【独自】中共の海外監視リスト流出 1万人超を追跡 越境弾圧の実態浮かぶ

2026/10/21 更新: 2026/10/21

10月4日、米ロサンゼルス国際空港で、中国行きの便に搭乗しようとしていた女性が、搭乗直前にFBIの捜査官数人に逮捕された。

翌5日、女性は手錠と足かせをつけた姿で連邦裁判所に出廷した。中国共産党(中共)の代理人として活動し、米国内で台湾の頼清徳総統の長男を監視した疑いが持たれている。

同日、米司法省は40人の米国籍剥奪を求める訴訟を起こしたと発表した。この中には、中共のために米国内で法輪功に関する情報を収集していたとして有罪となった男性も含まれている。

米国の中国系住民社会に関わるこの2つの事件には、中共当局による海外での情報収集や監視活動という共通点がある。その背後には、海外に住む人々を監視し、圧力をかける仕組みが存在する。こうした活動は越境弾圧と呼ばれ、自由主義諸国で問題視されている。

大紀元が独自に入手した「涉政落查人員(政治関連人物の身元・所在調査)データベース」は、こうした活動の実態を探る手がかりとなる。

中共当局のブラックリスト 対象者は1万人以上

この政治関連人物の身元・所在調査データベースは、中共の政法機関が作成したものだ。

「涉政」と「落查」は、いずれも中共の政法機関が公に使用している用語だ。「涉政」は当局が政治に関連すると判断した人物や活動を指し、「落查」は対象者の身元や所在を突き止めるための調査を意味する。つまり、中共が政治的に問題視した人物を調査し、氏名や住所などの個人情報を特定する仕組みだ。その後、関係機関による取り締まりや迫害につながる恐れがある。

このデータベースには2万4170件の記録が登録されている。同姓同名などによる重複を除くと、実際の対象者は1万人以上に上る。

調査対象となっているのは、Xやフェイスブックなどの海外SNS、大紀元、新唐人、文学城といった中国語メディアや情報サイトで、中共当局が監視するアカウントだ。

しかし、当局が調べているのは、ネット上のアカウント名だけではない。投稿者本人の身分証情報、住所、勤務先、さらには家族に関する情報まで追跡している。

記録のうち約2万2500件(93%)には、中国本土の地理情報が明記されていた。

中国国内の居住地が記録されている約1万500人のうち、半数近い4783人については、自宅などを直接訪問できる程度まで住所が特定されていた。

ただし、中国国内の住所が記録されているからといって、対象者が現在も国内に住んでいるとは限らない。出国前の住所や、中国に残る家族の住所である場合も考えられる。

では、どのような人物がブラックリストに載っているのか。

対象者には、民主化運動家の魏京生氏、陳光誠氏、盛雪氏のほか、法輪功などの信仰団体、大紀元や新唐人の関係者、中国の伝統文化の復興を目指す神韻芸術団のメンバーも含まれている。

さらに、共産主義を支持する左派の学生運動家や労働運動関係者まで調査対象となっていた。

対象者の政治的立場はさまざまで、中には思想的に対立する人々も含まれている。

このことから、監視対象は反共産党の活動家に限らず、政治的立場を問わず、中共当局が脅威とみなした人物にまで及んでいる実態がうかがえる。

大紀元は、データベース全体の正確性を独自に検証できていない。ただし、記者が一部の著名人に関する情報を照合したところ、実際の情報とおおむね一致していることを確認した。

