中国鉄鋼業の縮小加速 輸出5割減リスクと業界構造転換

2025/12/05 更新: 2025/12/05

中国では不動産市場の長期低迷に加えて大規模インフラ投資も減速しており、粗鋼生産量と鉄鋼の表観消費量がともに減少している。業界関係者の間では、今後5年間で中国の鉄鋼輸出量が半減するとの見方が広がっている。

粗鋼生産・鉄鋼消費ともに減少

今年に入ってから、中国の粗鋼生産量と鉄鋼の表観消費量はいずれも減少傾向にある。『中国証券報』12月2日の報道によれば、1〜10月の粗鋼生産量は累計8億1800万トンとなり、前年同期比3.9%減であった。

中国鋼鉄工業協会(中鋼協)の最新データによると、2025年1〜9月期の国内鉄鋼表観消費量は6億4900万トンで、前年同期比5.7%減となった。

中鋼協の姜維報道官は10月の記者会見で「供給と需要の不均衡はすでに非常に深刻である」と述べた。鉄鋼業の不振の背後には、中国経済モデルの大きな転換がある。不動産バブルはすでにピークを過ぎ、インフラ投資も鈍化し、「鉄鋼中心」の成長時代は終焉を迎えつつある。

第14次五か年計画以降、中国の鉄鋼表観消費量は減少を続けている。2020年のピーク(10億4千万トン)から2024年には8億9千万トンにまで減少し、4年間で1億5千万トン減(年平均3.8%減)となった。

鉄鋼表観消費量とは、一定期間内の総鉄鋼需要を示す指標であり、国内生産量+輸入量−輸出量によって算出される。

10月の鉄鋼企業利益 前年比25.9%減

10月は鉄鋼企業の収益が再び悪化した。中共国家統計局によると、10月の鉄鋼業利益は798億元(約1兆6760億円)で、前月比566億元(約1兆1890億円)減(41%減)、前年同月比では25.9%の減少となり、利益率はわずか1.2%にとどまった。

一方、中鋼協の統計では、2025年1〜9月期の鉄鋼業界の総利益は960億元(約2兆190億円)となり、前年同期比で約190%増加した。販売利益率も2.1%に上昇し、ここ数年続いた赤字状態から脱しつつある。

『財新網』の分析によれば、2025年上半期は鉄鋼製品(棒鋼・熱延コイル)の価格が7〜9%下落する一方で、原料炭価格指数は31.5%急落。低硫高品質の原料炭は19.7%下落。鉄鉱石価格も7.3%下落し、1トンあたり約93.55ドル(約1万4020円)となった。

これら原料コストの急減が鉄鋼企業の利益を押し上げたとみられる。

しかし、この好調は長続きしない可能性がある。10月には原料炭価格が再び約10%上昇した。鉄鋼情報サービス『我的鋼鉄網』の張凱東アナリストは「石炭価格の下落が永遠に続くわけではない」と警告し、原料コストの再上昇により多くの製鉄所が再び赤字の危機に直面する可能性があると指摘している。

鉄鋼輸出 今後「5割減」の予測も

2025年1〜9月期における中国の鉄鋼輸出量は8796万トンで、前年同期比9.2%増となった。しかし、今後の輸出環境は厳しい。

『財新網』の報道によれば、江蘇鋼鉄協会の陳洪兵会長は「今後5年で中国の鉄鋼直接輸出量は半減する可能性がある」と述べた。これにより、国内の鉄鋼表観消費量は現在の10億トン超から約7億5千万トンに縮小する見通しであり、これは業界構造のみならず、改革開放以降の中国経済の基盤をも揺るがしかねない規模だと警鐘を鳴らしている。

2024年7月7日、ベトナム工貿省は中国産熱延鋼板に対し23.1〜27.83%の反ダンピング税を正式に課した。さらに10月27日には、中国産熱延鋼板に対する「迂回輸出」調査も開始した。

ベトナムは中国鉄鋼の最大の海外市場であるが、海関総署(中国税関総署)のデータによると、2025年1〜9月期の中国からベトナムへの鉄鋼輸出は24.8%急減した。

反制措置を取っているのはベトナムだけではない。2024年初頭から2025年8月までの間に、少なくとも11か国が中国の鉄鋼製品に対し反ダンピング措置やセーフガード措置を実施している。

中国商務部の統計によれば、2025年1〜7月の中国鉄鋼の関連市場向け輸出は前年同期比で約30%減少した。

楊旭
関連特集: 中国経済