トランプ関税 最高裁で審理される対象は? IEEPAと他法の違いを解説

2025/11/04 更新: 2025/11/04

米連邦最高裁判所は、トランプ大統領が主導した関税政策の合法性について審理する。今回の争点はIEEPAに基づく関税のみであり、その他の法令による関税は対象外。貿易相手国や産業別の対象範囲、そして今後の展望について解説する。

米連邦最高裁判所は11月5日、トランプ大統領による関税賦課の合法性をめぐり口頭弁論を行う予定である。最高裁が審理するのは「国際緊急経済権限法(IEEPA)」に基づき課された関税に限られ、IEEPA以外の法に基づく関税は対象外となる。  

以下は、ロイター通信による最高裁審理の対象となる関税と、対象外の関税の一覧である。  

最高裁で審理されるIEEPA関連の関税  

トランプ氏がIEEPAを根拠として課した関税は、主に三つに分類される。具体的には、フェンタニル関連の関税、米国の貿易赤字を減らすために課された相互関税、特定国への懲罰的関税である。  

フェンタニル関連関税

– 中国本土および香港:関税率はトランプ・習近平首脳会談後に20%から10%へ引き下げられた。徴収額は289億ドル(約4兆3350億円、2025年1~9月23日までに米政府が徴収した関税額、以下同じ)。  

– メキシコ:《米墨加協定》(USMCA)の枠外となる製品に25%の関税を課しており、徴収額は57億ドル(約8550億円)。
 
– カナダ:USMCAの枠外の製品に25%の関税を課し、さらに10%の追加関税を予定している。徴収額は20億ドル(約3千億円)である。  

相互関税  

– トランプ氏はロシアを除くすべての貿易相手国からの輸入品に対し、10〜50%の関税を課している。これはIEEPA関連の関税収入の中で最大の割合を占め、総額は516億ドル(約7兆7400億円)に達している。  

– 多くの貿易相手国は米国と協定を締結し、税率を引き下げている。EU、日本、韓国では15%、一部東南アジア諸国では19〜20%に減免されている。米政府関係者は、最高裁の判断にかかわらず、これらの協定は今後も有効に存続すると述べている。  

懲罰的関税

– ブラジル:トランプ氏は、ブラジル政府が同国の前大統領ジャイール・ボルソナロ氏を起訴したことを「政治的迫害」と非難し、40%の追加関税を課した。これにより総関税率は50%となり、徴収額は2億9200万ドル(約4380億円)に上る。

– インド:ロシア産原油の購入を理由に25%の追加関税を課しており(既に25%の相互関税が課されている)、総関税率は50%に達している。徴収額は2億7400万ドル(約4110億円)である。

最高裁の判断に影響を受けない関税

IEEPA以外の法的根拠で課された関税は今回の最高裁審理の対象外である。これには、1962年「通商拡張法」第232条および1974年「通商法」第201条・第301条に基づく関税が含まれる。主な区分は以下の通りである。

産業別関税

トランプ氏は第232条を根拠に、国家安全保障を理由として特定産業に関税を課している。

– 鋼鉄50%(徴収額48億ドル=約7200億円)、アルミニウム50%(30億ドル=約4500億円)、自動車25%(183億ドル=約2兆7450億円)、自動車部品25%(76億ドル=約1兆1400億円)、銅50%(5億1380万ドル=約770億円)、木材・木製品・キャビネット・ソファなど家具類10〜50%(10月14日発効)、大型トラック25%(11月1日発効)。

– 現在進行中の第232条調査の対象産業には、半導体および関連製品、医薬品および成分、重要鉱物の加工、商用航空機およびジェットエンジン、ドローンおよび部品、風力タービン、多結晶シリコンおよび関連製品、ロボット・産業機械、医療機器、医療消耗品、個人用防護具などが含まれる。

不公正貿易行為関連関税

「通商法」第301条を根拠に、トランプ氏は不公正貿易行為への対抗措置として関税を課している。

– 第1期政権時、中国からの輸入品に7.5〜25%の関税を課し、今年9月23日までの徴収額は350億ドル(約5兆2500億円)に達している。

– 同条項に基づき、中国製造・中国所有・中国籍の船舶に港湾使用料を課し、中国製の港湾クレーンに対しては100〜150%の関税を課している。これらの措置はトランプ氏と習近平の合意による貿易緊張緩和策の一環として、1年間停止されている。

– トランプ氏はまた、ニカラグアの労働権・人権・法治状況を理由に、同国製品に100%の関税を課す提案をしている。この調査は前バイデン政権下で開始されたものである。

– 現在進行中の第301条調査では、新たな関税発動の可能性もあり、その対象には中国共産党(中共)による従来型半導体生産支配の試み、2020年に成立した米中「第一段階」貿易協定の履行状況、さらにブラジルの「不公正な」関税、エタノール市場アクセス、デジタル貿易政策などが含まれている。

第201条に基づくセーフガード関税

第201条による「セーフガード」関税は、輸入の急増で打撃を受けた国内産業を保護する措置である。

– 太陽電池およびモジュールに15%の関税を課しており、今年9月23日までの徴収額は4億3400万ドル(約650億円)である。この関税は2018年にトランプ氏の第1期政権下で発動されたものであり、米国際貿易委員会(ITC)が延長を承認しない限り、今月で期限を迎える。

張婷