中共外交官「ポケット演出」 無礼外交の波紋広がる 金正恩の真似か

2025/11/21 更新: 2025/11/21

北京の日中局長級会談後に中国共産党(中共)外交官の劉勁松が両手をポケットに入れて日本側を見送る異例の振る舞いを公開し、国際社会の注目と批判が集まっている。

前日、中国外交部アジア局の劉勁松司長(局長級)は日本の外交官との会談後、見送りの際にわざと両手をズボンのポケットに入れ、さらに異例にもメディアを招いて撮影を許可した。この周到に仕組まれた茶番は、中共が誇る「大国外交」という看板を自ら崩す結果となった。

外交の場で基本的な礼儀を欠いた中共外交官の振る舞いは、まさに粗野な精神性を映し出している。こうして中共は、国際社会の中でも特異な存在として改めて注目を集め、「中共は中国及び中国人民を代表するものとは言えない」ことを多くの人々に知らしめたのである。

周到に仕組まれた茶番

2025年11月18日、劉勁松司長は北京で日本外務省アジア大洋州局の金井正彰局長を迎え、中共外交部で会談を行った。本来この会談は非公開のはずで、双方とも当初はメディアを入れる予定はなかった。ところが会談終了後、中共側は突然メディアに連絡を取り、外交部内部での撮影を許可した。

劉勁松は記者の前であえて演技をし、両手をポケットに入れる姿勢をとった。実際のところこれは周到に演出したものである。しかしその映像は、中国国内の視聴者のみならず、世界中に配信された。外交部の局長クラスがこのように軽率で無礼な態度を示すことは驚くべきことである。

この茶番を企画した人物は、単に愛国心を煽る目的であったのかもしれない。だが国際的にどのような悪影響を及ぼすか予測できなかったとしたら、中共外交部には非常に愚かな人材が多いと言わざるを得ない。

さらに問題なのは、劉勁松本人がこの企画に同意したことである。もちろん、外交部長や副部長クラスのより高い立場の人物が決定した可能性もある。メディアを外交部内部に入れる権限を持つのは、相当な地位の官僚に限られるためである。

この行動は明らかに金正恩の真似である。2025年10月11日、中国の李強首相が北朝鮮訪問を終えた際の見送りで、金正恩はポケットに両手を入れ、部下と話しながら最後に軽く李強にうなずいただけであった。これは「李強を侮辱した」と見なしている。

金正恩の態度は演技の可能性もあるが、彼の本心をある程度反映しているとも言える。北朝鮮は李強が実質的な権限を持たないことを理解していたため、軽視する態度を示したのだ。これはかつて李克強前首相を接遇した際の態度と対照的である。

中共の首相である李強は10月9日から11日まで北朝鮮を訪問したが、金正恩に「侮辱」されたと指摘している。特に、金正恩が手をポケットに入れたまま李強を見送ったことが大きな議論を引き起こしている (動画のスクリーンショット)

北朝鮮は国際的に孤立しており、金正恩が会う外国の来賓は限られるが、李強にだけあのような態度を示したと言える。中共が幾度も「大国外交」を標榜しているにもかかわらず、浅はかな模倣をしたことは、自ら掲げる看板を崩壊させたに等しい。

劉勁松はこの演出によって自らの功績を誇示しようとしたのかもしれないが、これが出世につながるかは疑問である。このような非常識な行動をした劉勁松を中共が引き続き厚遇し、副部長以上に昇進させるならば、それは国際的な恥となろう。

2025年11月18日、中国外交部前で勤務する警備員。この日、同部では日中の局長級会談が行われた(Adek Berry / AFP via Getty Images)

中共外交部の控えめの対応

11月18日の会談では中共は珍しくメディアの立ち合いを認めたものの、その後、外交部として正式な発表は行わなかった。

外交部公式サイトに掲載されている劉勁松の最近の公務記録によると、11月4日、12日、13日にそれぞれトルコ大使、イギリス外務・開発省アジア太平洋局長、オーストラリア大使と会見しているが、これらではメディアへの通知や入室許可はなかった。外交部の公開写真を見ると、劉勁松はこれらの行事ではすべてスーツ姿であったが、11月18日の日本側との会談では、わざわざ「五四青年装」と呼ぶ反日的と評される服装で、胸には国章のバッジをつけていた。

