中国政府はブータンと係争中の国境地帯で「村開拓」を進めており、6カ所で200棟以上の建物を建設中であることが分かった。専門家は、既成事実化を狙うこのやり方は、南シナ海で人工島を建設し領有権を主張する手口と同じだと指摘する。ロイターが13日報じた。
ロイターは、米商用電波観測衛星運用企業のホークアイ360(HawkEye 360)社から最新の衛星画像と専門家の分析結果を入手し、さらに別の専門家に分析を依頼した。その結果、村づくりの詳細を確認した。2020年の年初から工事が始まり、21年に建設が加速したという。
ロンドン大学東洋アフリカ研究学院(SOAS)のチベット問題専門家ロバート・バーネット氏によると、中国当局は2017年、チベット自治区の国境地帯に600以上の村を建設する計画を発表し、今回の建造物は同計画の一部とみられる。
中国と国交を結んでいないブータンは中国のチベット自治区と国境を接している。人口が80万人足らずの同国はここ40年間、中国政府と477kmの国境線の画定をめぐって交渉を重ねてきた。
ブータンにとって、国境線問題は領土保全にとどまらず、主要同盟国であるインドの安全保障にもかかわる重要事項である。
建設中の村は、中国、インド、ブータンが国境を接するドクラム高原から約9~27キロの場所にある。この場所で中国が軍用道路を建設したことが原因で、2017年、中印の軍隊が2カ月以上対峙していた。
ドクラム高原の南に位置する「シリグリ回廊」は、最小幅わずか22kmで、インドの中枢地帯と北東部を結ぶ同国最重要地域だ。中国がドクラム高原を制御し、さらに南下してシリグリ回廊を侵攻すれば、北東部7州が孤立するおそれがあり、インドにとっては戦略的に重要な地域と言える。
専門家やインド国防省当局者はロイターの取材に対し、中国がこの場所で村建造したのは国境地域をより効果的に管理・監視するためであり、軍事施設として利用する可能性があると述べた。
米ジョンズ・ホプキンス大学のハル・ブランズ教授は、中国側の行動は土地収奪にあたり、南シナ海での人工島建設と同じように既成事実化を企図していると指摘した。
オーストラリア戦略政策研究所の研究員ネイサン・ルザー氏はロイターに対し、インドとブータンにとって、中国政府の既成事実化戦略にどう対処するかは難題であると述べた。
中国外務省は、村の新設は「地元住民の労働・生活条件の改善を目的としている」とし、「自国領土内での建設活動である」と主張した。
ホークアイ360の画像を分析した2人の専門家は、新しい村は中国とブータンが係争中の領域にあり、資源はほとんどなく、また原住民もほとんどいないと述べた。前出のチベット問題専門家バーネット氏によると、中国政府は村に移住した中国人に補助金を出している。
(翻訳編集・叶子静)
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