衰退止まらない「一帯一路」中国余力なく 貸付額はピーク時から大幅低下

2021/08/18 更新: 2021/08/18

 複数の報告書によると、近年、国内外における精査が強化されている現状に伴ない中国政府が一帯一路(OBOR)事業を縮小している可能性がある。専門家等の見解では、新型コロナウイルス感染症パンデミックにより中国側が労働者や設備を安全に運搬することが困難になっているだけでなく、一帯一路インフラ開発事業における契約内容と実現し得る実際の成果について事業受入国がより熱心に比較評価を実施するようになったことで中国にとって負の要素が増加している。

労働権利団体「チャイナ・レイバー・ウォッチ(CLW)」の報告書によると、一帯一路事業は劣悪な労働条件や安全性の欠如、場合によっては強制労働の問題という面でも評価が低下している。同団体の2021年4月報告書には、パンデミック発生以来、数十万人の中国人移民労働者が海外で立ち往生し、権利を侵害された実態が示されている。

同団体の報告書には、「当団体が取材した労働者の中には、パスポート差し押さえ、移動の自由の制限、1日12時間・週7日間という過酷な労働時間、休暇手当皆無、賃金未払、査証の不正発給、詐欺的な雇用と虚偽の約束、地域社会からの孤立、威嚇と脅迫、退職に対する厳しい罰則、医療制度の欠如、劣悪な生活環境と労働条件、不十分な労働保護と安全手順、合理的な苦情処理システムや機構の欠如、言論の自由の制限、抗議者に対する厳しい罰など、広範にわたる権利侵害が発生している」と記されている。

2021年初旬、一帯一路に関連してオーストラリアのビクトリア州政府と中国が署名した覚書の150兆円相当(1兆5,000億米ドル)のインフラ契約を見直したスコット・モリソン(Scott Morrison)豪首相は、後に「不合理」かつ「自由で開かれたインド太平洋を目指す豪外交政策と合致しない」として、2018年に締結された契約を撤回すると発表した。 デイリー・メール紙が報じたところでは、中国が仕組んだ「バックドア」によりオーストラリアに悪影響がもたらされる可能性に言及したモリソン首相は、正式に覚書を撤回する数週間前に「同インフラ事業で利益がもたらされたという事例は聞いたことがない」と述べている。

フィナンシャル・タイムズ紙とニューヨークに拠点を置く中国系英字メディアサイト「SupChina」は、一帯一路の勢いの衰えについて以下のような要因を指摘している。 透明性と環境配慮の欠如や融資先国における統治の欠如など、一帯一路事業を巡る国際的論争の高まり 中国経済が減速する状況の中、中国の対外融資政策に対する中国国民の懸念が高まったことで発生した国内論争 膨れ上がった債務を抱える開発途上国の経済状況がコロナ禍で悪化し、一帯一路インフラ事業に関連する債務を中国に返済することが一層困難になったこと 2021年3月の外交問題評議会(CFR)報告書「China’s Belt and Road:Implications for the United States(仮訳:中国の一帯一路:米国への影響)」でも、一帯一路の減速要因としてパンデミックが強調されている。

外交問題評議会は「OBOR」ではなく「BRI」の呼称を使用しているが、同報告書には、「パンデミックにより外国への中国人労働者と物資の流れが低速し、事業代支払能力を喪失した事業受入国は高価なプロジェクトを停滞または撤回することを余儀なくされたため、BRI[一帯一路政策]と複雑な事業実施計画が強烈な影響を受けた」および「さらに、BRIが発足されてから数年後、一部には中国政府のマクロ経済調整のために同国の経常海外余剰と外貨準備が減少した。

中国にはかつてのような財務面での余力がもはや残っていないために多くの事業が延期・中止され、中国の銀行がBRIプロジェクトを精査するようになったことから、貸付額は2017年のピーク時から大幅に低下している」と記されている。

フィナンシャル・タイムズ紙によると、一帯一路事業への融資額が頂点に達したのは中国の国家開発銀行(CDB)と中国輸出入銀行が7兆5,000億円相当(750億米ドル)を貸し付けた2016年である。SupChinaの報道では、2019年までにこうした銀行からの融資額は4,000億円相当(40億米ドル)に減少した。 

また、戦略国際​​問題研究所(CSIS)報告書「Parallel Perspectives on the Global Economic Order(仮訳:世界経済秩序に関する平行透視)」の第9章「The Belt and Road Initiative:Progress, Problems and Prospects(仮訳:一帯一路政策:進展、問題、展望)」を執筆した方晋(Fang Jin)中国開発専門家によると、地域社会や経済への長期的な影響を考慮することなく「突貫工事」的に建設が進められたことで、完成した事業の多くは施工不良である。

同専門家著の章には、「一部のプロジェクトは長期的な経済的利益を十分に考慮することなく突貫工事で実施された。多くの場合、こうした事業は政府や政策による支援に過度に依存している」および「別の極端な例として実施機関が中国自体へのBRIのメリットを重視し過ぎることが挙げられる。特に、こうした機関は現地の地方自治体、地域、企業の懸念を配慮せずに実施機関側のみの利益しか算段していない」と記されている。   

(Indo-Pacific Defence Forum)

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