[東京 8日 ロイター] – 航空自衛隊の「F2」戦闘機の後継を巡り、日本政府内で「F35」など外国の既存機を土台に共同開発する案が浮上している。国内開発や完成機輸入と比較・検討した上で調達方針を決定するが、関係者によると、今年末までに策定する中期防衛力整備計画に間に合わず、具体的な決断は先送りする公算だという。
日本の防衛省は米国と欧州の企業に対し、3月に入ってから情報提供の呼びかけを行った。兵器開発に必要な「情報要求」(RFI)と呼ばれる手続きで、日本はF2の後継機を巡り、これまでに国内外の企業に2回実施している。
今回のRFIの狙いは、外国企業から共同開発に向けた具体的な提案を受けること。日米英の複数の関係者によると、過去2回は日本側の要求があいまいだったため取得できた情報も抽象的だったが、今回はより具体的な戦闘機像を各企業に提示した。
これとは別に米英に対しては、両国政府にも文書を送付。さらに防衛省関係者が両政府に出向き、RFIの内容を説明したり、情報提供への協力を要請した。日本企業へのRFIは、すでに十分な情報を得られているとして今回見送った。
「既存機をベースに具体的にこうやりましょう、という回答が来ると予想している」と、関係者の1人は言う。米国ならロッキード・マーチンのステルス機F35、英国ならBAEシステムズの「ユーロファイター」をベースにするのが有力だ。
米国では「F22」、英国ではユーロファイターの後継機を巡る議論が非公式に始まっている。
防衛省は2030年ごろから退役が始まるF2の後継機について、今夏までに国産、国際共同開発、完成機輸入の中から決めるとしていた。国産は開発費用が膨らむ恐れがある一方、完成機輸入は事実上F35以外に選択肢がない。
防衛省は「F15」の一部もF35に置き換えることを検討しており、仮にF35に不具合が発生すれば空自の戦闘機の多くが飛行停止になる危険性がある。
既存機を土台に共同開発するのが「リスクは最も低い」と、関係者の1人は話す。
しかし、日本には30年前に米国とF2を共同開発したときの苦い経験がある。当初は国内開発を模索したが、米国の「F16」を土台に日米で開発することが決まり、仕事量の4割を米国に保証することとなった。米国は戦闘能力を左右する基本ソフトウエア(ソースコード)も日本に供与しなかった。
「既存機を使った共同開発に嫌な記憶があるのも確かだ」と、先の関係者は語る。とりわけF35は機密性が高く、日本がどこまで独自の戦闘機に仕立てることができるか未知数だという。
防衛省はRFIの締め切りを今夏に設定した。そこから情報を分析し、他の選択肢と比較する。中期防に具体的な計画を盛り込むのであれば、共同開発国とすぐに協議を始める必要があると、関係者の1人は言う。「中期防にはおそらく間に合わない」と、別の関係者は話す。
(久保信博、ティム・ケリー 編集:田巻一彦)
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