海外SNSから身元や住所を特定 中共の監視手法

では、中共は海外のSNSアカウントや投稿内容から、どのようにして利用者の氏名や自宅住所を特定しているのか。

中国のネット上には「ネット回線をたどって本人を見つけ出す」という表現があるが、実際にそのようなことが行われているのだろうか。

今回のデータベースには、具体的な調査手法は記されていない。しかし、米国政府が公表した事件から、その手口の一端をうかがい知ることができる。

その例が、冒頭で紹介した張婉瑩被告と、米司法省が米国籍の剥奪を求めている李平だ。

中国では、政法機関が「天網」や「金盾」と呼ばれる監視システムを活用し、対象者の身元や所在を特定している。

一方、海外では、ハッキングなどの手段のほか、中共の指示で活動する工作員や情報提供者が、対象者の情報収集に当たっているとされる。

米検察当局によると、張婉瑩被告は2025年9月、中共国家安全部の指示を受け、別の人物とともにワシントン州シアトルを訪れた。台湾の頼清徳総統の長男、頼廷与氏の自宅周辺で約6時間にわたり監視を行い、写真や動画を撮影して、その映像を中共国家安全部の担当者に送信した疑いが持たれている。

張被告の有罪は確定していない。米検察当局は、張被告が出所不明の多額の資産を保有していると指摘し、「敵対的な外国勢力の秘密工作員」として活動していたと主張している。

また、米CBSニュースは裁判資料を調べた結果、張被告と、国際的な詐欺組織「太子グループ」の重要人物とされる陳星(チェン・ソクリー)との間に接点があったと報じた。

米司法省が公開した機密解除文書によると、太子グループなどが運営する国際的な詐欺拠点の背後には中共高官がおり、国家安全部や公安部の関係者が直接関与していたという。

今回入手したデータベースには、中共が海外でどのように情報収集を行っているか、具体的な手法までは記されていない。

特定された後は?

しかし、このデータベースは、海外SNSのアカウントと中国国内の個人情報を結びつけ、対象者の身元や所在を特定する一連の仕組みをデータで裏付けている。

「政治関連人物の身元・所在調査データベース」には、身元や所在を特定された後、対象者がどのような扱いを受けるのかは記録されていない。しかし、当事者の証言から、その後の実態が見えてくる。

カナダ在住の作家で民主化運動家の盛雪氏については、このデータベースに3件の記録があり、それぞれ「四川省」「甘粛省」「カナダ」という異なる地域に分類されていた。

盛氏は長年にわたり、さまざまな被害を受けてきた。

盛氏は以前、大紀元に対し、中共による迫害は、1996年と2008年の入国拒否や強制送還だけにとどまらないと語った。数十年にわたるネット上での攻撃、わいせつな偽画像の作成、殺人の疑いをかける虚偽の告発などもあった。

盛氏は、2021年に重い病気を患ったのも、長年にわたる執拗な攻撃が心身に深刻な影響を及ぼしたためだと語っている。

盛氏の名前を悪用する嫌がらせもあった。

盛氏によると、2025年4月以降、何者かが盛氏の名前とメールアドレスを使い、カナダ・バンクーバーで神韻公演が行われる劇場に脅迫メールを送った。さらに、台湾総統府、桃園空港、松山空港、警察署、台北101に対しても、盛氏になりすまして爆破予告を送りつけたという。

しかし、盛氏を最も苦しめたのは、家族を巻き込んだ嫌がらせだった。

盛氏によると、2013年から2017年にかけて、夫や妹、叔父、兄が、盛氏を攻撃するために作られたチャットグループに加えられた。

グループ内では毎日、数千字に及ぶ中傷文が投稿され、家族はグループから抜けられない状態にされていた。こうした状況が数年間続いたという。

盛氏が受けた嫌がらせは、国際的な作家団体「PENアメリカ」の記録にも残されている。

同団体は、盛氏を現在も嫌がらせを受け続けている事例として取り上げている。記録によると、盛氏は2019年に身元を悪用され、その後も殺害予告や性的な内容を含むメッセージ、ディープフェイク技術で作られたわいせつな偽画像が送りつけられている。

盛氏はさらに、長期間、自宅に住んでいた人物が、後になって中共の工作員だったと判明したこともあると語った。

記事冒頭で紹介した李平の事件も、中共当局による海外での情報収集活動が明らかになった事例だ。中共国家安全部の担当者は李平に直接指示を出し、反体制活動家や法輪功学習者に関する情報を収集させていた。

