医師の論文が殺害過程を暴露 国際的な反発を招く

2025/03/25 更新: 2025/03/26

ドキュメンタリー映画『国家の臓器』が複数の国際賞を受賞し、中国共産党による強制的な臓器摘出問題への関心が再び高まっています。監督の章勇進氏と、「法輪功迫害追跡調査国際組織」の主席である汪志遠氏は、番組『健康1+1』の中で、中国共産党による臓器摘出が近年ますます横行していると指摘しました。汪志遠氏は、「悪魔のような集団が社会の中で活動している。彼らの標的は人間であり、社会全体が危険にさらされている」と語りました。

医学論文が殺害の過程を暴露

「法輪功迫害追跡調査国際組織(追査国際)」の報告によると、中国本土で発表された臓器移植に関する論文の中には、多数の「熱虚血時間ゼロ」の臓器が記載されていることが判明しました。「熱虚血時間ゼロ」とは、臓器摘出時に心拍があり、血流が維持されていることを意味します。2008年、中国・昆明市の延安病院の医師である呉剣らが発表した論文『2例の心肺同時移植におけるドナー心肺摘出と保護』は、2件の殺人事件を記録したものである可能性が指摘されています。

論文にはこのように記されています。「ドナーが手術室に入ると、通常の手術手順に従い麻酔と気管挿管を実施します。メチルプレドニゾロン(1g)を静脈注射し、ヘパリン(3mg/kg)を投与する。麻酔が効果を発揮した後、通常の消毒と準備を行い、正中切開を加え、速やかに胸部を切開する」

『2例の心肺同時移植におけるドナー心肺の摘出および保護』という論文のスクリーンショット(「追査国際」報告書『鉄証如山:第一部』より)

「追查国際」の分析:

⒈ ドナーは生きていた可能性が高い。もし死亡していたのであれば、麻酔をかける必要はない。

⒉ ドナーは意識があった可能性がある。医師は神経反射をもとに麻酔の効果を判断するため、「麻酔が効いた後に手術を開始した」と記されていることは、ドナーに感覚や神経反射があったことを示している。

⒊ ドナーは自発呼吸をしていた可能性が高い。手術室に入った後に気管挿管を行っているため、もし事前に呼吸が止まっていたならば、すでに挿管されていたはず。

「追査国際」の報告では、「彼らは殺害の過程を文章として記録し、それを国際的なネットワーク上に公開している。これは、彼らにとって殺害が日常的な行為となり、何の躊躇もなく行われていることを示している」と指摘されています。

また、ある研究では、中国本土で発表された2,838本の心肺移植に関する論文を分析した結果、そのうち71本の論文に記載されたドナーは、心肺摘出前に脳死ではなかった可能性が高いことが判明しました。この研究は2022年に『アメリカ移植ジャーナル』に掲載され、イスラエル・テルアビブ大学医学部シーバ医療センターの心臓移植科主任ヤコブ・ラヴィ(Jacob Lavee)氏と、オーストラリア国立大学の博士課程研究者マシュー・ロバートソン(Matthew P. Robertson)氏によって発表されました。

両氏によると、問題の論文では「まず脳死と診断し、その後に気管挿管を行う」と記載されています。しかし、脳死の診断には「無呼吸テスト」が必要であり、これは人工呼吸器を外して患者が自発呼吸できるかを確認するものです。つまり、脳死と診断された時点で患者はすでに人工呼吸器を装着しているはずであり、「脳死診断後に気管挿管を行う」という手順は矛盾しています。

さらに、一部の論文には、ドナーに静脈カテーテルを挿入したり、抗凝固剤であるヘパリンを筋肉注射したりしたと記載されています。本当に脳死した患者であれば、救命処置の過程ですでに静脈カテーテルが挿入されているはずです。このことから、これらの論文に記載されているドナーは脳死ではなく、さらには自力で動ける状態だった可能性もあると指摘されています。
 

公安局長が「脳死装置」を発明

前述の中国本土の論文では、ドナーが心肺を摘出される前の状況について記述されていませんでした。研究者らの分析によると、一つの可能性として、手術前に被害者の行動を不能にする「近距離で脳死を引き起こす装置」が使用されたと考えられています。その例として、元公安局長の王立軍が取得した特許「原発性脳幹衝撃装置」が挙げられます。

王立軍は、錦州市や重慶市の公安局長を務めていた際に、複数の「研究センター」を設立し、臓器移植に関する研究を行いました。彼は医学の専門知識を持たないにもかかわらず、脳死を引き起こす装置のほか、摘出された臓器を保護するための保存液の開発にも関与していました。

汪志遠氏によると、彼とそのチームの病院調査の結果、一部の病院では移植用の臓器が「脳死センター」から供給されていたことが判明しました。これは、生きた人間の脳幹を衝撃によって損傷させ、脳死状態にすることで、医師が生体から臓器を摘出する際の心理的負担を軽減しようとするものだと考えられています。

汪氏は強調します。中国本土では現在、脳死に関する法律が存在せず、行政機関が定めた脳死の診断基準もありません。そのため、「脳死」とされたドナーからの臓器摘出は、実際には違法であると指摘しています。
 

臓器提供データの捏造が暴露される

「追査国際」による10年以上の調査によると、中国共産党は「死刑囚の臓器」や「市民の自主的な提供」という名目で、法輪功学習者からの臓器強制摘出の事実を隠蔽してきました。しかし、汪志遠氏とそのチームの調査によれば、中国政府が2015年に「完全に市民の自主的な提供による臓器のみを使用する」と発表した後も、少なくとも3年間、中国紅十字会に登録された臓器提供者の数は極めて少なく、一部の地域では臓器提供の取り組みすら始まっていなかったことが判明しました。

