中国と友好関係にあるとされるロシアは最近、中国政府の不満を買う行動をとり続けている。一つは、インドとの軍事協力を強化したこと。もう一つは、南シナ海で中国と領有権紛争中にあるインドネシアの石油採掘を支援したことだ。専門家はロシアは中国、インド、米国の間で自国の利益の最大化を図っており、「中国が思っているほどの友好関係ではない」と指摘した。
中国よりインドに優先的に武器提供
6日にプーチン大統領がインドを訪問し、ニューデリーで両国の外務・防衛大臣が初の戦略対話を行った。両国は「特恵的戦略パートナーシップ」のさらなる強化に向けた一連の協定に合意した。
訪問の重要な議題の一つは、ロシアがインドに納入を始めている5基のミサイル防衛システム「S-400」。最先端のミサイル防衛システムに数えられるS-400は、中印国境でインドと軍事的な睨み合いが続いている中国にとって、大きな脅威である。
インドのメディアは、今回ロシアから購入した兵器は、中印国境地帯に配置されると報じた。
中国政府が2014年にこのミサイル防衛システムの購入をロシアに申し込んだのに対し、インドは4年遅れて2018年に申し込んだが、中国よりも先に手に入ることになった。大紀元のコラムニストの秦鵬氏は、中国とロシアのいわゆる「包括的・戦略的パートナーシップ」は名実が伴っていない現れだと裏読みした。
今回の会談は、ロシアとインドの軍事的関係の発展につながったとみられる。両国は、インドがロシアからAK-203アサルトライフル60万丁を購入し、インド国内で生産するという契約を結んだ。また、インド軍とロシア軍が互いの基地や後方支援施設を利用できるという条款が協定に盛り込まれている。
米国営放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)は、インドとロシアが新たな同盟関係を構築しつつあると報じ、インドと米国の戦略的利益がますます絡み合う一方で、インド・ロシアもまた二国間関係に勢いをつけようとしていると評した。
南シナ海におけるインドネシアの油田開発を支援
ロシアが南シナ海で中国政府と領有権係争中のインドネシアの石油採掘を支援していることも、中国政府の逆鱗に触れている。
インドネシアは今年6月下旬から11月下旬まで、南シナ海の最南端に位置する北ナトゥナ海のトゥナ鉱区で掘削作業を続けていた。ロシアのメディアによると、この掘削作業はロシア国営石油大手、ザルベズネフチ社が担当し、同社は同鉱区の半分の株式を保有している。
ザルベズネフチ社のクドリャショフ社長はこのほど、南シナ海でインドネシアとベトナム が所有する鉱区を統合して、天然ガス採掘を中心とした油田・ガス田群を構築する計画に言及した。
中国政府は過去に、ロシアがベトナムの南シナ海での油田開発を支援したことに抗議したことはあるが、ロシアとベトナムはその後もこの分野の協力関係を続けている。
ベトナムのグエン・スアン・フック大統領が最近ロシアを訪問した際、ザルベズネフチ社のクドリャショフ社長も両国首脳会談に同席した。両首脳は、エネルギー分野での協力強化を改めて確認し、合意書に署名した。
東南アジア問題に詳しいロシアの学者ロクシン氏は、ロシアは南シナ海問題で思っているほど中国政府を支持しているわけではないと述べ、中国政府が地図上に引いた中国の領海を示す「九段線」は国際法上の根拠がないという見解を示した。
軍事同盟の締結はないと明言
プーチン大統領が今年10月中旬、ソチで記者団の質問に対して、ロシアと中国は軍事同盟を結ぶ考えはないと答えた。中国外交部の汪文斌・報道官は定例記者会見でこの発言について聞かれて、「両国は同盟国ではないが、同盟国以上の友情で結ばれている」との解釈を示した。
前出の秦鵬氏は、プーチン大統領は中国、米国、インドの間で上手く振る舞い、自国の利益を最大化しようとしていると指摘した。「ロシアは中国政府が口々に言っている『古き友』ではないことは明らかだ」と述べた。
(翻訳編集・叶子静)
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