地球温暖化に伴う海氷の融解や新たな航路の開拓を背景に、北極圏をめぐる大国間の競争が激しさを増している。欧州連合(EU)は20日、北極圏の安全保障強化を柱とする新たな北極戦略を発表した。
ロシアの軍事活動の活発化を警戒し、海洋監視や重要インフラの保護、北大西洋条約機構(NATO)との連携強化などを進める方針だ。
欧州委員会のフォンデアライエン委員長は、北極圏について「地政学的なプレートが激しく衝突する地域の一つ」と指摘した。
EUが戦略の見直しを急ぐ背景には、ロシアによる北極圏での軍事態勢の強化がある。EU当局者によると、ロシアは旧ソ連時代の軍事基地の再稼働や近代化を進め、北極圏のコラ半島には核兵器を多数配備しているという。また、同地域をミサイル実験の場として活用しているとEU側はみている。
さらに、ロシアがバルト艦隊と北方艦隊を統合したことも、EUの警戒を強める要因となっている。EU高官は、ロシアがバルト海と北極圏を一体的な安全保障上の地域として捉えているとの見方を示し、欧州側も両地域を包括的に捉えた対策を講じる必要性を強調した。
新戦略では、主に四つの対策を打ち出した。
第一に、海上安全保障に関する情報共有体制の構築だ。海底から宇宙まで幅広い領域を対象とする監視ネットワークを整備し、北大西洋や北極海で活動する船舶の監視を強化する。ロシアの制裁回避を支援するとされる「影の船団」への対応も含まれる。
第二に、海底ケーブルなどの重要インフラの保護を目的とした「北極海底ケーブル・クラブ」を設立する。損傷や破壊の監視に加え、被害が発生した際の迅速な復旧体制の整備を目指す。
第三に、衛星観測網と砕氷船隊を強化する。地球観測プログラム「コペルニクス」の活用を拡大するとともに、加盟国による砕氷船の追加調達を支援し、北極圏での監視・巡回能力を高める。
第四に、NATOや同盟国との連携を深め、欧州北部を中心とする防衛体制の強化を図る。
一方、ロシア側はEUの動きをけん制し、北極圏を軍事化しているのはNATO側だと非難している。ラブロフ外相は、ロシアの北極圏政策について、平和と安定の確保、国家安全保障の維持が目的だと主張した。
北極圏は、米国、ロシア、中国、欧州などが安全保障や資源開発、海上交通の観点から関心を寄せる地域となっている。気候変動による環境の変化が国際的な競争にも影響を及ぼすなか、EUの新戦略は、北極圏を含む欧州北部の安全保障を強化する取り組みの一環と位置付けられる。
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