中国軍部と不透明な関係を持つとされる中国通信機器大手「華為技術」だが、このほど、台湾の電信産業に浸透しているという実態が明らかにされた。台湾国内からは、通信情報が守れなくなり、国家安全の門戸が全開してしまう、と安全性が危惧されている。
華為技術は世界2位の通信機器メーカー。しかし株式情報は公開されていない。その運営は非常に不透明で、中国軍部との緊密な関係が指摘されている。
台湾政府は、中国の軍部あるいは軍事産業の企業について、台湾での投資を制限している。華為技術は昨年4月、台湾政府に子会社の設立を申請したが、馬英九政権は米国情報機関からの「強い関心」を受け、申請を許可しなかった。
台湾での直接投資ができなくても、華為技術は「迂回戦術」ですでに相当の市場を確保している。その業務は台湾の代理会社「訊崴技術公司」を介して展開しているようだ。
台湾メディア「新新聞週刊」の3月28日の報道によると、同社は、台湾携帯電話サービス大手の遠伝電信から、10億5900万台湾ドル(約30億円)のワイヤレス ネットワークと基地局設備の発注を受けた。また同じく台湾携帯電話サービス大手の亜太電信からは、第3.5世代移動通信システムのネットワーク、およびその設備の200億台湾ドル(約560億円)の発注を受けた。そのほか、台湾で販売されている3G無線LANカードはほとんど華為技術の製品である。(台湾大手携帯電話事業者の)中華電信の自社ブランドの携帯電話や、インターネット接続業者の亜太網路の商品もみな、華為技術が受託製造している。
同紙は、華為技術は台湾国内の設備と基地局の情報の遠隔操作することができる、とも伝えている。
また、「台湾の軍事通信および市民のプライバシー情報が漏えいする恐れがある。今後、台湾で同社の第4世代移動通信の技術と規格基準が取り入れられれば、通信の安全はまったく管理できなくなり、まるで国家安全の門戸を全開したのと同然だ」と同紙は警鐘を鳴らしている。
与党・国民党内部のある重鎮は、華為技術のため積極的な遊説攻勢を展開しており、同社は台湾子会社の設立を楽観視している。華為技術の台湾担当者は業界関係者に対して「上半期が実現できなくても、下半期は絶対に成功する」と話しているという。
一方、去年10月に米国CIAが公開した調査報告書によると、同社は過去3年間、中国政府から約2.3億ドルの資金援助を受けた。また中国政府の他、アフリカや中央アジア、南米にも、盗聴とGPSシステムの構築に技術協力している。アフガンニスタンではタリバン政権のため電話通信システムを、イランでは政府の国民監視のためGPSシステムを設置した。
これらの状況により、同社の進出を拒む国は少なくない。米国政府は何度も同社による米国ハイテク企業の買収を中止させた。英国政府は同社と英国電信の事業提携の案を却下した。インドの国営電信会社BSNLは安全上の理由で、同社の入札を何度も拒否した。豪州政府は今年3月下旬、ブロードバンド建設の大型国家プロジェクトへの同社の入札を禁止した。
華為技術は日本にもすでに進出しており、事業を拡大し続けている。現在ソフトバンクモバイルや、NTTドコモ、KDDI、イー・アクセスなどに携帯電話の基地局や端末設備などを納入している。
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