関心を持っている」と述べた。
米メディア「NOTUS」は10月30日、複数の連邦上院議員へのインタビュー記事を掲載し、与野党双方の議員が「アメリカの台湾政策は一貫して維持されるべきであり、貿易協定の交渉対象にすべきではない」との見解を示したと報じた。
民主党のエリッサ・スロトキン上院議員は中央社の取材に対し「トランプ氏が少なくとも現行の台湾政策を再確認してくれることを期待していた。まったく触れなかったのは残念だ」と語った。「多くの人が彼の政策変更を懸念している」とも述べた。
最近「台湾主権象徴法案」を提出したテッド・クルーズ上院議員は「アメリカは台湾と断固として共にあり、この立場が変わることはない」と強調した。
共和党のピート・リケッツ上院議員も「アメリカは台湾を支援し続け、中国の武力併合を阻止すべきである。これは一貫したアメリカの政策であり、今後も続けなければならない」と述べた。
トランプ大統領と日本の高市首相が会談 台湾海峡の安定を確認
トランプ・習会談の前、10月28日に高市早苗首相がトランプ大統領と会談した。ロイター通信によれば、高市首相は「台湾海峡の安全と安定を確保することが最重要である」との共通認識をトランプ氏と再確認したと明らかにした。
汪浩氏は「高市氏のこの発言は、台湾海峡の安全を日米同盟の核心課題として位置づけたものであり、安倍晋三前首相の『台湾有事は日本有事』という立場の継承・発展した形である。そしてトランプ氏の『台湾保衛のレッドライン』戦略に力強く呼応するものだ」と分析した。
ロイター通信およびNHKの報道によると、トランプ氏は「日本はアメリカの最高レベルの同盟国であり、どんな問題、懸念、要望、要請でも、私にできることはすべて支援する。アメリカは日本の最強の同盟国だ」と述べたという。
高市早苗首相も最近、中国への警戒を強め、日米・日台の連携を重視する姿勢を示しており「米欧日台による準安全保障同盟を構築し、地域の平和を守るべきだ」と呼びかけている。
これについて余宗基氏は「高市首相が台湾との『準安全保障同盟』の構築を提唱し、トランプ大統領が『日本のためなら何でもする』と応じたことは、アメリカが『台湾有事は日本有事』という日本の立場を100%支持していることを意味する。これにより中国共産党は介入や分断を狙う余地を完全に失った」と述べた。
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