1月2日時点、ニコラス・マドゥロ氏はベネズエラの社会主義政権のトップとして、3千万人を超える国民を統治し、世界有数の石油埋蔵量を掌握していた。
しかし、そのわずか数日後の5日、失脚した同氏は外国の法廷に囚人服姿で姿を現し、残りの人生を獄中で過ごす可能性に直面することとなった。
アメリカ連邦地裁の判事は、マドゥロ氏とその妻らを名指しした起訴内容について簡潔な概要を示した。マドゥロ氏は起訴状の全文朗読を拒否したが、その内容には麻薬テロ関連、共謀罪などを含む4つの罪状が盛り込まれていた。
63歳のラテンアメリカにおける社会主義の象徴的人物は権力を失ったものの、反抗的な態度は崩さなかった。自身を「ベネズエラ大統領」と称したマドゥロ氏は、法廷で無罪を主張した。
「私はニコラス・マドゥロ・モロスだ。1月3日以降、私は拉致され、ここにいる。私はベネズエラのカラカスにある自宅で、FBIに拘束された」と述べた。
妻のシリア・フローレス氏もまた、自身を「ベネズエラのファーストレディー」と名乗り、同様に無罪を主張した。
公判の中で、マドゥロ氏の弁護士は、拘束する過程で夫妻が負傷しており、医療的処置が必要であると主張した。
弁護士はまた、拘束の正当性に疑問を呈し、膨大な量の公判前申立てを行う考えを示した。
マドゥロ氏が法廷に入る際、手錠の金属音が響いた。同氏はカーキ色のズボンに、明るいオレンジ色の衣服を覆う濃紺のシャツを着用していた。罪状認否手続きが終了すると、マドゥロ氏はアメリカ連邦保安官に付き添われ、弁護席を後にした。
出口に向かう途中、傍聴席にいた反体制派の男性が立ち上がり、スペイン語でマドゥロ氏に詰め寄った。
皮肉な巡り合わせとして、現在は自由の身であるこの男性とは対照的に、マドゥロ氏は拘禁される立場となった。男性は2015年に国民議会選挙に立候補したが、2019年にはマドゥロ氏への危害を企てたとして投獄されていた。
男性に詰め寄られると、マドゥロ氏は足を止め、相手の方を向いて人差し指を掲げ、反抗的な態度でこう言い放った。
「私は戦争捕虜だ。そして、神に仕える者だ」 さらに自らを「拉致された大統領」とも表現した。
これに対し、男性はマドゥロ氏の発言を遮るように「私も神に仕える人間だ」と言い返した。
法廷内には40〜50人の報道関係者に加え、一般傍聴人も数十人詰めかけた。最前列には麻薬取締局(DEA)の捜査官とみられる人物が並んでいた。
失脚した独裁者への関心は極めて高く、20人以上の傍聴希望者が「ライン・デューズ(Line Dudes)」と呼ばれる専門の順番待ち代行会社に依頼し、氷点下4度という寒さの中、一晩中列に並ばせた。
筆者自身も午前4時に並び、午前8時に裁判所職員が順番を確認するまで屋外で待機し、その後ようやく法廷への入場が認められた。
ほんの数か月前まで、マドゥロ氏は「帝国主義の脅威」から祖国を守ると誓い、演説の場で剣を振りかざしていた。当時、彼が身に着けていたのは囚人服ではなく、軍服だった。
しかし、1月3日にアメリカ軍が首都カラカスを攻撃すると、作戦は数時間で完了し、マドゥロ氏はアメリカへと連行された。
それに先立つ数か月間、トランプ米大統領は、マドゥロ政権がアメリカに対する麻薬密輸に関与していると非難し、制裁措置の強化や石油封鎖を通じて圧力を段階的に高めてきた。また、ベネズエラの悪名高い犯罪組織「トレン・デ・アラグア」と政権が連携しているとも訴えていた。
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