中共の越境弾圧に対抗 米加で法整備の動き

今回流出したデータベースは、海外のSNSアカウントから中国国内の個人情報を特定する仕組みを示している。中共当局による人権侵害を裏付ける資料であると同時に、自由主義諸国が越境弾圧への対策を検討する上での判断材料にもなる。

このデータベースから見えてくる情報収集の手法には、近年、欧米の司法当局が摘発した事件との共通点がある。

ニューヨークで盧建旺が関与した「違法警察拠点事件」や、ロンドンの香港経済貿易代表部関係者による「違法監視事件」は、いずれも中共当局が国内の治安維持体制を西側諸国にまで違法に拡大した事例といえる。こうした行為は、各国の主権を侵害するものだ。

欧米諸国も対抗措置に乗り出している。

2025年6月17日、カナダ・アルバータ州で開かれたG7首脳会議で、各国首脳は越境弾圧への対策を強化する共同声明を発表した。

声明では、越境弾圧を、外国政府やその代理人が国外で個人や集団に対して脅迫、嫌がらせ、危害、強要を行う行為と説明した。こうした行為は、被害者が暮らす国の主権を侵害し、基本的権利も損なうと指摘している。

2026年10月8日、カナダ下院は法案C-219を全会一致で可決し、上院に送付した。今後、上院で可決され、国王裁可を得れば正式に成立する。

法案C-219は、カナダの法律で初めて「越境弾圧」を明確に定義し、その行為を取り締まるための法的根拠を整備することを目的としている。

2026年10月初旬には、米司法省のトッド・ブランシュ氏が大紀元の単独インタビューに応じ、中共当局による越境弾圧への対処は、司法省の「最重要課題の一つ」だと強調した。

米議会でも法整備に向けた動きが進んでいる。

2026年7月中旬、米上院に「越境弾圧阻止法案」が正式に提出された。

同法案は、越境弾圧を、外国政府の代理人や代表者が米国内で他人に対して嫌がらせ、圧力、脅迫を行う行為と定義している。これには、暴力の行使や、殺害されると危惧する十分な理由を生じさせる行為も含まれる。

現在、米国には越境弾圧を独立した犯罪として処罰する法律がないため、FBIは張婉瑩被告、李平、盧建旺ら中共の代理人を逮捕する際、既存の連邦刑法を適用してきた。

「越境弾圧阻止法案」が成立すれば、米国の連邦法で初めて越境弾圧が犯罪として明確に定義され、独立した刑事罰が設けられる。最大10年の刑期加重や最高10万ドルの罰金を科す規定も盛り込まれている。

評論家の李錚鳴氏は、中共当局による越境弾圧の被害者は、今回のリストに載っている1万人余りにとどまらないと指摘する。

李氏自身はリストに載っていないが、コロナ流行期に中国の実態を明らかにする記事を書いたところ、中国国内に住む親族のもとに公安、検察、裁判所の関係者が繰り返し押しかけ、嫌がらせを行ったという。さらに、李氏に対し、海外で「勝手な発言」をしないよう警告し、親族は一時、強い不安にさいなまれた。

李氏は次のように語った。

「私たちはどこで暮らしていても、恐怖におびえずに生きる自由を望んでいる。しかし、今回のデータベースが示しているのは、中共がまるで疫病のように、私たちが海外に移り住んでも、恐怖を広げようとしているということだ」

さらに、「恐怖に打ち勝つ最善の方法は、逃げることではなく、恐怖を生み出す仕組みそのものをなくすことだ。法律の力で越境弾圧を断ち切る取り組みを支持する。中共に利用される工作員たちには、迫害への加担には重大な代償が伴うことを思い知らせなければならない」と訴えた。

冷鋒
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