気候変動懐疑論の高まりと寄付金減少 COP30は大混乱の中で開催

2025/11/19 更新: 2025/11/19

今週、ブラジルのアマゾン熱帯雨林近くで開かれている国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は、猛烈な暑さ、人の多さ、そして時折の混乱が特徴的な大会だ。参加者は非常に多いものの、地球が「気候非常事態」に直面しているという従来の物語に対して、多くの人が疑問を抱き始めているタイミングでの開催である。

この会議は、1992年に国連で結ばれた気候変動枠組条約の締約国会議(COP)の30回目だ。条約では先進国が地球温暖化の主な責任を負い、気候変動に苦しむ途上国を支援することが約束されている。

世界中のさまざまな統計データをリアルタイムで表示するウェブサイト「Worldometer」のデータによると世界最大の温室効果ガス排出国である中国、インド、アメリカの首脳は欠席した。それでも参加者は5万人を超え、195カ国の政府代表が集まるなど、過去最大級の規模となった。

会場では、アル・ゴア元米副大統領が異常気象の例を次々と挙げながら「いつまで私たちは傍観して、地球の温度を上げ続け、これらの災害をさらに悪化させるつもりなのか」と訴えた。

しかし、これまで気候変動対策の有力な支援者だった人物たちが、次々と距離を置き始めている。

ビル・ゲイツ氏はかつて「気候変動による死者はCOVID-19を上回る」と予測していたが、10月にCOP30参加者向けのメッセージで「気候変動の終末論的見方は間違っている。人類は今後もしばらくの間、地球のほとんどの場所で暮らし、繁栄していける」と発言した。

2007年に「地球温暖化で海面が上昇し、アマゾンが崩壊する」と書いていた気候活動家のテッド・ノードハウス氏も、8月のブログで「もうこのような大げさな主張は信じていない」と告白している。

気候対策への資金も枯渇しつつある

先進国が途上国に支払うべき気候変動対策資金は、2035年までに年間3100億~3650億ドルに達するとされている。しかし国連が今年発表した報告書によると、実際に先進国から途上国へ流れた資金は2022年の280億ドルから2023年には260億ドルへと減少している。

国連環境計画(UNEP)のインガー・アンデルセン事務局長は報告書の序文で「2024年・2025年の数字はまだ出ていないが、現在の傾向が続けば、グラスゴー気候合意の目標も、新たな資金目標も達成できず、多くの人が不必要に苦しむことになるのは明らかだ」と警告している。

「気候に関するコンセンサスは崩れた」

現在、国際的な気候協定からの離脱を最も積極的に進めているのはアメリカだ。だが、他の国々も気候変動対策への熱意を失いつつある。

7月に米エネルギー省が発表した報告書(物理学・経済学・気候科学などの独立専門家5人による)では、人為的な温暖化の経済的被害は「一般に考えられているよりも小さい」と結論づけられている。

1月にはトランプ大統領がパリ協定をはじめとするすべての国連気候協定からの離脱を指示し、過去のアメリカの約束を一方的に取り消した。その後、アメリカは石油・天然ガス・石炭に加え、原子力の増産を推進している。

7月には欧州連合(EU)がトランプ政権と合意し、今後3年間で約7500億ドルのアメリカ産液化天然ガス・石油・原子力燃料および技術を購入することになった。

今月に入ってイギリスのスターマー首相は「CO2排出削減には全力で取り組む」としながらも、「気候変動対策に関するコンセンサスはもうなくなった」と明言した。

スターマー首相は、COP30の開幕直前に行われた首脳級サミットで、次のように発表した。「イギリスは、COP30の目玉事業である『熱帯雨林保護基金(Tropical Forests Forever Facility、略称TFFF)』に対しては、資金を拠出しない」。このTFFFとは、アマゾンやコンゴ川流域などの熱帯雨林を保護するために設けられる国際基金で、総額1250億ドル(約20兆円)規模を目指す大規模な仕組みだ。森林を残した国に毎年お金を支払う「成果報酬型」の新しい資金メカニズムとして注目されていた。

開催国のブラジル自身も、10月に国営石油会社ペトロブラスによるアマゾン川河口北部での試掘を承認している。

会場となっているベレン市では、交通渋滞を緩和するために熱帯雨林を8マイル(約13km)にわたって4車線道路で切り開き、数千エーカーの保護樹木を伐採し、野生動物を追い出した。それでも参加者の多さに市内はパンク状態だ。

国連のネットゼロ政策に懐疑的な団体CFACT(The Committee for a Constructive Tomorrow :明日のための建設的委員会)のクレイグ・ラッカー代表は、30回のCOPのうち27回に参加した経験から「これまでで最も混乱したCOPだ」と語る。

「雨林の危機を世界に訴えるために、わざわざアマゾンの近くに人々を呼んだはずなのに、その参加者たちをリムジンで会場まで運ぶためだけに、アマゾンのど真ん中を14kmにわたって道路を切り開き、大量の木を伐採した。“熱帯雨林を守れ!”と大々的に叫んでいる環境サミットが、自分たちの会議のために雨林を破壊している。 これが本当の姿だ」。

経済記者、映画プロデューサー。ウォール街出身の銀行家としての経歴を持つ。2008年に、米国の住宅ローン金融システムの崩壊を描いたドキュメンタリー『We All Fall Down: The American Mortgage Crisis』の脚本・製作を担当。ESG業界を調査した最新作『影の政府(The Shadow State)』では、メインパーソナリティーを務めた。
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