英国南西部の都市を拠点とする倫理団体は、中国では無実の人から強制摘出した臓器が臓器移植用に利用されているとの国際的な懸念から、広州との姉妹都市の解消を求めている。
10月16日、英国議会では中国臓器移植問題に関するラウンドテーブルが開かれた。出席した「ブリストル臓器強制摘出に反対する会(BAFOH)」共同代表ベッキー・ジェイムス氏によると、姉妹都市である広州には「大規模な強制臓器収穫が行われているという圧倒的な証拠」があると主張した。さらに、広州には世界最大の移植病院があるという。
BAFOHは2016年に結成された倫理団体。2017年1月に、中国の臓器移植は産業化されており、患者の需要に応じて収容者の臓器が摘出されているとの疑惑から、姉妹都市解消を訴えるキャンペーンを開始した。
2018年9月、BAFOHは市に対して解消を求める請願書を提出した。この申し入れについて、ブリストルのマービン・リーズ市長は最近、広州との姉妹都市契約を解消する予定はなく「人権問題はすべて中国政府と協力している」と述べた。
中国臓器移植問題を追う組織「追査国際」の汪志遠代表の調査によると、中国の年間臓器移植件数は推計10万件以上。いっぽう、中国衛生部は毎年の移植件数は1万5千件で、ドナーは死刑囚ではなくすべて「自然死」による人物からと説明している。衛生部は2015年、死刑囚の臓器を移植手術のための臓器に使用しないと明言した。
BAFOHは人権団体の推計を引用して、多数の移植を賄える臓器の出所は、思想や民族性のために拘束された無実の人々「良心の囚人」である法輪功学習者、地下キリスト教会信者、ウイグル族、チベット族から摘出されたものと考えられると述べた。
BAFOHジェームス氏は、広州から、人道犯罪が疑われる臓器移植産業で得た資金を受けているとして「共謀のレベルだ」と強く批判した。「ブリストルで複数の中国資本による再開発プロジェクトが進んでいる」と付け加えた。
現地メディア、ブリストル・ポストの取材に応じたBAFOH共同代表アレックス・ジョセフ氏は、中国臓器移植について「もっとも監視するべき問題だ」として、英国政府と外務省の中国政府に対する働きかけを求めた。また、姉妹都市について「広州とは文化面、投資や貿易といった経済面でも関係が構築されるだろう。しかし、私たちは(姉妹都市契約が)どんな影響と効果をもたらすものか、よく考えなければならない」と述べた。
ジェームス氏は英政府の態度により、渡航移植に関する規制がまとまらないと分析する。2016年、英国外務省アラン・ダンカン副大臣は、臓器強制摘出の問題は「大変忌まわしい」と例えていたが、中国で非人道的な移植臓器の調達が計画的に行われているかどうかの有力な証拠がないとして、懐疑的な姿勢だ。
2015年、国連反拷問委員会は臓器強制摘出問題に触れている。「国連加盟国である中国は、法輪功学習者から臓器を摘出しているとの疑惑について(第三者機関による)独立調査を受け入れるべきである」とした。しかし、その後において包括的な調査は行われていない。
米議会の超党派からなる中国問題委員会(CECC)は2018年10月、中国人権報告書で、死刑囚の臓器を移植用臓器として利用しているとの疑惑を、米国政府の懸念事項として取り入れるよう提言した。
2008年、渡航移植を抑制し移植用臓器は国内で調達する努力を促す「イスタンブール宣言」が採択された。これを受けて世界保健機構(WHO)は2010年、臓器移植にかかる国際基準の明確な指針を発表した。移植臓器は臓器提供者(ドナー)からの同意が明示されること、ドナー制度には透明性があり、社会的に公開されたシステムであること。また、本人同意のない臓器を摘出することを違法とすることなどが盛り込まれた。
(編集・佐渡道世)
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