中国共産党中央政治局は9月29日、孫政才重慶市前党委書記に対して、党籍除名と公職追放という最も厳しい処分を下した。当局はこの頃、孫氏をすでに失脚した周永康、薄熙来などの「大トラ」と並べて批判キャンペーンを展開し、孫氏の「罪深さ」を印象付けた。これについて、在米中国政治評論家の陳破空氏は、孫氏が「クーデター関与が原因で失脚した可能性が高い」と分析する。
新華社通信29日の記事は、孫氏に対して「党の政治規律を厳重に踏みにじった」「理想や信念のかけらさえない」「組織の機密情報の漏えい」「怠惰で政治成果なし」「生活の堕落」などの「罪名」を付け、猛烈に批判した。3時間後に新華社は修正記事を掲載し、一部の文言をトーンダウンさせた。とはいえ、当局の怒りが垣間見えたのは確かだ。
さらに、最近北京展覧館で開催中の「習氏国家主席就任5年間業績展」では、孫政才氏を「政治問題と経済問題を織り交ぜた腐敗分子」として、その写真を周永康、薄熙来、郭伯雄、徐才厚、令計画など失脚した共産党高官「大トラ」の写真と並べて、彼らと同様に罪深いと言わんばかりだった。
孫氏がここまで批判を浴びることについて、陳氏は「孫氏は反習近平勢力、リーダーとされ、何かしらのクーデターを企てた、または参加した」と、9月30日にアメリカで行われたシンポジウムで分析した。江派の周永康、薄熙来らは、習近平氏を主席の座から引き摺り下ろすため、クーデターを謀ったとの情報があり、「新四人組」とも呼ばれている。
孫氏の失脚を発表後、習近平氏が進行役を務めた党指導部会議では、出席した幹部は事前に「聞くだけで、会議内容の記録は厳禁」と要求された。この会議は、7人の政治局常務委員、全国人民代表大会幹部、各省高官、軍幹部など党、政府、軍の上層部が総揃いした「高規格」会議だった。
この会議を報道したテレビの画面には、着席した幹部の前のテーブルに何も置いてなかった。陳氏はこれが「非常にまれ」と指摘した。
習近平当局が今月18日に開催予定の第19回中国共産党全国代表大会(19大)に関する情報の漏えいに強く警戒しており、党内部の権力闘争の熾烈さを物語っている、と陳破空氏が分析する。
陳破空氏は、今回の会議の様子が、1971年に林彪・人民解放軍元帥が死亡した直後の党内会議と非常に似ていると指摘した。
中国文化大革命の真っ只中の1971年、ソ連に亡命しようとした林氏を載せた飛行機がモンゴルの上空で墜落したのを受け、党指導部は党内部に林氏の死亡を伝える会議を開いた。その時も、同様に「聞くだけで、会議内容の記録は厳禁」とした。
毛沢東の後継者と指名された林彪氏は、毛への暗殺を企てるが失敗したため、ソ連に亡命したとされる。しかし、真相はいまだに不明のままだ。
一部の海外メディアの報道によると、孫政才氏には複数の愛人がいて、愛人らとの間に隠し子を設けた。孫氏は、習近平氏の目玉政策である「一帯一路」経済圏構想プロジェクト資金の約10億元(約170億円)を着服し、香港にいる愛人らに送金したという。「一帯一路」資金の着服で、習氏の怒りを買ったとの情報もある。
(翻訳編集・張哲)
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