中国共産党、チベットでも「再教育キャンプ」 工場労働や軍事訓練も強制

2020/09/23 更新: 2020/09/23

ワシントンのシンクタンク・ジェームズタウン財団(Jamestown Foundation)は、中国共産党はチベットでも、新疆ウイグル同様の強制職業訓練計画を行っているとする調査報告を発表した。

報告書の執筆者エイドリアン・ゼンツ(Adrian Zenz)氏は、「中国当局によるこれらの『職業訓練』という名の少数民族の同化推進政策が進めば、少数民族の言語、文化、宗教上の遺産の長期的な喪失につながる恐れがある」と指摘している。

中国国家統計局の2018年のデータによると、仏教徒が多数を占めるチベット自治区は人口の9割はチベット族。さらに、人口の約7割が農村部人口に区分され、大多数は自給自足の農業を営んでいる。

中国政府は貧困削減策で、農村部の貧困を2020年末までに撲滅する方針を打ち出している。農民に工場での労働を強要する「職業訓練計画」を行っているが、これは「貧困緩和策の一つ」と主張している。

中国公式データを引用して、ゼンツ氏は報告書を作成した。それによれば、2020年1~7月の間に、チベットの50万人以上の畜産業者や農家など地方部の労働者が「訓練」を受け、各地区には訓練人数のノルマが課されたという。ノルマを達成した企業には、最高で50万元(約770万円)のボーナスが支給される制度がある。また、畜産業者や農家は、家畜や農地を手放し、国営の大規模な協同組合に譲渡することが奨励されているという。  

同財団の研究者は、中国当局はチベット人に対して職業訓練のほかに、「軍事訓練」も行っており、これらの「訓練計画」は、「労働規律、中国語、労働倫理」を教え込むことを目的にし、チベット人に対するイデオロギーの教化と同化の一形態でもあると指摘した。

報告書によると、すでに5万人近くのチベット人がチベットの工業地域に移送され、3000人以上が中国の他の地域に送られたという。これらは新疆ウイグル自治区で行われている職業訓練計画に似ている。

ロイター通信が9月20日に発表した調査報告書によると、100以上の中国の公式メディアの報道やチベット政府の文書分析および2016~20年までの調達事例と比較した結果、中国当局はチベットから大量の農村労働力を他省へ送っている。チベット人は、中国の国内企業の労働力源となっているという。

チベット政府が発表した政策によると、チベット人は主に、繊維、建設、農業などの低賃金の仕事への従事に集中させているという。

チベット人に従軍を要求

ロイター通信は、チベット自治区と地方政府が2019年末~20年にかけて発表した政策文書を引用して、「職業訓練所」に移送されたチベット人は厳しい規律を守る訓練に加え、軍事訓練への参加や軍服の着用を義務付けるなどの軍事的な思想教育を受けなければならないと報じた。これらの教育は、いずれもチベット人を心身から共産党に服従させることを目的としているという。

チベットの人口のうち、どれほどの割合がそのような軍事訓練を受けたのかは明らかではない。 しかし、チベットの人口の約3分の1を占めるガリ地区(阿里地区)、シガツェ(日喀則)、シャンナン(山南)などの地域では、地方の政策文書に「軍事訓練の積極的な推進」が求められ、自治区の政策でもこの種の訓練方式が推進されている。

チベット地方では10年以上前から、小規模ではあるが、類似する軍事スタイルの訓練計画が存在してきた。しかし、2016年以降、こうした訓練施設の建設が激増した。最近の政府の政策文書によると。建設計画の予算は多くあてがうことが促されている。

ロイター通信によると、チベットの各地にある十数カ所の軍事訓練施設の衛星画像や文書によれば、一部の施設が既存の職業訓練所の近く、または内部に建設されていたことが判明した。

英国放送協会(BBC)も2019年7月、チベット亡命政府の首相ロブサン・センゲ(Lobsang Sangay)氏とのインタビューでも、同様の情報を確認している。

当時、センゲ氏は、チベットにはウイグルのイスラム教徒が拘束されている「新疆ウイグル再教育キャンプ」と同様のキャンプがあり、そこでチベット人が拘束されており、その規模は小さく、収容人数は不明だと述べた。

現在、新疆ウイグル自治区を統治する党委書記の陳全国氏がチベット自治区を治めていた期間中に、彼はチベットで同様の抑圧的政策を実行していたことが報告されている。

(大紀元日本語ウェブ)

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