アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領は2026年9月、第81回国連総会で演説し、世界保健機関(WHO)から脱退する方針を表明した。新型感染症のパンデミック時に各国で実施された政策を「科学を装った社会的統制の世界的な実験」と批判し、国際機関による国家や個人への統制に反対する姿勢を鮮明にした。
自由市場資本主義を掲げるミレイ氏は演説を通じ、WHOだけでなく国連を含む国際機関が各国の主権や個人の自由に過度に介入しているとの認識を示した。経済規制や環境政策、ジェンダー政策、移民政策など国際社会が進める政策課題にも異議を唱え、国家主権、自由、私有財産を重視する立場を前面に押し出した。
「WHOを巡ってミレイ氏は、アルゼンチンがパンデミック当時、自らをWHOの『優等生』だと誇って指示に盲従していた過去にも言及した。しかし、国家が公衆衛生を理由に国民の労働や教育を制限し、家族の最期を看取る機会まで奪ったと主張。こうした対応を「ジェノサイド」と表現したほか、他者との接触や外出への恐怖を広げた政策を「心理的テロ」だったと厳しく批判した。
ミレイ氏の批判はWHOにとどまらなかった。国連についても、本来は国際法を維持し、国家主権を尊重しながら、武力ではなく協力によって紛争を解決するための組織だったとした上で、現在は「官僚的リヴァイアサン」に変貌していると主張した。
ルートヴィヒ・フォン・ミーゼスの「善き人々は他者の人生をコントロールしようとは考えない」との言葉を引用し、国連が各国の国内政策に過度に介入しているとの見方を示した。独裁政権への対応やイスラムテロ、アフリカでのキリスト教徒虐殺への国連の対応を問題視する一方、自由民主主義諸国には「オーウェル的」な統制を押し付けていると批判した。
国際的な政策課題についても、「アジェンダ2030」は失敗したとし、現在進められている「アジェンダ2045」についても同様の結果になるとの見方を示した。経済規制や過激な環境主義、ジェンダー政策、無制限の移民政策などについて、各国の主権を侵害するような国際的介入を拒否する姿勢を示した。
こうした主張の背景には、国家による統制よりも個人の自由と市場経済を重視するミレイ氏の政治姿勢がある。経済政策では「自由企業資本主義」への全面移行を掲げ、自由市場を単なる経済政策ではなく、国家が自らの運命を決定するための基本原則と位置付けた。
外交面では、米国とイスラエルとの価値観の共有を明確にした。イラン革命防衛隊をテロ組織に指定し、過去のテロ事件に対する責任を追及する姿勢も示した。
人工知能(AI)政策でも、国家による「事前規制」を拒否する立場を強調した。アルゼンチンを世界有数のAI開発拠点にするとし、AIエージェントを利用する企業への有限責任制度や税制上の優遇措置を打ち出した。
ミレイ氏はドナルド・トランプ米大統領のビジョンを共有するとし、生命、自由、私有財産といった価値を守るため、西側諸国がAI開発を主導すべきだと主張した。
領土問題では、マルビナス(フォークランド)諸島、サウスジョージア・サウスサンドウィッチ諸島と周辺海域への主権を改めて主張した。英国による石油開発「シーライオン・プロジェクト」などに反発し、正式な抗議や関係企業への制裁、「国家主権防衛法案」の提出など具体的な対応を進める方針を示した。
ミレイ氏は演説の最後に「衰退は宿命ではなく、繰り返された決断の結果である」と述べた。国際機関による統制より国家主権を、政府による規制より自由市場を重視する立場を改めて示し、アルゼンチンを政治的、経済的、軍事的に影響力を持つ国家へ再建すると訴えた。
最後は「天の軍勢が我らと共にありますように。そして、自由万歳、くそったれ!」との言葉で締めくくった。
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