臓器強制収奪防止法を提案 列国議会連盟声明とマタス氏の評価

2025/12/01 更新: 2025/12/01

各国議員による超党派組織「IPAC」が、中国での臓器強制収奪を阻止するための新たな法整備を提案。国際人権弁護士デービッド・マタス氏も、その意義を強調し、具体的な6項目の立法対応を示した。

最近、日米欧など民主主義圏の国会議員らで構成する「対中政策に関する列国議会連盟(IPAC)」が声明を発表し、中国共産党(中共)による臓器強制収奪行為を非難するとともに、各国の市民、機関、政府が中共の臓器収奪を助長しないようにするための6項目の立法提案を示した。​

この動きについて、中共による臓器収奪の調査に長年携わってきた国際的に著名な人権弁護士のデービッド・マタス氏は、大紀元の取材に対し、「IPACのこの取り組みは極めて重要であり、心から歓迎すべきものだ」と語った。​

マタス氏は、日本の政治家や専門家、市民に対して、中国における臓器収奪や人権侵害の問題を訴え、日本が関与しないようにし、法整備を進めるために何度も日本を訪れてきた。​

IPACとは何か?

IPACは、日米を含む43か国および欧州連合(EU)から、計290名を超える超党派の国会議員が参加する国際組織であり、国際社会において広範かつ大きな影響力を持つ。​

ちなみに、IPACは11月20日、高市早苗首相が台湾有事について「存立危機事態」になり得るとした国会答弁を巡り中共の薛剣・駐大阪総領事が不穏当なSNS投稿をした問題に対し、「威圧的発言を強く非難する」との声明を出した。

マタス氏が語る臓器収奪問題の現実

IPACの中共の臓器収奪を助長しないようにするための6項目の立法提案に対して、マタス氏は、「注目すべきは、この声明の内容自体が重要であるだけでなく、さらに二つの事実を明確に示していることである」​と述べた。

「第一に、この提言は中共を明確に名指ししている」​

IPACは声明の中で次のように記している。​「複数の信頼性の高い報告および広範な国際的非難が示しているところによれば、中国国内では中共による指示、もしくは黙認のもとに行われている臓器収奪および臓器売買行為が存在している」​

「我々――対中政策に関する列国議会同盟のメンバーは――2025年11月8日、ブリュッセルでのサミットにおいて、この臓器収奪という忌まわしい行為を厳しく非難する」​

マタス氏は続けた。​「第二に、『対中政策に関する列国議会同盟』には多くの国の国会議員が関与していることである」​

マタス氏は、IPACの今回の行動を「極めて時宜を得たものだ」と強調した。​

同氏は言う。​「中国では中共によって臓器を得るために、毎日、多数の無辜の人々が殺害されている」​

臓器強制収奪実態の調査

マタス氏は、中共による臓器強制収奪の実態を最初期から調査してきた専門家の1人である。​

2006年、マタス氏はカナダの元アジア太平洋局長デービッド・キルガー氏(故人)と共同で、『中国共産党による法輪功学習者への臓器収奪疑惑に関する調査報告』を発表し、中共が法輪功学習者から臓器を強制的に収奪していたとの告発を報告した。​

法輪功とは、「真・善・忍」を原則とする佛家の高度な修煉法で、五つの功法動作から成り、病気の予防と健康増進に卓越した効果があり、大きな人気を博していた。 1999年以前、法輪功学習者の数は7千万人から1億人に達していたとされる。​

しかし1999年7月、当時の中共党首・江沢民は、法輪功の価値観が共産主義の無神論思想と異なり、また学習者の数が中共党員の数を上回ることを恐れ、弾圧を命じた。 中共は法輪功学習者に信仰を放棄させるため、数百種類もの拷問を加え、その中には臓器の生体収奪も含まれていた。​

マタス氏は、中共による臓器収奪の罪行を「この地球上でこれまでに見たことのない悪」と表現した。​

2016年、マタス氏は再びカナダの元アジア太平洋局長デービッド・キルガー氏、そしてアメリカのベテラン調査ジャーナリスト、イーサン・ガットマン氏と共に、中共による臓器強制収奪に関する最新報告書『血濡れの臓器狩り/虐殺:更新版』をワシントンD.C.で発表した。​

3人は報告の中で、「過去15年間に、中国大陸では約150万件の臓器移植手術が行われたと推定され、その臓器の主な供給源は法輪功学習者である」と指摘した。​

マタス氏は大紀元に語った。​「1日1日が極めて重要である。対応を遅らせることは、無実の人々がその臓器を奪われて殺されるのを傍観することと同じである」​

違法臓器移植に対する各国の法規制

マタス氏は述べた。​「現在、各国の市民が違法な臓器を入手することを禁止する法律を制定している国は、ほんのわずかしかない」​

現在、イスラエル、スペイン、イタリア、カナダ、イギリス、台湾が、違法な臓器移植を受けることを禁じる法律を制定している。 また、アメリカのテキサス州も、住民が違法な臓器を受けることを禁じる法律を可決している。​

マタス氏は言う。​「この(IPACの)提案は、臓器乱用の防止と是正を推進する上で大いに役立つものである」​

IPACが提案する6つの具体策

IPACが示した6項目の立法提案は以下のとおりである。​

1、各国の患者が、出所不明もしくは明確な自発的ドナー同意を得ていない臓器を海外で移植することを禁じる刑事罰を規定する。​

2、生体臓器収奪や臓器売買に関与または関与を助長する者を、標的制裁リストに加える。​

3、医療専門家および医療機関に対し、臓器収奪や臓器売買の疑いがある事例を報告する義務を設ける。​

4、全国的な移植登録制度を設け、透明性と監督を確保する。 その登録制度には、国民が国外で受けた移植も含める。​

5、公的資金を用いて、臓器収奪に関与する外国機関との共同研究・訓練・協力を行うことを禁止する。​

6、人権デューデリジェンス(尽職調査)が行われていない限り、医療機関が他国と移植医療の分野で協力することを禁じる。​

マタス氏はIPACの新たな提案全体について、「非常に感銘を受けた」と述べ、「これは喜ばしい進展である」と結んだ。

李辰
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