習近平による高市早苗批判は逆効果に終わる

2026/05/26 更新: 2026/05/26

5月24日、日本の読売新聞は複数の日本政府関係者の話として、トランプ米大統領が5月14日に北京で習近平と行った非公開会談において、習近平が台湾問題に加え、台湾の頼清徳総統と日本の高市早苗首相を名指しで批判し、両者は「地域の平和を脅かす」と主張したうえ、米国に両者を支持しないよう求めたと報じた。

しかしトランプは習近平に同調せず、むしろその場で高市首相を擁護し、高市首相は「優れた指導者だ」と述べた。

中国共産党(中共)政府にとってさらに痛かったのは、トランプが5月15日に北京訪問を終えた後、予定通りエアフォースワン機上から自ら高市首相に電話をかけ、両者が約15分間にわたって通話したことだ。高市首相はその後公式に「トランプ大統領から賜った多大な支持に、心から深く感謝する」と表明した。

習近平はトランプ米大統領の面前で頼清徳氏と高市早苗氏を批判し、どのような効果を狙っていたのか。

習近平の狙いは、トランプに日米・米台関係を自らの描くシナリオに沿って処理させ、台湾統一という夢の実現を容易にすることにあった。

では習近平の思惑通りになるのか。筆者の見方は「ならない」というものだ。それどころか逆効果に終わる。理由は五つある。

一)習近平は自分が何を言っているのか分かっていない。

老子は『道徳経』に「知人者智、自知者明」と記している。他者を知る者は智恵があり、自分自身を知る者は明智だという意味だ。

トランプ氏の面前で高市氏を批判したことは、習近平がトランプを理解していないだけでなく、自己認識も欠いていることを示している。

2人の関係はどのようなものか。それは「同じ側の人間」という関係だ。その実質は以下の通りである。

両者は保守的な価値観を共有し、共通の友人として日本の安倍晋三元首相を持つ。互いを高く評価し、ともに決断力のある指導者だ。互いを必要ともしている。米国はインド太平洋戦略において日本を強固な同盟国とする必要があり、日本は米国の安全保障、同盟関係、エネルギーを必要とする。自由市場経済の擁護者としても一致し、台湾海峡の平和と安定の維持についても同じ立場にある。

グローバル戦略の観点から見れば、高市首相の背後に立っているのは誰か。他ならぬトランプ米大統領だ。高市首相を批判することは、実質的に米国とトランプを批判することに等しい。これがトランプ大統領がその場で習近平に反論した理由であり、帰国途中に高市首相へ電話した理由でもある。

5月15日、高市首相はXに次のように投稿した。

「先程、トランプ大統領と電話会談を行いました。 中国訪問を終えられ、お帰りになるエアフォース・ワンの中から、お電話をいただきました。 トランプ大統領からは、今般の中国訪問について詳細に説明があり、経済安全保障を含む経済や、安全保障など、中国をめぐる諸課題を中心に意見交換を行いました。 また、イラン情勢についても、トランプ大統領に日本の考えを改めてお伝えしました。 日米同盟の更なる強化に向けた協力やインド太平洋、中東などの国際情勢への対応で、今後とも、トランプ大統領と緊密に連携してまいります」

習近平に自己認識が欠けているというのは、習近平が扉を閉めた中では「山に虎がいなければ猿が王様を気取る」状態に過ぎないからだ。国門を開けて外を見れば、習近平とは何者か。トランプは神を信じ、信仰の自由を尊重・保障している。習近平にそれができるだろうか。トランプは80歳近くにして、議会で草稿なしに数時間演説し、終始鳴り止まない拍手を受けている。習近平にそれができるだろうか。トランプは記者から自由な質問を常時受け付けている。習近平にそれができるだろうか。2026年、トランプは中共の「旧友」ベネズエラのマドゥロ大統領を拘束し、中共の「旧友」イランのハメネイ最高指導者を排除した。習近平は「旧友」のために何をしたのだろうか。

習近平が2022年に自ら選んだ中央軍事委員会の委員6名のうち、2026年までに5名が当局によって「軍委主席負責制を重大に損なった」と認定されている。習近平が2015年以降、自ら抜擢・重用した火箭軍(ロケット軍)の歴代司令官4名、魏鳳和、周亜寧、李玉超、王厚斌は、今や全員が「重大な腐敗分子」となっている。

習近平にトランプ米大統領へ指図する資格があるというのだろうか。

二)台湾海峡の緊張の根源は中共にある。

習近平が高市首相を批判した最大の理由は、「台湾統一」という大業への執念を手放せないからだ。習近平は、台湾に武力行使する際に米国が傍観するだけでなく日本も介入しないことを望んでいる。それができれば、毛沢東も鄧小平も成し遂げられなかったことを実現し、歴史に名を残せると考えているのだ。

