ロシアで国外脱出の動き 強制動員への不安やネット規制などが背景

2026/09/17 更新: 2026/09/17

ロシアとウクライナの戦争は4年半に及んでいる。ウクライナによるドローン攻撃が激化するなか、ロシアでは新たな動員が行われるとのうわさが広がり、国外へ逃れる人や、脱出を検討する人が増えている。

今年夏にロシアを離れたデジタルマーケティング業界で働く28歳の男性はAP通信に対し、もともと故郷を離れたくない人間だが、現在の政治情勢やインターネット規制などを理由に、家族や友人を残して国外へ逃れざるを得なかったと語った。いつ戻れるかは分からないという。

今年夏に相次いだウクライナのドローン攻撃は、ロシア国内で深刻な燃料危機を招き、急成長していた電子商取引にも大きな打撃を与えた。ロシア当局は昨年以来、サイバー攻撃への対策を理由に、インターネットへの接続を厳しく制限している。

戦争が始まってから最初の1年間で、数十万人のロシア人が国外へ逃れた。ロシア人の国外脱出を支援する団体「コフチェグ」によると、先月寄せられた相談件数は5月の約8倍に達した。

ロシアのネット上で広がる「国外脱出」

AP通信によると、2022年に動員を逃れるため多くの男性が国外へ出た時とは異なり、現在、国境検問所に混雑は見られていない。アルメニア、ジョージア、カザフスタン、トルコなど、ビザなしで渡航できる国への航空券も不足していない。

一方、ロシアのSNSでは、国外脱出をめぐる動画が相次いで投稿されている。戦争を理由にロシアを出る決意をした人がいるほか、景気の悪化や先行きへの不安、自由への制限が強まっていることを理由に挙げる人もいる。

ウクライナ側は、ロシアが下院選挙後に新たな動員を行う計画だとしている。一方、ロシア政府はこの主張を繰り返し否定している。

コフチェグの緊急支援コーディネーター、ヤン・スロヴィツキは、動員への不安や燃料危機、インターネット規制を背景に、ロシアでは7月中旬以降、「パニックに近い国外脱出の動き」が起きていると指摘した。

モスクワ駐在の外交官はAP通信に対し、今年夏、ロシア人の不安が明らかに高まったと語った。また、隣国ジョージアやアルメニアに滞在するロシア人が例年より増えているとの話も出ているという。

アルメニア安全保障会議のアレン・シモニャン書記は先月、ロシアメディアの取材に対し、徴兵を避けるためアルメニアへ移るロシア人には干渉せず、必要であれば支援すると述べた。

これに対し、ロシア外務省はシモニャンの発言を「挑発的だ」と非難した。

ロシアの議員もロシアメディアの取材に対し、「うわさを聞いただけで祖国を離れるような、祖国を愛していない人間はロシアには必要ない。出たいなら出ればいい」と述べた。

動員への不安や自由の制限 国外脱出の背景

前述の28歳の男性によると、2022年にプーチンが30万人規模の動員を発表した際、健康上の理由から平時の兵役対象ではなかったものの、当局がどのような対応を取るか分からず、安全のため一時ロシアを離れた。

2025年に故郷へ戻り、自宅から海外の顧客向けに仕事をしていた。しかし、政府が数千に上るネットサービスやウェブサイトへの規制を強めたため、仕事に支障が出るようになった。規制を回避できる接続先を何度も切り替えながら仕事を続けていたという。

男性が再びロシアを離れたもう一つの理由は、新たな動員が行われるとのうわさだった。先月ロシアを離れたモスクワ出身の23歳の女性も、夫が徴兵されることへの不安を理由に挙げた。

女性によると、2022年には父親が国外へ逃れたことで動員を免れた。今年、夫が修士号を取得した後、兵役の延期措置を受けられなくなることが分かり、強制的に軍へ送られることを恐れて家族で国外へ出る方法を調べたという。

アルメニアへ逃れた大学卒業直後の若者は、本来なら戦場に送られるはずのない人まで強制的に徴兵され、戦場に送られたと聞いたと明かした。卒業したばかりの若者にとっては、生死に関わる問題だという。

戦争に公然と反対する野党ヤブロコを支持するため最高裁判所前に集まり、拘束された後、国外へ逃れた人もいるという。ヤブロコは戦争に公然と反対していた政党で、下院選挙への参加を認めない判断が出ていた。

国外脱出を考えている35歳のロシア人男性は、言論の自由がなく、経済が悪化し、学校では戦争や暴力を正当化し、世界からの孤立を促すような宣伝を子供たちに聞かせる国では暮らしたくないと語った。

男性は現在のロシアについて、「ロシア人は巨大なデジタル監獄の中で暮らしている。何も自由に言えず、何も自由にできない。何の権利もない」と表現した。

李平
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