米国務省はこのほど、信仰の自由に関する国際報告書を発表した。日本に関する項目では、日本在住の法輪功学習者やウイグル人が、中国大使館から妨害や脅迫を受けていることが記録されていた。
アメリカ国務省の宗教・民主主義・労働局は5月12日、世界約190カ国における信仰と、関連する法律の実践等の状況をまとめた報告書を発表した。6月10日、駐日米国大使館が日本に関する項目の日本語版を発表した。
報告書の冒頭では、日本国憲法が信仰の自由を保障していることが強調された。そのうえで、日本の法輪功学習者は舞台公演の会場を借りる際に、中国大使館の「脅迫的戦術」に直面したと指摘した。2020年1月には、府中市で行われた舞台公演が中国大使館の妨害に遭い、日本の警察が妨害を阻止するという事件が発生した。
報告書はまた、日本の大手テレビ局の番組で放映された内容を引用した。それによると、中国の国家安全局員が中国国内に住む親戚を通して日本ウイグル協会の役員に接触し、他の会員の身元や協会の活動内容といった情報を要求した。
日本政府は憲法等の法律規定を実践し、法輪功学習者と自認する中国人には、在留を認める資格を付与していることも紹介されていた。また、ウイグル協会によれば、中国での民族的あるいは宗教的迫害を理由に2017年に難民申請した10人に対し、日本当局は難民として認定しなかったものの、他の在留資格を付与した。
法務省は、国連の難民の地位に関する条約とその議定書に基づき、宗教を理由に迫害のおそれがある4人の申請者を、2019年に難民として認定した。2018年の同理由での難民認定数は2名だった。さらに、2021年に法輪功学習者が難民認定されたことが、取材を通して明らかになった。
米大使館職員は、在日の宗教団体指導者や代表の対話や会合を通じて、各信仰組織の状況をヒアリングしている。
中国に関する報告
米国務省の報告にある中国に関する項目では、共産党体制のもと信仰の自由が極めて制限されていることが記されている。
報告書によれば、中華人民共和国は2019年から2024年にかけて、すべての宗教の教義と実践を中国共産党の指導方針に沿うようにする「中国化」キャンペーンを開始した。これにより、すべての宗教の聖職者は政治教化講習への参加が要求され、宗教行事に対する監視や、説教内容の事前承認制が取られている。また、イエスの物語などに含まれる宗教教義については、中国共産党への忠誠を強調するように改変されているという。
さらに、中国共産党は、「違法な宗教活動」を通報した市民に対して、報酬を与える制度を設けている。これにより、法輪功などの学習者はさらに抑圧されるようになった。
報告書は、今もなお信仰を持つ者に対する残忍な弾圧が行われていると指摘している。法輪功の情報サイト「明慧ネット」によると、警察は1年間に6600人以上の法輪功学習者を逮捕した。
中国共産党は、国家や党の利益を脅かすとみなした宗教信者の活動や個人の自由を制限している。当局は仏教、道教、イスラム教、プロテスタント、カトリックの5つの宗教を公認しているが、共産党組織である「愛国宗教協会」に登録しなければ礼拝などは許可されない。
さらに、登録・未登録を問わず、宗教上の理由で拷問、虐待、逮捕、拘留、懲役刑、中共思想教育、嫌がらせなどが行われ、身柄を拘束されて死亡した事例も報告されていると指摘した。
中国共産党体制下では、共産党員と人民解放軍は無神論であることが要求され、18歳以下の未成年が信仰団体から教育を受けることが禁じられている。
(佐渡道世)
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