米水泳協会役員が辞任 トランスジェンダー選手の参加をめぐり

2021/12/27 更新: 2021/12/27

トランスジェンダーの女子運動競技の参加を巡り論争が巻き起こっている。17日、30年間に渡り米国の水泳協会で役員を勤めてきたシンシア・ミレン氏が「生物学的な男性が女性と競争するスポーツを支持することはできない」と声明を発表したのち、辞職した。

ことの発端は、男子水泳選手として活躍していたリア・トーマス氏がトランスジェンダーとして女子競技大会に参加したことだ。500メートル自由形では4分34秒06をマークするなど、ペンシルベニア大学の自由形女子大学記録を3つ更新。数か月後に控える全米大学体育協会(NCAA)の女子選手権のチャンピオン候補にも挙がっている。

米水泳雑誌「スイミングワールド」によると、トーマス氏はテストステロン(男性ホルモン)の抑制治療を1年間以上受けるなど、NCAAが定めるトランスジェンダーの女子運動競技の出場条件は満たしているという。しかし、男性として成長する過程で得た身体的な優位性があるとミレン氏ら一部のスポーツ専門家は異議を呈している。

ミレン氏は辞表のなかでリア氏の才能を称えるいっぽう「身体は決して変わることはない」と指摘。「公正な水泳(の競技環境)は全て壊されてしまった。男子が女子と競争するスポーツには関わることはできない」と決断に至った想いを打ち明けた。

スイミングワールドの編集長、ジョン・ローン氏も論説を発表。「男性として20年近くにわたり鍛えた体の強さは、1年間のホルモン抑制治療で消えるものではない」とした上で、女性選手にとって不公平だと懸念を表明した。

米テキサス州では10月、女子競技の公平性と安全性を確保するため、トランスジェンダーの選手が女子運動競技に参加することを禁止する法案を可決。フロリダ州やミシシッピ州、テネシー州など9州でも同様の法案を施行している。

米国をはじめ国際関係担当。
関連特集: 社会問題