米海南島事件 中航空機の空中衝突から20年

2021/07/05 更新: 2021/07/05

2021年7月3日は、国際空域で中国人民解放軍(PLA)戦闘機と空中衝突した米国海軍の電子偵察機が中国領土の島に不時着した「海南島事件」後、同偵察機の解体機体が米国に返還された日からちょうど20年目に当たる。

2001年4月1日に発生した空中衝突の後に写真の航空機に似た動きの遅いターボプロップエンジンの電子偵察機である米国海軍のEP-3アリエスは中国の海南島に不時着した。CNNニュースによると、米軍機の搭乗員24人の中に負傷者はいなかったものの、全員が中国人民解放軍によって11日間身柄を拘束された。

米国機への迎撃に失敗した中国人民解放軍のJ-8II戦闘機のパイロットは死亡したと伝えられている。米国空軍協会専門誌「エアフォース・マガジン(Air Force Magazine)」によると、南シナ海に墜落した中国機のパイロットは行方不明となり今日までその遺体は発見されていない。

当時の米国当局の発表では、米軍はこの類の偵察飛行を日常的に行っていたことから中国当局は当日のEP-3アリエスの飛行を脅威と捉えるべきではなかった。しかも、衝突が発生したのは米軍機が国際空域で自動操縦により一定速度で真っ直ぐに巡行飛行している状態のときであった。

CNNニュースの報道では、米国側が中国人パイロットの死について哀悼の意を表明し、機体損傷のために米軍機側の遭難信号が受信されているかどうかが「口頭により確認」できなかったことから不時着による中国領土への侵入は不可抗力であると説明した後、中国側が米軍乗員を釈放した。

米中両国共に同事件決着は自国側の外交政策の勝利であると主張したが衝突の詳細については意見が一致していない。

CNNニュースによると、衝突から数か月後の2001年7月3日に中国人民解放軍は米軍航空機を解体して機体調査を行った後、解体されたままの機体を米国に返還した。米国当局の見解では、中国人民解放軍が衝突により損傷した米国機の修理を許可していれば同航空機は中国から飛行して帰還できたと考えられている。

インド太平洋地域、特に南シナ海における海上活動の増加に伴い某国海軍が他国海軍や他国部隊と遭遇する可能性だけでなく、偶発的な交戦リスクも高まっている現状の中で良好な通信が誤解防止の鍵であるという教訓として同事件を捉えて活かす必要がある。

また、同事件から20周年を迎えるにあたり中国共産党が他国との良好な対話に対する抵抗意識を強めていることへの懸念も掻き立てられる。

5月下旬のフィナンシャル・タイムズ紙による報道では、2021年3月以降、ロイド・オースティン(Lloyd Austin)米国防長官は少なくとも3回にわたり中国最高軍事指導機関の幹部との対話を打診しているが中国共産党はこれを拒否している。複数の関係者の話として伝えられたところでは、オースティン国防長官は中国共産党中央軍事委員会副主席である許其亮(Xu Qiliang)大将と同地域の緊張の高まりについて協議することを希望している。

米国の某防衛当局者はフィナンシャル・タイムズ紙に対して「中国側からの反応はない」と話している。 同紙によると、2021年1月以降、米国統合参謀本部議長のマーク・ ミリー(Mark Milley)大将と中国側の対話も実現していない。

米国の某防衛当局者はロイター通信に対し、「軍事関係の緊張が高まっていることに疑問の余地はない。中国から反応のない理由が両国間の緊張状態によるものか、中国の非協力的な性質によるものかを判断するのは難しい」とし、「しかし、米国側は明らかに対話を望んでいる。中国と適切な水準で対話できるという状態を確立しておきたい」と話している。

米国との対話に対する中国人民解放軍の意欲は確実に低下しており、1998年に米中間で締結された軍事海洋協議協定(MMCA)に基づき2020年12月に予定されていた仮想形式での年次二国間高官協議にも中国側は姿を見せなかった。

同協議は緊張の緩和と危機の回避を目的として、対話の促進、海上・航空の安全性の向上、行動規範の見直し、確立された手順の確認を行うものである。 米インド太平洋軍(USINDOPACOM)元司令官のフィリップ・S・デービッドソン(Philip S. Davidson)海軍大将は2020年12月に発表したニュースリリースで、「中国が軍事海洋協議協定に基づく二国間協議に欠席したことは同国が約束を尊重しない国であることを示す新たな一例となった。今後、中国と合意を結ぼうとする諸国はこのことを心に留めておくべきだ」と批判した。

米インド太平洋軍によると、米国国防総省は引き続き危機の予防と管理、一致した利益における協力、距離的に接近した場所で活動する部隊のリスク削減を交渉の優先事項に据えている。米国は「中国人民解放軍との安定した建設的かつ結果志向の関係確立の機会を今後も模索し、適切な協議の場で中国人民解放軍の懸念に対処する」構えである。  

(Indo-Pacific Defence Fourm)

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