[東京 8日 ロイター] – 16日に予定されている日米首脳会談の共同文書に、新疆ウイグル自治区や香港を念頭に中国の人権状況に関する懸念を明記する方向で調整が進んでいる。複数の関係筋が明らかにした。中国側が日本企業などに報復措置を講じる可能性が懸念されるものの、中国の人権状況に批判を強める欧米に平仄を合わせる格好だ。
米国は新疆ウイグルの少数民族をめぐる中国当局の扱いが人権侵害に当たるとして欧州やカナダとともに制裁を行っている。日本政府も同自治区の人権状況に「深刻な懸念」(加藤勝信官房長官)を示しつつ「人権問題を直接、明示的な理由として制裁を実施する規定はない」(同)として制裁には距離を置いてきた。実際には「経済的に関係の深い中国を刺激しないのが政府の従来方針だった」(外務省関係者)ためだ。
しかしある与党幹部は「米国側からみれば日本は拉致問題で協力を要請しながら、対中制裁に応じないというのは虫が良すぎるとの見方がある」と指摘。「文書での人権問題指摘は避けられない」(政府関係者)情勢だ。
その場合「中国が日本・日本企業に対して何らかの報復措置を打ち出す可能性があり、経済制裁を打ち出している欧米に対する中国の対応などを研究している」(同関係者)との声も聞かれる。
野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「ウイグルの人権問題は十分に事実が明らかになっていない面があり、日本として対中制裁は回避できる公算が大きい。一方、日本は米国に尖閣防衛など海洋軍事面で協力を仰いでおり、対中制裁で協力できない場合、共同文書での対中批判は避けられない」とみる。
その場合「中国側は対豪州で各種の輸入制限を課しており、日本からの輸入制限なども打ち出す可能性はある」とみている。
(竹本能文※)
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