中共ウイルス(新型コロナウイルス)が2年前に中国武漢で発生して以来、中国は「ゼロコロナ」対策を実施してきた。感染力の強いオミクロン株が急速に広まるにつれ、都市封鎖という同対策は限界に近づいていると専門家は予想している。
ドイツの著名なウイルス学者、アレクサンダー・ケクレ氏は11日の国内ラジオ番組で、多くの国際的な専門家の共通の認識として、オミクロン株のまん延により、中国政府の「ゼロコロナ」対策は経済と社会に深刻なダメージをもたらすが、解決策にならないと述べた。
「中国国民だけではなく、世界経済に関係する問題だ。(中略)すでに半導体や自動車産業など、さまざまな業界のサプライチェーンに問題を起こしている」と同氏は論説した。
いまも都市封鎖が続いている西安市では、食料品の供給が不足し、妊婦や心疾患の患者が診療を拒否されるなどの問題が発生し、市民の不満が高まっている。
米政治リスクの調査会社ユーラシア・グループは、3日に発表した2022年世界の「10大リスク」で「No zero Covid(ゼロコロナ政策の失敗)」を1位に挙げた。中国が中共ウイルスの変異型を完全に封じ込められず、経済の混乱が世界に広がる可能性を指摘した。
「より深刻な経済的ダメージ、より広範な国家介入、より高まる国民の不満など問題は噴出する」と報告書は記した。
シンガポール国立大学東アジア研究所上級研究員の林大偉氏は、独国際公共放送「ドイチェ・ヴェレ」の取材に対し、中国の防疫対策は経済への影響を第一優先順位にしたことがなかったと述べた。
香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」は野村證券の香港駐在チーフ中国エコノミスト陸挺(Lu Ting)氏の見解を報じた。同氏は2021年12月発表のレポートで、ゼロコロナ対策のコストは増大になる一方で、中国が世界のサービスや貿易から排除されるリスクが高まると予想したという。
ゼロコロナ対策は、サプライチェーンの国外シフトを加速させ、外需に影響を与える。内需の牽引役である不動産市場は債務危機や、中共ウイルスによる消費市場への影響を受けている今、当局は市場の信頼を回復しつつ、ゼロコロナ対策をいかに継続するかという難題を抱えている。
世論の反対も高まっている。政府の防疫政策に疑問や批判を呈するネット書き込みは増えている。国際人権NGOのヒューマン・ライツ・ウォッチの中国上級研究員である王亜秋氏はドイチェ・ヴェレに対して、「ネットで発言すると処罰を受けかねないため、ほとんどの中国人は黙っている」と市民の間に不満が溜まっていることを指摘した。
(翻訳編集・叶子静)
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