2018年8月31日、「追査国際」が北京市海淀区紅十字会に電話で問い合わせたところ、当直の職員は「北京市の臓器提供事業はまだ準備段階であり、各区の紅十字会は宣伝活動を行っているだけで、実際の提供業務は行っていない」と回答しました。(録音書面記録あり)

国際社会からの臓器摘出に対する非難を受け、中国共産党は2013年に「中国人体臓器分配・共有コンピューターシステム(COTRS)」を導入し、臓器の強制的な割り当てを行うと発表しました。しかし、大紀元が入手した浙江省の内部監査報告によると、2015年から2018年の間に、多くの臓器がCOTRSシステムを通じて供給されたものではなかったことが明らかになりました。中国の病院における膨大な臓器移植件数を考慮すると、これは氷山の一角に過ぎません。

2017年6月10日、「追査国際」が電話調査を行った際、全国ネットワークを通じて臓器を取得しているかどうかを尋ねられると、山東省煙台市の毓璜頂(いくおうちょう)病院の臓器コーディネーターである王氏は「そんなネットワークじゃ何の問題も解決できない。全部デタラメだ!ただの形式に過ぎない」と率直に答えました。(録音書面記録あり)

また、統計学者のラヴィ氏らは、COTRSシステムのデータに不自然な点を発見しました。COTRSのデータは単純な二次関数とほぼ完全に一致しており、他国の臓器提供データでは見られない異常な傾向を示していました。さらに、データには多くの矛盾や異常があり、これらはシステム的な捏造や人為的な操作なしには説明がつかないと指摘されています。
 

国際学術誌が中国の論文を撤回

合法的な臓器提供の証拠を示せなかったため、中国本土の一部の臓器移植に関する論文が国際学術誌から撤回されました。2017年2月6日、科学誌『Science』のウェブサイトは、浙江大学第一附属病院の医師・鄭樹森氏が2016年10月に『International Liver』誌に発表した論文について、563件の肝移植手術に使用された臓器の合法的な提供元を証明できなかったため、論文が撤回されたと報じました。さらに、『International Liver』誌は鄭樹森氏の今後の投稿を永久に禁止しました。

同誌は2016年に掲載した学者からの書簡の中で、鄭樹森氏の研究が行われた期間における中国の臓器提供システムには合計2,326人のドナーしか登録されていなかったことを指摘しました。この中には、「自発的な提供」とされる死刑囚の臓器も含まれています。さらに、アメリカの同時期のデータによると、心停止後に提供された肝臓のうち、実際に移植に適用できるのは約30%に過ぎません。仮にこの病院の肝移植手術がすべて中国の自発的な提供システムによるものだったとすれば、それだけで全ドナーの約80%を占めることになり、極めて不自然な数字になります。

この書簡の筆頭執筆者である、オーストラリア・シドニーのマッコーリー大学の臨床倫理学教授ウェンディ・ロジャーズ(Wendy Rogers)氏は、2019年に科学誌『Nature』によって「世界のトップ10科学者」に選ばれました。彼女の研究チームは、中国の臓器移植医師が発表した論文を調査し、2019年2月に発表した報告で、400本以上の論文が囚人の臓器を使用していた可能性があると指摘しました。その後、少なくとも2つの学術誌が、これらの論文のうち20本以上を撤回しました。

2022年には、国際心肺移植学会(ISHLT)が声明を発表し、中国本土からの臓器移植に関する論文を全面的に拒否する方針を示しました。
 

各国が臓器摘出の共犯者の取り締まり強化へ

世界各国では、「渡航移植」に対する法的規制が進んでいます。中国共産党による強制的な臓器摘出が明るみに出た後、イスラエル、スペイン、台湾、韓国、カナダなどの国々が次々と法律を制定し、自国民が海外で出所不明の臓器を移植されることを防ぐ措置を講じました。さらに、欧州連合(EU)は2015年に「人体臓器取引防止条約」を可決し、EU加盟国および非加盟国の20カ国以上がこれに署名しました。

2023年11月28日、日本の東京地方裁判所は、海外での臓器移植を仲介した「難病患者支援会」の理事長・菊池仁達(Hiromichi Kikuchi)に対し、「臓器移植法」違反の罪で懲役8カ月、罰金100万円の判決を下しました。菊池被告は法廷で、日本人患者を海外の病院に紹介し、その多くが中国本土で移植手術を受けたことを認めました。

アメリカ議会でも、臓器摘出犯罪者への制裁を目的とした法案が進められています。2023年3月27日、アメリカ連邦下院は「2023年 強制的な臓器摘出防止法案」を可決しました。さらに、2024年6月25日には「法輪功保護法案」も下院を通過しました。これらの法案は現在、上院で審議中であり、最終的に上院で可決され、大統領が署名すれば正式な法律として成立する予定です。

 

(翻訳編集 華山律)

英文大紀元が提供する医療・健康情報番組「健康1+1」の司会者を務める。海外で高い評価を受ける中国の医療・健康情報プラットフォームであるこの番組では、コロナウイルスの最新情報、予防と治療、科学研究と政策、がんや慢性疾患、心身の健康、免疫力、健康保険など、幅広いテーマを取り上げている。
高颂源
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