論評
「地球上のどの国も、しかも、比べる国もないほど、この種の作戦を成し遂げることはできない」
ピート・ヘグセス国防長官
トランプ政権は決して謙虚で知られているわけではないが、ヘグセスのこの発言は事実を突いている。確かに、ベネズエラほどの軍事能力を有する国家に対して国境を越えた攻撃を実行できる国は、2か国、せいぜい3か国しか存在しない。
しかし、今回示したような指揮・統制・通信・コンピューター・情報・監視・偵察(C4ISR)の水準を要し、さらに数千マイル離れた場所でこの種の打撃を実施するための軍事資産を併せ持つ国となると、その候補は極めて限られる。それはすなわち、アメリカ合衆国である。
死者や装備損失を一切出さずにこのような作戦を遂行したことが、いかに並外れたことであるかは、公平な判断力を持つ者であれば誰しも認めざるを得ないだろう。もちろん、これほど大胆な作戦は論争を呼んでいるが、ここではひとまず、その作戦がどのように実行されたのかに焦点を当てる。
予想どおり、トランプ政権は詳細については口を閉ざしている。しかし、主要シンクタンクの分析や10数人の軍事系ブロガーの考察を総合すると、もっともらしい時系列が浮かび上がってくる。
「オペレーション・アブソリュート・リゾルブ」
1月3日にベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を拘束したアメリカの急襲作戦は、極めて綿密に調整された軍事・情報作戦であった。その時間軸は数か月前、2025年8月の「シェーピング作戦」から始まっている。CIAの要員がベネズエラ国内に潜入し、マドゥロ大統領の行動を追跡した。
これを支えたのが、継続的な監視を行うステルス無人機だった。こうして詳細なマドゥロ氏の「生活パターン(パターン・オブ・ライフ)」が作成され、晩秋までに首都カラカスにある軍事拠点「フォルティウナ要塞(国防省などが集積する大規模軍施設)」にあるマドゥロ氏の隠れ家を特定した。
12月中旬までに、米サイバー軍はベネズエラの電力網にマルウェアを埋め込むことで作戦をさらに強化した。一方、デルタフォースは、強化された避難用の防護室をガスバーナーで突破する訓練を含め、実物大の模擬施設で集中的なリハーサルを重ねた。
動員段階では、約2万人の人員、17隻の軍艦(ジェラルド・R・フォード空母打撃群を含む)、さらに強襲揚陸艦USSイオー・ジマなどをカリブ海に展開した。サイバー作戦は、フォルティウナ要塞の電力を遮断するための下地を整えた。電子戦機 EA-18Gグラウラーや早期警戒機 E-2Dホークアイなどの電子戦資産がレーダーを妨害し、航空監視を担った。また、内通者、スパイ、あるいは買収された当局者から、マドゥロ氏の日常行動に関する決定的な情報がもたらされた。
これらの要素によって、本来であれば極めて高リスクであった任務は、人的・装備的損失を最小限に抑えつつ、成功の現実的可能性を持つ作戦へと変貌した。
実行 段階ごとに
最終段階は、現地時間1月2日深夜から3日未明(米東部時間午後11時)にかけて開始した。150機以上の航空機が、ベネズエラ全土で連携した攻撃を実施した。主眼は敵防空網の制圧である。
攻撃対象は、フォルティウナ要塞、通信拠点、ラ・カルロタ空軍基地などの航空基地、ボリバル民兵本部、イラン製ミサイル艇を破壊したラ・グアイラ港、さらにエイゴット・ヘリコプター基地を含んでいた。グラウラーが敵レーダーを妨害し、対レーダーミサイルがS-300地対空ミサイルシステムを破壊した。
ベネズエラは世界的な防空大国ではないものの、その装備は相当なものであった。長・中距離防空システム53基、短距離ミサイル数十基、対空砲440門以上、さらに各部隊に分散配備した携帯式地対空ミサイル(MANPADS)約5千基を保有していたと推定する。
それにもかかわらず、アメリカ軍の妨害能力と精密打撃の効果、そして訓練不足・低賃金に苦しむベネズエラ軍内部の混乱と士気低下が相まって、マドゥロ側の部隊はほぼ麻痺状態に陥った。信頼できる情報によれば、内部で取り込まれた指揮官が待機命令を出したり、重要システムを停止させたりしたという。
敵防空網の制圧が有効なことを確認すると、午前2時ごろからヘリコプターによる侵入を開始した。USSイオー・ジマから、第160特殊作戦航空連隊の航空機11機が発進した。地形追随飛行で探知を避けつつ、MH-47Gチヌークがデルタフォース隊員を輸送し、MH-60Lブラックホークなどのヘリコプターはデルタ部隊とFBI人質救出チームの混成部隊を運んだとみられる。
MH-60 DAPガンシップは、フォルティウナ要塞周辺の尾根線をハイドラ70ロケットで攻撃し、潜在的脅威を排除した。1機のヘリコプターが損傷を受けたものの、運用は継続可能であった。
ヘリコプターは、MANPADSなどの対空脅威に対抗するため、XM216暗視フレアを展開した可能性が高い。
拘束
いかに計画が完璧であったとしても、ベネズエラで最も厳重に守られた拠点であるフォルティウナ要塞に多数のヘリコプターを侵入させるには、一定の幸運が必要だった。
推定200人のデルタフォース隊員とFBI捜査官が降下し、内通者からの情報に導かれてマドゥロ氏の居宅に到達した。彼らは、マドゥロ氏と妻が防護室に立てこもる前に身柄を確保した。分析によれば、防護室でもデルタ部隊が携行していた装備には耐えられなかったとされる。
2人を結束バンドで拘束し、目隠しをした上で、生存したまま無傷で連行した。
退去とその後
退去は米東部時間午前3時20分までに開始した。ヘリコプターは、注意を退路からそらすための継続的な「空爆掩護」に守られつつ北上した。「対象」がUSSイオー・ジマに安全に収容された後、マドゥロ氏と妻はDEAおよびFBIによって正式に拘束された。
完璧な軍事作戦遂行が不可欠であったことは言うまでもないが、決定的だったのは内通者の存在であった可能性が高い。ロイター通信によれば、CIAの協力者は「マドゥロ氏の正確な位置を特定できる態勢にあった」という。
フォルティウナ要塞に5千人もの精鋭警護部隊がいたにもかかわらず政権が麻痺したのは、裏切り、あるいは見返りを与えられた結果、不抵抗という見方が広がっている。マドゥロ氏の息子であるニコラス・マドゥロ・ゲラ氏も、内部の裏切りを示唆し「誰が裏切り者だったのかは、歴史が語るだろう」と述べている。
アメリカ軍の死者ゼロ。装備損失ゼロ。マドゥロ氏は拘束下にある。
しかし、次は何が起こるのか。
マドゥロ氏を排除した結果、ベネズエラが混乱に陥る、あるいは別の強権的指導者が台頭するようであれば、この作戦の成功は損なわれる。しかし、2024年7月の選挙で国民の約70%がマドゥロ氏に反対票を投じていることを踏まえれば、適切な支援があれば移行に向けた強固な基盤は存在する。
アメリカが作戦後の安定化計画を欠いているとは考えにくい。中国やロシアの地域的影響力が低下し、アメリカと民主的なベネズエラと協力してその莫大な石油資源を開発する可能性が開かれれば、これはベネズエラ国民にとっても、地域の安定にとっても転換点となり得る。
勢いが維持されるならば、双方にとっての勝利となるだろう。

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