アメリカ連邦議会下院の「対中共委員会」は、アマゾンに送った書簡で、同社が販売するすべての商品に原産国を明記するよう求め、中国のTP-Link社を名指しして取り上げた。
FOXニュース・デジタルによると、委員会はアマゾンの最高経営責任者アンディ・ジャシー(Andy Jassy)氏に宛てた書簡を入手した。11月24日にFOXが公開した内容によれば、委員会委員長でミシガン州選出の共和党下院議員ジョン・ムレナール氏と、上級メンバーでイリノイ州選出の民主党下院議員ラジャ・クリシュナムルティ(Raja Krishnamoorthi)氏は、アマゾンに対し製品の原産国を明確に示すことを求めた。これには、製品に含まれるアメリカ製部品の割合や、販売者がアメリカ企業か外国企業かといった情報の表示も含まれている。
TP-Link社を名指しで取り上げ
議員らは、中国に本社を置くTP-Link社を名指しで取り上げた。同社はアマゾン上でWi-Fiルーターやスマートホーム機器を販売している。
TP-Linkのルーターは低価格のため、アメリカの家庭や中小企業向け市場で約65%のシェアを占めている。さらに、アマゾンでも最も人気の高いルーターブランドであり、アメリカ国防総省をはじめとする連邦政府機関にもネットワーク通信サービスを提供している。
TP-Linkはアメリカ国内事業を独立して運営しており、アメリカに本社を置いていると主張している。しかし議員らは、どのような中国関連企業も2017年施行された「中華人民共和国国家情報法」の規定に従わなければならないと警告している。この法律は、個人や組織に対し、中国共産党(中共)の情報機関から求められた場合にはその活動を支援する義務を課しており、企業は北京にデータやアクセス権を共有するよう強制される可能性がある。
ルーターが攻撃を受けた一連の事案を受け、超党派の議員らはTP-Link製ルーターに深刻なセキュリティ脆弱性があるのではないかとの懸念を強めている。中共系ハッカーは容易に侵入し、アメリカのネットワークを攻撃する恐れがある。2024年5月には、上院情報委員会のトム・コットン(Tom Cotton)委員長を含む十数名の共和党議員が、アメリカでのTP-Link製品販売を禁止するよう求めた。
トランプ大統領は第1期政権中の2019年、TP-Linkに関する調査を許可する大統領令に署名した。2024年にはバイデン政権が正式に調査を開始し、今後の対応はトランプ第2期政権に委ねられている。
議員らは書簡の中で、「TP-Linkをはじめとする中国製ネットワーク機器がもたらすサイバー脅威の深刻さが次々と報告で裏付けられており(当委員会でも昨年から強調してきた)、アメリカ国民はこうした製品を容易に購入しないという選択をすべきである」と述べている。
連邦取引委員会にも同様の措置を要請
委員会はまた、連邦取引委員会(FTC)にも書簡を送り、すべての電子商取引プラットフォームに同様の措置を取るよう求めた。委員会は、新たな立法を行わなくても、FTCが既存の消費者保護権限を活用し、ECプラットフォームに製品の原産国開示を義務付けることが必要と指摘している。
FTC議長アンドリュー・ファーガソン(Andrew Ferguson)宛ての別の書簡では、SheinやTemuなど海外の電子商取引プラットフォームを含むすべてのオンライン市場に対し、同じ水準の透明性の確保を求めている。
「アメリカの製造業と産業基盤を再構築し、健全な国内産業の恩恵がアメリカの家庭にもたらされるようにしなければならない。その利益を敵対国の懐に入らせてはならない」と書簡には記している。
アマゾンに求める5つの具体的施策
議員らは書簡の中で、アマゾンが次の5つの変更を実施するよう提案している。
1. 各製品の詳細ページの目立つ位置に「原産国」を明示し、明確かつ統一されたフォーマットで表示すること。
2. 既存の連邦基準および指針に基づき、販売者に対し製品内のアメリカ製部品の割合を報告させること。
3. 販売者がアメリカ企業か外国企業かを明示し、特に中国関連企業と関係がある場合は最終的な実質所有者を明らかにすること。
4. ユーザーが「アメリカ製品のみを表示」または「特定国製品を除外」できるようにする検索フィルター機能を追加すること。
5. 出品者が原産国を虚偽申告しないよう、厳格な検証メカニズムを導入すること。特に中国製品が第三国製として誤って表示されないようにすること。
ムレナール氏とクリシュナムルティ氏は、アマゾンの現行システムについて「こうした情報を探すのが難しく、確認もしづらい」と指摘している。多くの商品ページでは、原産国に関する情報が不適切な欄に隠されていたり、そもそも記載されていない場合もあるという。両氏は「この透明性の欠如によって、アメリカ国民は自国の労働者を支援するか、敵対国製品の購入を避けるかという選択ができなくなっている」と批判した。
議員らはこの問題を「経済と国家安全保障の両面における最優先課題」と位置づけ、「アメリカ国民が知らないうちに、敵対国(たとえば共産中国)の支配下にある企業の製品を購入すべきではない」と強調した。
また、アマゾンに対し12月15日までに書面で回答するよう求めた。提案した内容を実施する意思があるかどうか、さらにその具体的な工程表を提示するよう要請している。
同時に、議会側も中国製技術やサプライチェーンに対する監視を一段と強化している。ムレナール氏とクリシュナムルティ氏は、透明性の向上はアメリカの消費者に賢明な選択を促すだけでなく、アメリカの製造基盤の強化にもつながると述べている。
議員らは「アマゾンのようなアメリカ企業は、製品情報の表示方法を少し変えるだけで、アメリカの経済力と国家安全保障の双方を強化できる」と結んでいる。
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