中国製車載カメラ ノルウェー軍施設の暗証番号を記録 データ流出懸念で米欧が規制強化

2026/10/19 更新: 2026/10/19

ノルウェーで実施された軍事演習で、中国製自動車の車載カメラが軍事施設の入退場ゲートの暗証番号や、車両の走行経路、乗降者の情報などを記録していたことが明らかになった。コネクテッドカー(通信機能を備えた車両)を通じた機密情報の流出に対する懸念が高まっており、米欧諸国などでは中国製車両への規制強化が進んでいる。

ノルウェー紙「ダグスアヴィーセン」によると、ノルウェー軍は先月14日から18日にかけて、オスロ空港で安全保障に関する訓練を実施。訓練中、兵士が車載スクリーンを操作した際、車載カメラで撮影された映像が車両内に保存されていることを発見した。

映像には、車両への乗降者や走行経路が記録されていたほか、軍事施設の入退場ゲートを開けるための暗証番号も映り込んでいたという。問題となった車両はいずれも中国製で、少なくとも2台は、中国の国有自動車大手・長安汽車傘下のブランド「ディープブルー(深藍)」の車両だった。

台湾国防部系シンクタンク「国防安全研究院」の研究員、沈明室氏は、中国製車両が軍事基地や政府機関、重要インフラの周辺環境を広範囲に記録し、正確な位置情報を取得できる点を指摘している。

沈氏は「これらの車両は、軍事基地や政府機関、重要インフラの周辺環境をくまなくスキャンし、正確な位置情報まで記録できる。つまり、その国の機密情報や機微なデータが、そのまま中国へ送信されることになる」と警鐘を鳴らした。

また、中国の国家情報法やデータ安全関連法規をめぐっては、中国企業が中国共産党や関係当局への協力を求められる可能性があると指摘。海外で事業を展開する企業が現地法令の順守を約束していても、中国国内法との関係から、データの提供を拒否できない場合があるとの見方を示した。

沈氏は「中国の国内法は、海外の自動車販売業者を直接拘束するものではないかもしれない。しかし、中国企業は法的にデータ提供を拒否できない場合がある。そのため、米欧諸国は、自国にある中国製車両のデータがどこへ流れているのか、強い疑念を抱くことになる」と述べた。

韓国でも軍事施設への出入りに懸念

中国製スマートカーの海外進出が拡大するなか、データ保護や国家安全保障をめぐる懸念は各国に広がっている。

韓国でも最近、政界関係者が、高精度センサーを搭載した中国製コネクテッドカー約200台が、韓国内の主要な軍事基地に自由に出入りしていると明らかにした。

米国の経済学者、黄大衛氏は、中共政権が電気自動車を国家戦略上の重要分野と位置づけていることに言及し、車両を通じた情報収集の規模と精度に警戒感を示した。

黄氏は「その用途は、一般的な偵察衛星や情報要員の活動をはるかに超える。データ収集の密度、カバーする範囲、情報の精細さは、これまでの歴史には存在しなかった規模だ。私は以前から、こうした電気自動車は巨大な安全保障上のリスクだと考えている」と述べた。

車両の通信機能を通じた遠隔操作も懸念材料となっている。昨年、ノルウェーのオスロで公共交通を運行する事業者「ルーター」が実施した検証では、中国のバスメーカー、宇通客車が製造する電動バスについて、理論上、無線通信によるソフトウェア更新(OTA)機能を通じて遠隔操作で車両をロックできることが示された。

沈氏は、車両に外部から不正に操作できる仕組みが組み込まれている可能性にも言及。「平時には作動しなくても、紛争や危機が発生した際に遠隔操作で数万台の車両を機能停止させたり、交通ネットワークを妨害したりすることが可能になれば、深刻な社会的混乱を引き起こしかねない」と警告した。

米欧諸国、相次いで中国製車両を規制

こうした安全保障上の懸念を背景に、米欧諸国などでは中国製自動車に対する規制が強化されている。

英国防省は、中国製部品を含む自動車について、一部の機密性の高い軍事施設への乗り入れを禁止した。ポーランドも、保護対象となる軍事施設への中国製車両の進入を禁じたほか、公務用携帯電話をこれらの車両に接続することを禁止している。

イスラエルは中国製自動車の軍事基地への進入を制限し、以前に将校向けに支給していた中国製車両約700台を回収した。

米国では、ホワイトハウスが中ロと関係のあるコネクテッドカーを対象とする規則を導入している。さらに、米議会では「コネクテッドビークル安全保障法」の制定に向けた動きが進んでいる。

同法案が成立すれば、中国に関連するコネクテッドカーやソフトウェア、ハードウェア、重要技術の米国市場への参入を明確に禁止するとともに、商務省の執行権限を強化することになる。

黄氏は、こうした動きを技術と安全保障をめぐる国際秩序の変化として捉える。「グローバル化の時代に掲げられていた、技術に国境はなく、サプライチェーンを世界で共有するという理想主義は、技術をめぐる新たな鉄のカーテンと国家安全保障の防護措置によって、完全に閉ざされつつある」と語った。

そのうえで、「今後、スマートカーや通信ネットワーク、IoTなど、重要な技術や科学技術、資材に関わる分野では、地政学的な判断に基づき、厳格な分離が進んでいくだろう」と述べた。

今回の軍事演習で使用された車両は、ノルウェーのレンタカー会社「ハーツ」が軍に提供したものだったという。同社には、中国の自動車大手、吉利汽車が間接的に出資している。

車載カメラや各種センサー、通信機能を備えたスマートカーは、利便性や安全性を高める一方、位置情報や周辺環境、利用者の行動など、多様なデータを収集する。各国では、こうしたデータの管理体制や遠隔操作のリスクを検証し、国家安全保障の観点から車両の利用範囲を見直す動きが広がっている。

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