カナダP4実験室の感染症学者が中国軍研究者と共同研究 元情報官「非常識」

2021/05/22 更新: 2021/05/22

カナダで唯一のバイオセーフティーレベル4実験室(P4実験室)を有する国立微生物学研究所NML)の感染症学者7人が、中国軍の研究者とエボラ出血熱やラッサ熱、リフトバレー熱などの感染症に関する共同実験を行い、2016~20年までに6本の研究論文を共同執筆していた。20日付のカナダ紙グローブ・アンド・メールが報じた。

それによると、中国人研究者の一人である閻飛虎(イェン・フェイフ)氏は、中国解放軍軍事医学研究院(以下、中国軍事医学研究院)に所属している。同研究院は、1951年に中国共産党の最高軍事医学研究機関として設立され、バイオテクノロジーのハイテク研究を進めている。

閻氏は、NMLに勤務していた時期があり、6本の研究論文のすべてに共著者として名を連ねている。そのうち2本の論文では、NMLと中国軍事医学研究院の両方のメンバーとして記載されている。

NMLと中国軍とのつながりは他にもある。NMLに勤務していた中国出身の科学者である邱香果氏と夫の成克定氏は、今年初めに解雇された。カナダ当局は調査中としているが、解雇の理由を明らかにしていない。

これまでの報道によると、邱氏は2019年3月、生きたエボラウイルスのサンプルを持ち、エア・カナダの一般旅客機に乗り北京に向かった。このウイルスは、最終的に武漢ウイルス研究所に送られたとみられる。

邱氏は、NML特殊病原体プログラムに所属し、ワクチン開発および抗ウイルス療法部門の責任者を務めていた。前述の6本の研究論文のうち5本に邱氏は共同執筆者として参加している。夫の成氏はNMLでエボラ出血熱の研究に携わっていた。

NMLを監督するカナダ公衆衛生庁(PHAC)のスポークスマン、エリック・モリセット(Eric Morrissette)氏は、邱氏が中国軍の研究者と協力をしていたことを認めた。

カナダ安全情報局(CSIS)の元司令官アンディ・エリス(Andy Ellis)氏は、公衆衛生庁が中国軍と協力する動きを「非常識」と非難し、中国軍が近年、近代化戦略の一環として科学者を積極的に採用し、医学研究に多額の投資を行っていると強調した。

米ジョージタウン大学の神経学・生化学科教授で、米海軍兵学校の生物兵器・バイオセキュリティ部門の上級研究員であるジェームズ・ジョルダーノ(James Giordano)氏は、中国で活動する学者が行った研究は、中国政府によって軍事・防衛目的で使用される可能性があると指摘した。

同氏によると、中国政府は新たな生物兵器を開発しようとしている。北京は特に、病原体を改変し、生物兵器禁止条約(BWC)の対象とならない新しい生物を作り出すことに興味を持っている。また、北京は国際的影響力を高めるために、感染症の治療法を他国に提供するなど、いわゆる「英雄的救助」を行うことにも関心があるという。

カナダ公衆衛生庁は、2019年7月5日に邱夫妻がNMLから解雇されて以来、武漢ウイルス研究所とのすべての共同プロジェクトが中断され、新たな共同プロジェクトは予定されていないことを明らかにした。

(翻訳編集・王君宜)