ウクライナ軍 負傷兵を大型ドローンで搬送 世界初の救出作戦

2026/10/20 更新: 2026/10/20

ウクライナ軍と同国の防衛企業は19日、前線で負傷した兵士を大型ドローンで直接搬送する救出作戦に成功したとして、映像を公開した。ウクライナ側は、空中ドローンを使って前線陣地から負傷兵を直接退避させた世界初の事例としている。

負傷した兵士はウクライナ第30独立機械化旅団に所属し、氏名は公表されていない。約500日にわたり、死と隣り合わせの前線陣地を守り続けてきた。戦友らはそれまで、ドローンを使って食料や水、弾薬、医薬品を届けていた。

その後、兵士が重傷を負ったが、周辺ではロシア軍のドローンが活発に飛行し、地上には地雷が敷設されていた。このため、兵士が徒歩で救出に向かったり、無人地上車両で搬送したりする方法は危険が大きく、実施が困難だった。

従来の手段では救出が難しい中、部隊の専門家は前例のない方法として、大型ドローンで負傷兵を直接搬送する作戦に踏み切った。

大型ドローンで負傷兵を14.5キロ以上搬送

ビジネス・インサイダーによると、作戦にはウクライナ第92独立強襲旅団、第30独立機械化旅団、第10軍団、ドローンメーカーのグルズフ・ディフェンスが参加した。ドローンの操縦は第30旅団が担当した。

使用したのは、6基のモーターを備えた大型ドローン、ヘビーショット・アユダグ6である。もともとは爆撃用として開発された機体で、名称は6基のモーターと、クリミア半島グルズフ近郊にあるアユダグ山に由来する。

機体重量は約98キロで、70〜90キロの荷物を運べる。大きさは負傷兵の約2倍で、航続距離は最大25キロ、運用高度は150〜300メートルとされる。

救助チームはまず、カラビナ付きの専用装備を負傷兵のもとへ投下した。その後、ウインチを取り付けた大型ドローンを送り込み、離れた場所にいる戦友の指示を受けながら、兵士自身が搬送装置に体を固定した。

作戦全体は約75分に及び、ドローンの総飛行距離は62キロに達した。このうち、負傷兵を実際に吊り下げて搬送した危険区域の距離は14.5キロを超えたという。

専門家らは事前にドローンを改修して試験を重ね、人を吊り下げた際に機体が姿勢を崩したり、負傷兵が大きく揺れたりしないよう調整した。作戦中は周辺空域を厳重に監視し、電子戦による防護も行った。

「負傷兵搬送が新たな段階に」 一方で危険性も

米NBCが第92独立強襲旅団の声明として伝えたところによると、同旅団は「今回の任務は、ウクライナ軍と国内メーカーが協力し、世界の戦い方に新たな流れを生み出していることを改めて示した」としている。

救出された兵士は現在、治療とリハビリを受けており、命に別条はない。

作戦準備に携わった第92旅団のプログラマーで、コールサイン「ナパーム(Napalm)」の兵士は、迎えに来た機体を目にしながらも救出作戦を受け入れた負傷兵を英雄とたたえた。

第30旅団でドローンを操縦したコールサイン「チョルヌイ(Chornyi)」の兵士も、作戦の成功に安堵を示した。

ウクライナ陸軍は、ドローン部隊が「つい最近までSFだと思われていた」任務を実行していると強調した。

ナパームは、今回の作戦について「負傷兵の搬送が新たな段階に入ったことを示している」と説明。今後、同様の任務を継続的に実施できるよう、体系的な準備を進める必要があるとの考えを示した。

一方、キーウ・インディペンデントによると、グルズフ・ディフェンスの共同創業者パブロ・フェルドブリウム氏は、空中ドローンによる負傷兵の搬送は「ほかに方法がない場合の最後の手段」だと強調し、通常の手段とすべきではないと指摘した。

米調査機関CNAのドローン専門家、サミュエル・ベンデット氏も、大型で低速のドローンによる搬送には「明らかな危険」があると指摘している。

ロシア軍はこうした大型ドローンを狙うため、多くの戦力を投入しており、精鋭ドローン部隊ルビコンも重型機の撃墜を重視しているという。

地上ロボットによる負傷兵搬送も急増

ウクライナ国防省によると、地上ロボットによる負傷兵の搬送や物資輸送任務は、2026年初めから3倍以上に増えた。1月には約7500回だったが、8月には2万5千回を超えたという。ウクライナ企業SkyFallなども、負傷兵搬送を目的とした大型の6ローター式ドローンの開発を進めている。

さらにウクライナ政府は、ドローンを医療分野の輸送に活用する実証プロジェクトを承認した。コレツキー首相によると、病院間で医薬品や血液検体、移植用臓器などを迅速に運ぶ計画である。

李言
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