2021年8月、ベトナムのニャチャンに所在する電気通信大学のIT・外国語センターにおける防衛任務向け情報技術(IT)システムの開発支援を目的として、インドが5億円相当(500万米ドル)の助成金拠出を約束した。これによりインドとベトナムの両国間で強力な防衛関係を再確認することとなった。
2016年に両国の関係を包括的な戦略的パートナーシップに格上げすると発表したベトナムとインドはその後も防衛関係強化に向けて定期的な取り組みを継続し、ここ数ヵ月間にも協力を重ねてきた。こうした関係が今回の助成金に繋がることになった。
大学校長を務めるレ・スアン・ハン(Le Xuan Hung)大佐がベトナムのPANO(People’s Army Newspaper Online)に説明したところでは、同センターは2015年の設立以来、防衛任務の必要性を満たすことを目指して、2万人を超える受講生を対象にネットワーク管理、プログラミング、情報セキュリティ、外国語の訓練・講習を提供してきただけでなく、IT製品開発にも関与し、30超える国内外の提携諸国・機関の訓練やITコラボレーションを支援してきた。
8月11日に開催された助成金授与式で、インドの優れた貢献と協力に対して感謝の意を表したベトナム人民軍のホアン・スアン・チェン(Hoang Xuan Chien)上将は、強化・拡大された二国間防衛協力体制により、教育と訓練、防衛産業、国連平和維持活動といった分野に具体的なメリットがもたらされたと説明している。
インドによるITシステム開発支援に関する記事がPANOに掲載されたのは2021年1月のことである。ベトナム国防筆頭次官のグエン・チー・ヴィン(Nguyen Chi Vinh)上将は、同センター拡張が両国の協力関係の重要なヤマ場となったと述べている。
PANOの報道では、2018年に両国政府が締結した二国間協力に関する覚書(MOU)にはIT・外国語センターの強化計画が含まれている。インド国防省が発表したところでは、同覚書には人材育成における広範な協力関係および両国の陸海空の軍隊と沿岸警備隊の間における協力体制だけでなく、サイバーセキュリティと情報交換に関する内容も含まれている。
助成金拠出発表の5週間前にハノイを訪問してベトナム国防相のファン・バン・ザン(Phan Van Giang)大将と会談したインドのラジナート・シン(Rajnath Singh)国防相は声明を通して、「長年にわたりインドとベトナムは困難な時期に相互支援するという伝統を分かち合ってきた」とし「近年では防衛産業の協力という面で大きな進歩を遂げた」と述べている。
インドのS・D・プラダン(S.D. Pradhan)元国家安全保障担当副補佐官はザ・タイムズ・オブ・インディア紙に掲載された記事で、こうした進展は両国の関係が包括的な戦略的パートナーシップに格上げされた2016年以来締結された複数の防衛協定の中に示されていた目標が着実に達成されていることを示すものであると述べている。
プラダン元副補佐官が著述した記事によると、複数の二国間協定の中には非常に際立つものがいくつかある。これには2020年12月に締結された防衛産業協力の取り決めの実施およびインド原子力規制委員会とベトナム放射線・原子力安全庁(VARANS)との間で結ばれた原子力協力の2件が含まれる。また、プラダン元副補佐官は100億円相当(1億米ドル)の融資枠の下で2020年にインドが高速哨戒艇をベトナムに納入した事例およびインド製造の船舶9隻をベトナムが調達した事例にも言及している。
(Indo-Pacific Defence Forum)
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