世界が注目する米国大統領選挙の投票日まで残り48時間だ。民主党候補のヒラリー・クリントン氏と共和党候補のドナルド・トランプ氏への国民支持率が拮抗している中、メキシコ、中国、日本、欧州連合(EU)などの各国政府はトランプ氏の当選に不安と警戒を増している。6日中央社が報じた。
「ハリケーン」並みの衝撃と伝えたメキシコ
英紙「フィナンシャルタイムズ」によると、メキシコ中央銀行のアグスティン・カルステン総裁はトランプ氏の当選による自国経済への衝撃を「ハリケーンだ」と喩えた。
米国と隣接するメキシコの輸出量の8割以上が米国向けだ。トランプ氏は同経済政策において、北米自由貿易協定(NAFTA)からの離脱、メキシコで製造し米国で販売する製品に対して35%の輸出関税を課するなどとメキシコに厳しい姿勢を示している。また、不法移民対策でメキシコとの国境沿いに壁を築き、その工費をメキシコ側に負担させるとしている。
経済への打撃でメキシコの通貨であるペソの急落も予想されている。
不安半分と喜び半分 中国
中国政府は、クリントン氏は手強い政治家と認識しているが、いっぽうでトランプ氏の突拍子もない言動に見当をつけられず不安を感じているようだ。
トランプ氏は、韓国と日本での駐在米軍規模を縮小し、または完全に撤退させると発言したことがある。これが実現されれば、アジア太平洋地域で海洋進出を狙う中国政府にとって、地政学的に大きなプラスになる。経済政策では、トランプ氏は中国製品に45%の輸出関税を課し、「為替操作国」への認定を示している。トランプ氏の当選に関して、中国政府は不安半分と喜び半分と複雑な心理になっている。
外交、軍事、経済の大幅見直しか 日本
日本政府は、クリントン氏が国務長官在任中は日米関係は冷ややかだったが、同氏の当選でオバマ政権の政策が引き継がれ、日米の同盟関係には大きな変化が生じないと認識している。しかし環太平洋経済連携協定(TPP)において、クリントン氏がトランプ氏と同様に反対意向を示していることに警戒している。
安部政権はTPPを通して、関税撤廃で輸出を拡大し、アベノミクスを成功させる狙いがある。米議会では、オバマ大統領が1月に退任するまでTPPの承認される可能性がある。これの後押しとして、自民党など与党は8日の衆議院本会議で、TPP承認案と関連法案を採択し、参院に送る考えだったが、野党の激しい反発により、見送られた。
一方、トランプ氏は日本に対して駐在米軍の負担を求めるほか、円安で日米貿易で米国側で大きな損失を被ったと批判した。トランプ氏が当選すれば、日本政府は日米外交、軍事、経済、貿易などの政策を大幅な見直しと転換を迫られる。
安全保障に恐れ EUとNATO
EUと北大西洋条約機構(NATO)もトランプ氏の当選を不安視している。NATOは、トランプ氏が第二次世界大戦以降の米国の欧州大陸に対する安全保障規則を、根本的に書き直すことを恐れている。トランプ氏は他の加盟国の軍事費負担増加を求めるほか、今年7月に米紙「ニューヨーク・タイムズ紙」の取材に対して、NATO加盟国であるバルド諸国がもしロシアから侵攻された場合、「加盟国がその義務を果たしているかを検討してから、米国が防衛するかどうかを決める」と話した。北大西洋条約第5条では、加盟国への攻撃は、全加盟国への攻撃とみなすと明記し、共同防衛を実施する。
EUは親ロシアのトランプ氏を警戒している。トランプ大統領が誕生すれば、EUが導入しているウクライナ情勢をめぐって、ロシアへの経済制裁が解除されるとみられる。また、現在EUと米国が交渉している両地域の自由貿易協定「環太西洋貿易投資連携協定(TTIP)」の締結が失敗に終わることが予測される。
(翻訳編集・張哲)
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。