中国の人質外交 カナダでの干渉工作(上)=仏報告書

2021/10/11 更新: 2021/10/11

フランス国防省傘下の軍事学校戦略研究所(IRSEM)はこのほど、「中国(共産党)影響力」と題する報告書を発表した。 その一部は、カナダにおける中国政府の浸透と干渉工作の実態を記録した。孟晩舟事件によって注目された中国の人質外交のほか、中国在外公館の諜報活動、中国留学生連合会に対するコントロール、カナダ人に対する嫌がらせ・脅迫工作を明らかにした。

9月25日、米国の法律に違反したことを認めた中国通信機器大手華為(ファーウェイ)の孟晩舟(モウ バンシュウ)副会長が釈放された。3年間、中国当局に拘束されていた元カナダ外交官のマイケル・コブリグ氏とビジネスマンのマイケル・スパバ氏も同日、無事にカナダに帰国した。

2018年12月、カナダ警察は、米国の要請を受けてバンクーバー国際空港で孟副会長を逮捕した。9日後、中国政府はスパイ容疑で2人のカナダ人を逮捕、孟副会長を釈放しなければ深刻な結果を招くと警告した。諸外国はこのやり方を「人質外交」と名付けた。

中国政府によるカナダ人拉致の実態

報告書は、中国政府の今回の人質外交を「カナダ人拉致」と改めて定義する。

今回のカナダ人拉致は初めてではない。2017年、北京で中国系カナダ人の孫茜(ソン チェン)氏、第三国でカナダ国籍のウイグル人活動家、ハシインカン・セリー氏がそれぞれ警察当局に拉致された。

孫氏は北京利徳曼生物化学の創設者、2007年にカナダに帰化した。その個人総資産は37億元(約630億円)に上り、2012年と2016年、胡潤の中国富豪ランキングにランクインした。いくつかの病を患った同氏は2014年から、中国で禁止されている気功健康法・法輪功を始め、健康を取り戻したが、当局の迫害を受けるようになった。

2017年2月、孫氏は中国警察当局に不法逮捕され、法輪功をやめることを強要された。カナダ紙のグローブ・アンド・メールによると、代理人弁護士の話では、同氏は手足に錠をかけられたまま鉄の椅子に縛られ、こしょう水を噴射され、長時間の洗脳と精神的拷問を受けた。

カナダ政府と在中カナダ大使館は孫氏とその家族の支援に乗り出した。いっぽう、孟晩舟事件が起きた後、同氏の境遇はいっそう悪化した。

2020年5月27日、カナダ・ブリティッシュ・コロンビア州高等裁判所は、米国での罪がカナダでも罪に相当するかという問題について「双罰性は成立する」との判決を下した。1カ月後、孫氏は中国当局に8年の懲役刑を言い渡され、カナダ国籍を強制的に放棄させられた。

中国の人質外交の被害者は、ほかにも複数いる。

ウイグル人のハシインカン・セリー氏は2001年、家族とともにカナダに逃れ、カナダ国籍を取得した。2006年、妻とともにウズベキスタンの親族を訪ねた際、ウズベキスタン警察に逮捕され、中国に強制送還された。 カナダ政府は抗議したが、中国政府はセリー氏はテロリストだと主張し、15年の懲役刑を言い渡した。

ロバート・シェレンバーグ氏は2018年11月、麻薬密輸の罪で中国当局から15年の実刑判決を言い渡された。 孟氏がカナダで逮捕された数日後、中国当局は判決を覆してシェレンバーグ氏に死刑を言い渡した。 翌2019年4月、カナダ国籍のファン・ウェイ氏も麻薬密輸の罪で中国で死刑判決を受けた。

カナダのトルドー首相は、中国政府がカナダ人に対して恣意的に死刑判決を下しているとして、遺憾の意を示した。カナダ政府は、中国政府は法律を恣意的に施行するリスクがあるとして、中国への渡航注意喚起を発令した。中国政府は「人質外交」を「死刑外交」に進化したという見方も浮上した。

孟晩舟事件後のアンケート調査では、カナダ人の8割以上が中国の最高指導者を「好きではない」と回答した。

カナダのジャーナリスト、ジョナサン・マンソープ氏は2019年、『パンダの爪』と題する著書を出版した。中国政府がカナダに与えた影響と恫喝活動を暴露する内容だ。本書はカナダ与野党に中国共産党の浸透と脅威に対して警戒するよう促し、議論を巻き起こした。

近年、カナダでの中国のスパイ活動や浸透工作が次々と明るみになり、中国政府の信用は失墜している。

反体制派を沈黙させる

「反体制派を黙らせる」ことは、カナダにおける中国政府の干渉活動の一環だ。

反体制派や脅威と見なされた対象が嫌がらせ、脅迫を受ける事例は枚挙に暇がない。証拠もある。

中国政府が敵だとしているのは主に、ウイグル人、チベット人、法輪功、民主活動家、台湾独立派などだ。

フランスのジャーナリスト、ファブリス・デ・ピエールバーグ氏とカナダの安全保障情報局の高官グノカ・スア氏は2009年、中国政府は長年、カナダで反体制派を弾圧しているという調査結果を発表した。「中国の諜報機関と在外公館が結託して、カネ、時間、精力を費やして反体制派に汚名を着せたり、脅したり、また、違法な手段で民主化促進団体、華僑コミュニティー、中国留学生連合会などに浸透して、関連団体を統制している」という。

(つづく)

(翻訳編集・叶子)