なぜマドゥロ氏を「生け捕り」にしたのか トランプ政権の一石「多」鳥戦略

2026/01/05 更新: 2026/01/05

米国が今回、ベネズエラのマドゥロ大統領に対する特別作戦において、「殺害」ではなく「拘束」という手段を選択した背景が注目されている。トランプ大統領は、米国がベネズエラを「運営する」と明言しており、この判断が持つ戦略的意味や、今後もたらされる影響について、新唐人テレビの国際問題編集委員・唐浩氏が詳細な分析を行った。

今回のトランプ政権による特別軍事作戦は、テロ組織の指導者を標的とし即時排除を目的とする従来の「斬首作戦」とは性格を異にする。米国は、ベネズエラの独裁者とされるマドゥロ大統領を拘束し、本国へ移送した上で法廷に立たせる方針を示している。唐浩氏は、この決定の背後にはトランプ政権による複数の戦略的思惑が存在すると指摘する。

唐浩氏によれば、トランプ大統領はマドゥロ氏を麻薬密輸やテロ活動への関与を理由に、テロリストかつ犯罪者として認定している。そのため、米国へ連行し司法の場で裁くことは、合理的かつ合法性を備えた対応であり、国際社会に対しても十分な大義名分を持つという。仮に殺害という手段を取っていれば、「公然たる政変」や「外国への侵略」との批判を招き、不必要な国際論争に発展していた可能性が高い。

拘束にとどめたことで、報復や憎悪の連鎖を抑制できるだけでなく、ベネズエラ国内の民主制度を形式上維持する余地も残された。さらに米国側には、マドゥロ政権と中国共産党(中共)との間で結ばれてきた秘密取引や協定の実態を解明する狙いがあるとみられる。

トランプ大統領は1月3日の記者会見で、ベネズエラが「安全で、適切かつ合法的な政権移行」を実現するまで、米国が国家運営を担うと表明した。今後、米国の管理下に置かれるベネズエラの行方と、それが中南米全体に及ぼす影響に国際社会の関心が集まっている。

唐浩氏は、ベネズエラを「中共とロシアがラテンアメリカにおいて保有してきた代理国家」と位置づける。中共はベネズエラを拠点に中南米で不安定化を図り、「第二の中東」を生み出すことで、米国の軍事力を牽制・分散させようとしてきたという。しかし今回、米国がベネズエラを管理下に置いたことで、石油経済と民生の再建が進み、透明で公正な民主選挙の回復が可能になると分析する。

同時に、「左派勢力の一掃と伝統回帰」という政治改革の流れが中南米全体に波及し、各国で右傾化が進む可能性がある。キューバやニカラグアなどの左派独裁国家でも、政変が起きる確率が高まるとの見方を示した。

マドゥロ大統領が米軍によって拘束されたことを受け、中共外交部は1月3日の定例記者会見で、「米国が一国の大統領に手を下したことに深い衝撃を受け、強く非難する。米国の覇権的行為は国際法に著しく違反している」と批判した。

これについて唐浩氏は、今回の行動を「一石多鳥」の作戦と位置づけ、「山を叩いて虎を驚かす」効果を持つと評価する。マドゥロ政権の社会主義独裁を終わらせただけでなく、世界各地のならず者国家に強い警告を与えたという。そのため中共は激しい怒りを示したが、その背後には、長年にわたり築いてきたラテンアメリカでの浸透力と影響力を失うことへの焦燥と不安が透けて見えると指摘した。

中共が最も警戒しているのは、中国国内に「共産党独裁も倒せるかもしれない」という希望が広がることだという。また、台湾や日本に対する威嚇的な軍事行動を控えざるを得なくなる可能性もある。

特に、米軍が短時間でマドゥロ氏を制圧し、ほぼ無傷で撤収した事実は、中共指導部に強い衝撃を与えたとみられる。中には身の安全を案じ、宿泊先を頻繁に変えるほど警戒を強めている幹部がいても不思議ではないと述べた。

さらに、ロシア・ウクライナ戦争の交渉が正念場を迎え、イランではミサイル開発計画再開の情報も伝えられるなど、国際情勢は緊迫の度を増している。唐浩氏は、こうした状況下で行われたマドゥロ大統領拘束は、中共・ロシア・イランという「三匹の虎」を同時に震撼させる、「山を叩く雷鳴」のような作戦だったと総括している。

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