2020年に中共が香港に「香港版国家安全法」を強制施行し、「一国二制度」を23年前倒しで終わらせて以来、中共は台湾の掌握を次の目標として即座に定めた。

2020年、武漢発の感染症が中国全土・全世界に拡大する最中、中共は渤海から黄海、東シナ海、南シナ海にかけて異例の密度で数十回もの軍事演習を実施し、台湾への軍事的脅威は前例のないレベルに達した。その結果、2021年5月1日付の英誌『エコノミスト』は台湾を「世界で最も危険な場所」と描写するに至った。

それ以来、中共は軍事・経済・外交などあらゆる手段を駆使して台湾に「極限の圧力」をかけ続け、台湾海峡情勢を継続的に緊張させ、台湾問題の国際化を促進してきた。その結果、米国・日本・韓国・フィリピン・オーストラリア・G7・EU・NATO・その他の国際組織が繰り返し台湾問題について立場を表明し、中共が武力や強制手段によって一方的に台湾海峡の現状を変えようとすることに強く反対するよう追い込まれてきた。

中共が台湾海峡で波乱を起こし続けなければ、「信仰の自由、言論の自由、恐怖からの自由、欠乏からの自由」をとうに享受している台湾の2300万人は、地球上でも稀な「桃源郷の民」でいられたはずだ。

三)中共はすでに日本の戦略転換を促した。

第二次世界大戦終結・日本敗戦後、連合国軍最高司令官マッカーサー将軍の主導のもと、日本はかつての軍国主義体制を根本から改造し、米国主導の自由民主主義体制に秩序立って組み込まれた。

日中関係について言えば、国交正常化の過程において、日本には中国侵略の歴史があったため、歴代の日本政府は中共に対して一貫して低姿勢を取り続け、謝罪を繰り返し、対中関係の処理において中共を刺激しないよう努め、「ノー」と言うことはほとんどなかった。言う際にも、相当に婉曲な表現が用いられた。

1978年10月に鄧小平が訪日した際、鄧小平は中国と日本の間の差があまりにも大きいことを痛感し、「政治・経済・文化・科学技術などの分野での両国の友好的な交流強化」を望んだ。同年12月、鄧小平が中共第十一期三中全会で改革開放を打ち出すと、日本は中共の改革開放を支えた最初にして最重要の外部の力の一つとなった。

中国に最初に投資した国は日本であり、対中投資額が最大の国も日本だった。1989年に鄧小平が天安門事件の虐殺を引き起こして国際制裁を招いた後、最初に対中関係を正常化した国も日本であり、対中援助額が最大だった国も日本だった。

しかし、日本政府の低姿勢・援助・忍耐は、中共が歴史の重荷を下ろして過去の怨恨を解消する結果をもたらさなかった。むしろ鄧小平死後、中共は気に入らないことがあると歴史的憎悪を利用・増幅させ、反日感情を煽り、日中関係を激化させてきた。

習近平が政権を握って以降、日中関係は一路悪化した。習近平が国家主席に就任した13年間、日本に国事訪問を一度も行わず、繰り返し反日の波を巻き起こした。

2025年11月、高市早苗首相は衆議院での諮問において、台湾海峡で戦争が起きた場合「最悪の事態を想定すると」日本にとって「存立危機事態に該当する可能性は極めて高い」と述べた。日本の新安保法制によれば、日本が「存立危機事態」にある場合、集団的自衛権を行使できる。中共はこれを根拠に、高市首相が中共による武力統一時に日本が台湾海峡へ軍事介入する可能性を示唆したと見なした。

これ以降、中共は新たな反日の波を起こし、メディアによる砲撃・軍事的脅迫・経済的威圧・政治的対抗・外交的孤立などの手段で日本に極限の圧力をかけた。中共の党機関紙は高市早苗首相に「九つの罪状」を押し付けるにまで至った。

しかし中共は、日本の民意を誤読し、国際社会の日本への共感を見誤り、台湾の安全が世界に持つ意味を過小評価した。

1月23日、高市首相が衆議院を解散して前倒し選挙に踏み切ると、高市首相が率いる自民党は大勝し、高市首相は高得票で日本の首相に選出された。

日本の強固な民意と世界最強国・米国の支持を背景に、中共の極限の圧力は狙い通りの効果をもたらさなかったばかりか、日本の国際戦略に重大な転換を促した。その主な内容は次の八点に集約される。

(1)日本は米国との同盟関係を全面的に格上げ、日米は一体となって臨む

(2)中共との関係を「最重要二国間関係」から「重要な隣国」へ格下げ

(3)「防衛装備移転三原則」を改正し、殺傷性を持つ完成品兵器の輸出を正式に解禁

(4)防衛費をGDP比2%まで引き上げ

(5)「安保三文書」の改定に着手し、「非核三原則」における核兵器の持ち込みを認めない原則の見直しを含む。

(6)「包括的・先進的環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)」を通じ、自由市場経済国との関係を強化