もしこれが「五四運動」の象徴のつもりであったなら、彼は歴史を知らないと言わざるを得ない。1919年の五四運動当時、中共はまだ存在せず、「中華人民共和国」という国号もなかった。1931年に中共はソ連とコミンテルンの支援を受け江西省瑞金で武装独立し、「中華ソビエト共和国」を樹立した。これは共産国際の支部に過ぎず、当時の中国政府を暴力で転覆しようとする反中・売国勢力であった。

劉勁松は全力で演技を行ったが、外交部はすぐにこの行為が裏目に出たことを認識した。11月19日の記者会見で日本の記者が「前日の会談でメディア撮影の事前説明がなかったことについて説明を求める」と質問したのに対し、報道官の毛寧は「中方(中国側)は撮影を手配していない」と虚偽の答弁をした。

外交部は自身の醜態を隠すため、演出自体を否定せざるを得なかったのである。

中共は中国を代表できない

中共外交部の日本に対する「演出」はこれだけにとどまらない。この前、中共駐大阪領事が「高市早苗首相を斬首する」との暴言を吐き、最近では日本の水産物輸入を停止し、日中韓文化相会議を延期した。さらにG20サミットで李強と高市早苗の会談予定は「ない」と公表した。

中共外交部はこれらの報復行為すべてを高市首相の発言のせいにしている。高市首相が「台湾有事」が日本の「存亡の危機事態」に該当する可能性があると国会で述べたためである。

結局、中共の神経を逆撫でするのは台湾問題である。台湾問題は中共政権の正統性そのものである。建国直後、毛沢東は日本の侵華行為に「感謝」を述べ、周恩来も巨額の賠償請求を放棄してまで日本に中共政権の早期承認を求めた。しかし日本が正式に中共と国交を結んだのは1972年であり、アメリカの黙認を得てからであった。

近年、中共は台湾への武力行使をちらつかせ、軍艦を日本列島周辺に送り込むなど威圧を強め、日本を警戒させている。高市首相の「台湾有事」発言は、かえって中共の野望が露呈した結果といえる。中国国内の不安が高まる中で中共は自らの支配正統性をますます意識するようになっている。

新首相・高市早苗氏への対応でも中共は誤算を犯した。習近平は高市の当選を一切祝っておらず、2025年10月31日に韓国で開催されたAPEC首脳会議で顔を合わせた際も祝意を示さなかった。

近隣諸国との関係すらうまく築けない中共が、どのように世界と良好な関係を築けるのか疑問である。外交官らの常軌を逸した振る舞いは、世界をますます遠ざけるだけである。建国から70年以上経っても国際外交に無知であるかのような態度を続け、中国の国際的イメージを損ねている中共に、中国を代表する資格はない。

建国直後の中共は完全にソ連陣営に傾き、アメリカとの関係を断絶した。1950年、中共は無謀にも朝鮮戦争に参戦し、アメリカを中心とする国連軍と戦った。戦争は1953年まで続き、その間、日本は米軍の補給拠点として特需景気に沸き、経済復興の足がかりを得た。

そして70年以上経過後の今日、アメリカは再び日本との同盟を強化しようとしている。トランプ大統領が高市首相を空母に招待したのは象徴的な出来事である。そんな重要な時期にあって中共は再び日本を敵視し、結果的に日本を援助する結果となっている。

中共はアメリカ、日本、そして西側諸国や近隣諸国とも敵対している。無知で愚かで粗暴な中共外交官らは、幾度となく国家としての品格を失ってきた。中共の行動は中国という国そのものを深淵へと追い込んでいる。より多くの中国人が子孫の未来のために立ち上がり、中共の不法な統治を拒み、「中共が中国を代表する」ことをこれ以上許してはならないのである。

楊威
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