中国の臓器移植では、手術までの待機時間が異常に短いため、不当な臓器供給とその背景にある人道犯罪が疑われる。台湾のある移植医は、担当患者が中国本土ではわずか2日の待機で肝臓移植が受けられ、病院から「もし適合しなければ、新しい肝臓に替えられる」と説明を受けたという。
大紀元に対して台湾新竹の医師が知り合いの医師から伝えられた話として語った。2015年初め、末期肝臓ガンを患ったある男性患者が肝臓移植を希望し、ドナーがすぐ見つかるとの理由で中国大陸での手術を医師に勧められた。男性患者は移植手術を斡旋するブローカーに血液などの情報を渡した。翌々日、「肝臓は手に入る」との通知を受けた。午前中に飛行機で本土に到着し病院へ、その日の午後には移植手術を受けた。
中国大陸の担当医師から、この肝臓のドナーは21歳の男性で、麻薬や感染症はなく、健康な人であることを保証するとの説明を受けた。
さらに、この担当移植医は「もし拒絶反応が出れば、ふたたび健康な肝臓に替えることができる」「ドナーは随時に見つかる」と説明したという。
移植手術を受けた患者には、免疫抑制剤の投与が必要となる。患者は、台湾での継続的な治療のために、大陸の病院での手術内容と検査結果も知りたいと申し出た。
しかし、担当医師はこれを拒否した。「もし生き続けたければ、あまり多くのことを聞くべきではない」と言われたという。
この話を受けて、米国登録医の徐建超医師は大紀元に対して、生きている人間の肝臓を摘出することは殺人行為であり、医師の道徳に反すると述べた。「人間には肝臓は1つしかない。肝臓を全部提供することは、提供者の死を意味する。随時に提供できるなど不可能なことで、おそらく強制的に誰かから摘出している」と述べた。
「非常に奇妙ではないか。なぜ若者が、見知らぬ人を助けるために、自身の肝臓をいつでも捧げるようにしているのか? 筋が通らないだろう」「その若者が肝臓の全部の摘出に同意したとしても、医師はこれに従うべきではない。これは殺人だから」
米国務省や人権団体、および独立調査団の調べでは、中国本土での移植の爆発的な成長と臓器の待機時間を極めて短くするには、「オンデマンドで摘出できる人体臓器バンク」があると指摘している。
中国衛生部があいまいにしている死刑囚の臓器利用でさえ、その執行数と数は合致しない。中国は死刑執行数を公表していないが、アムネスティ・インターナショナルによると、年間1万件ほどとされる。中国人体器官捐献与移植委員会の主任委員で、元衛生省次官の黄潔夫氏は、自由意志に基づいて臓器提供に同意するドナー数は2015年で2500人程度だと語った。官製メディアによると、2019年上半期に中国全土で行われた臓器提供は2757件で、前年同期比で9.5%増、提供臓器は7186個、前年同期比で3.6%増という。
カナダの人権弁護士デービッド・マタス氏、カナダ元アジア太平洋地域担当大臣デービッド・キルガ―氏、在英ジャーナリストのイーサン・ガットマン氏らの調査では、中国の年間移植件数は少なくとも6万~10万件と見積もっている。
米国トップ10の科学者に選出されたアーサー・カプラン氏(ニューヨーク大学ランゴーン医療センター医療倫理部門)は、2011年、「米国生命倫理学ジャーナル」で、中国の臓器移植の問題について論じた。同氏は論文で、中国大陸では、生きている人から臓器を需要に応じて摘出する「オンデマンド殺人」が普遍的に存在し、「臓器移植界で最もおぞましい罪」と形容した。
2018年7月、法輪功迫害に関する有志者団体・法輪功迫害追跡調査国際組織(WOPIFG、代表・汪志遠 ハーバード大学心血管疾患研究員)は、中国の臓器移植件数の急増と、全土で迫害政策により連行され失踪した大量の法輪功学習者の数の相関性から、中国の臓器強制摘出の犠牲者の多くは法輪功学習者と推測している。また、法輪功学習者は収容施設で、ほかの収容者が受けていないX線検査や血液検査、内臓検査を複数回受けている。釈放された複数の受刑者や法輪功学習者の家族が、法輪功の迫害情報サイト「明慧ネット」へ伝えている。
2019年6月、人道犯罪について第三者による調査と結果を示す「民衆法廷」の中国臓器収奪問題・最終裁定が6月17日、英ロンドンで開かれた。50人以上の証言と1年に渡る調査の結果、議長は、中国では移植手術の供給のために臓器収奪が行われているとの事実は「存在する」とし、主な犠牲者は法輪功学習者であると結論付けた。
(翻訳編集・佐渡道世)
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