(7)中共を排除した強靭なサプライチェーンの再編を通じた経済安全保障の強化

(8)憲法改正に着手し、日本が戦後の呪縛から脱して「普通の国」へ向かうことを推進

習近平は高市首相の高得票当選を演出した「最高の助っ人」となり、日本の戦略大転換を促した「最高の産婆役」ともなった。

四)中共はすでに台湾の戦略転換を促した。

中国大陸は長らく台湾企業の海外投資の最大の目的地だった。2010年、台湾企業の対中大陸投資額は146億ドルに達し、台湾の対外投資総額の83.8%を占めた。

しかし習近平政権以降、米国との貿易戦争、香港の「一国二制度」の破壊、繰り返される台湾海峡での武力誇示、武力統一シグナルの発信、台湾への極限の圧力など。これらの要因が複合的に作用し、台湾企業の対中大陸投資は急落した。2025年には対中大陸投資額はわずか15億ドルまで落ち込み、比率もわずか3.8%にとどまった。

2024年には米国が台湾企業の最大の投資先となり、投資額は141億ドルに達した。2025年には、台湾の対米直接投資の公約・計画規模は2500億〜5千億ドルに及ぶ。

台湾は豊かな島であり、独自の科学技術、経済、政治、豊富な人的資源と文化的蓄積を持つ。しかしエネルギー、食料、資源、市場は国際社会への依存度が高い。台湾が最も望まないのは台湾海峡での戦争であり、台湾は歴史的に他国に対して武力を行使したことがない。

中共が「台湾独立反対」を口実に台湾海峡での武力誇示を繰り返し、一方的に武力で台湾海峡の現状を変えようとしてきたからこそ、台湾は中共と距離を置き、米国を中心とする自由世界側に軸足を移してきたのだ。

しかも中共の「台湾独立反対」は自己欺瞞の茶番に過ぎない。

台湾の共産党がその綱領に「台湾共和国」樹立を盛り込む最初の後押しをしたのは中共だ。中華民国の領域内に「国家の中の国家」、すなわち中華ソビエト共和国という「共産独立国」を最初に作ったのも中共だ。中華民国の領域内の少数民族に独立を最初に煽動したのも中共だ。とりわけ、中共の独裁者・江沢民が台湾の40倍以上に相当する中国領土を無条件でロシアなどに譲渡し、中共を現代世界最大の売国政党とした。世界最大の売国政党に、国家主権・領土の完全性と安全を守ることなどできるはずがない。

そもそも台湾は1949年以来、一貫して独立した政体「中華民国」として存在し、国家のすべての要件を備えている。台湾にあえて台湾独立を目指す必要など何があるのか。

中共が台湾を武力統一しようとする本当の理由は、台湾が中華圏における自由民主主義の灯台だからだ。中共はその灯台を消し、専制独裁に置き換え、台湾を第二の香港にしようとしている。

このことが、台湾を同じ価値観を持つ米国・日本などとの関係をますます深める方向に向かわせているのだ。

五)中共は日米台のより緊密な協力を促している。

日本と台湾は、米国のインド太平洋戦略における二つの重要な支点であり、共産主義の膨張を封じる第一列島線上の二つの戦略的要地であり、米国にとって重要な経済・技術・防衛の協力パートナーでもある。

習近平がトランプの面前で頼清徳・高市早苗を批判したことは、米台・日米関係を離間させる効果をもたらさないどころか、逆にトランプが日・米・台の協力強化をより重視するよう促すばかりだ。

米国は日米同盟・日米印豪クアッド・米比同盟・「台湾関係法」・G7・米ASEAN関係などを通じて、日・米・台を価値・安全保障・利益の共同体へと形成していく。

さらに大きな視点から見れば、2026年に至るまで、歴史の大きな流れは中共に不利な方向へと変化しつつある。中共は南米でパナマとベネズエラを失い、キューバを失いつつある。中東ではシリアを失い、イランも失う可能性がある。欧州ではウクライナ・チェコ・リトアニア・ハンガリーを失い、ロシアを失う可能性もある。アジアではフィリピン・ネパール・バングラデシュを失い、パキスタンも失う可能性がある。

中共の「旧友」たちは次々と、転向・逮捕・失脚・排除・反目・選挙敗北の憂き目を見ており、国際的に中共はますます孤立しつつある。この歴史的大潮流もまた、日・米・台関係をさらなる高みへと押し上げることになるだろう。

結語

習近平が政権を握って14年、その本来の意図は中共の赤い天下を永続させることであり、ソ連崩壊・ソ連共産党解散という歴史が中共において再現されることを望まなかった。しかし事は思い通りに進んでいない。習近平の言動はむしろ、中共が滅亡へと向かうプロセスを絶えず加速させており、それゆえ習近平は「総加速師」の異名を持つに至っている。

習近平がトランプ米大統領の面前で高市早苗首相を批判したことは、習近平が中共を自ら崩壊させる力に、また一筋の薪をくべたに過ぎない。

(大紀元初出)

王友群
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