米サイバーセキュリティ企業VulnCheckは27日、中国深センの智博通電子(Zbtlink)が製造するルーターに、監視に利用できる機能が組み込まれ、遠隔から操作できると明らかにした。
研究者らは今月初め、Zbtlinkが製造する20種類以上のルーターに、出荷時点ですでにバックドアが組み込まれていたと公表した。これらのルーターは35秒ごとに、特定のIPアドレスや中国で登録されたドメインへ自動接続していた。
VulnCheckは米マサチューセッツ州に拠点を置く。同社の最高技術責任者(CTO)、ジェイコブ・ベインズ氏は最新のブログ記事で、「Darklantern」と「Speakingstone」と呼ばれる2つの埋め込みプログラムを新たに発見したと明かした。いずれも、今月初めに見つかった「Endlessdoors」より前から存在していたという。
ベインズ氏によると、この2つのバックドアを使えば、ルーターが接続されているネットワークの情報を容易に取得できる。中でもSpeakingstoneには、DNS設定の変更、リバースSSH接続の確立、機器情報の送信、遠隔コマンドの実行といった機能があり、重大なセキュリティリスクになると指摘した。
VulnCheckが20種類以上のZbtlink社ルーターにEndlessdoorsが存在すると公表した翌日、Zbtlinkは該当するルーターの販売を停止し、問題となったソフトウェアをウェブサイトから削除した。
同社は当時、このプログラムについて、アフターサービスや保守に使う正規の遠隔サポート機能であり、悪意ある目的に使われたことはないと説明した。
Zbtlinkのルーターは世界各地で販売されている。同社は一般消費者にはあまり知られていないメーカーで、主にルーターを製造し、他社が自社ブランドを付けて販売している。
VulnCheckは、このため利用者が、自分の使っている機器にZbtlink製のハードウェアやファームウェアが採用されていることを知らない場合もあると指摘した。
ベインズ氏は「Zbtlinkという名前を聞いたことがなくても、その製品が別のブランド名で流通している可能性はある。Zbtlinkのハードウェアが流通すれば、ファームウェアや埋め込みプログラムもそれに伴って広がる」と警告した。
同氏によると、Speakingstoneが組み込まれたルーターは、未登録のバックアップ用ドメインへの接続を試みる。VulnCheckの研究者らはそのドメインを登録し、通信を観測するためのシンクホールサーバーを設置した。その後、影響を受けたルーターから接続や機器情報が送られてくるようになった。
VulnCheckは、392台のZbtlink製機器がこのドメインへの接続を試みたことを確認した。このうち390台はネットワーク上の位置情報では中国国内にあり、約83%が中国移動(チャイナ・モバイル)のネットワークを利用していた。
中には、2年間にわたり途切れることなく定期的なビーコン信号を送り続けている機器もあった。
研究者らはさらに、Zbtlink関連のファームウェアに含まれるSpeakingstoneが、機種やファームウェアのバージョンがほぼ同じで、主に中国移動のネットワークを利用する特定の機器群に集中していたことも確認した。接続が確認された392台のうち363台が同じ機種で、同じバージョンのファームウェアを使用していた。
中共は長年にわたり、インターネット上で国民への監視を続けてきた。
VulnCheckは今回の調査結果について、「中国国内の監視技術が、中国のネットワーク上で大規模に導入されていることを示している」と指摘した。一方、これらのルーターはアメリカを含む世界各地でも販売されている。
Zbtlinkの広報担当、マイケル・シャはロイターへのメールで、問題の機能は自社製品に搭載した正規の遠隔サポートツールとクラウドアクセス機能で、「認可されたアフターサービスや保守にのみ使用している」と説明した。
また、この遠隔アクセス機能について「セキュリティ上のリスクは一切なく、当社は製品の安全性を極めて重視している」と主張した。
シャは、監視機能についての質問に回答せず、VulnCheckが、この埋め込みプログラムは正規の遠隔サポートツールではないと指摘した点についても回答しなかった。
ベインズ氏はブログ記事の最後で、Zbtlink製ルーターを米国内のネットワークで使用すべきではないと警告した。
「これらは監視機能を内蔵したルーターで、中国で製造され、事情を知らない消費者に販売されている。バックドアを発見した攻撃者なら容易に悪用できる」
さらに、「これは理論上のリスクでも、取るに足らない脆弱性でもない。実在し、記録によって確認された埋め込みプログラムだ。我々はビーコン通信、スキャン結果、root権限を確認している」と述べた。
今回の調査で特に警戒すべきなのは、単なる設定ミスや一般的な脆弱性ではなく、出荷時からバックドアが組み込まれていた点だ。一部のバックドアは外部サーバーと通信し、遠隔からコマンドを実行するなど、ルーターを操作できる機能を備えていた。
さらに問題となるのは、ガジェット市場で一般的な「ホワイトラベル(OEM/ODM)」の存在だ。Zbtlinkというメーカー名に馴染みがなくても、同社が製造した機器が別ブランド名で販売されている場合がある。Amazonなどで販売される製品についても、利用者が実際の製造元を認識しないまま購入する可能性があり、どのメーカーのハードウェアやファームウェアが使われているのか分かりにくい点がリスクを大きくしている。
また、こうしたルーターが企業やテレワーク環境で使われた場合、家庭側のネットワーク機器を足掛かりに、企業ネットワークへ影響が及ぶ恐れもある。ネットワーク機器を選ぶ際には、価格や性能だけでなく、製造元の信頼性やファームウェアの管理体制も確認する必要がある。
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