「消えた文化財はどこへ?」
そう声を上げた市民が経営する店に、その後、行政5部門が次々とやって来た。わずか約2カ月で検査は15回。店はついに休業へ追い込まれた。
これは偶然なのか、それとも告発への報復なのか。
中国・山東省菏沢市で焼肉店を経営する張さんは今年6月、地元で発掘された文化財の行方について実名で告発した。この問題は中国メディアも報じている。
問題の文化財は、2010年に菏沢市で発見された元代の沈没船から出土したもの。当時の中国中央テレビ(CCTV)の映像には、白地に青い文様を描いた青花磁器とみられる器が映っていた。
しかし張さんが確認したところ、この器は博物館への引き渡しリストや収蔵品目録に記載されていなかった。そこで「発掘されたはずの文化財はどこへ行ったのか」と実名で告発した。
するとその後、張さんの店に行政の検査が相次いだ。
市場監督、消防、自然資源など5部門が約2カ月で計15回訪問。多い日には1日で3部門が来たという。防火設備や違法建築、焼肉の煙など、さまざまな問題を指摘された。
張さんによると、店をめぐる苦情は116件に上り、調べたところ、すべて同じ人物から寄せられていたという。
相次ぐ検査の末、焼肉店は9月7日に休業。張さんは現在、生活のため店先で焼き芋を売っている。
さらに張さんは、当時の発掘について、発掘時の写真資料が失われているほか、出土した文化財の一覧表も作られていなかったと関係者から聞いたとしている。実際には、行方が分からなくなった文化財は1点だけではない可能性もあるという。
一方、当局は張さんの主張に対し、「映像に映っているのは青花磁器の破片だった」と説明、現在も詳しい調査を続けているとしている。
しかし中国のネット上では、この説明自体が真相を隠すための言い逃れではないかとの疑問が広がっている。さらに、告発後わずか約2カ月で5つの行政部門が計15回も店を検査したことから、文化財の紛失には深い事情があり、相当な地位にある当局者が関わっているのではないかとの見方も出ている。
一連の検査が告発への報復だったのかは、今のところ分からない。だが張さん本人は、そう信じて疑わない。
文化財の行方を問いただけの市民が、店を休業せざるを得なくなり、今は店先で焼き芋を売っている。
「おかしい」と声を上げると、こうなるのか。この一件は、中国で市民が行政に異議を唱えることの重さを、あまりにも生々しく映し出している。
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