中国政府系メディア「新華視点」の記者はこのほど、研究者に扮して、学術論文を大量生産する「地下論文工場」に接触し、その実態を明かした。
「新華視点」11日付によると、地下論文工場が横行しているのは「高度な専門知識を必要とする学術界では、昇進を希望する研究者は、一定数の学術論文の発表を求められる」からだという。論文工場は、論文の作成だけでなく、専門誌への投稿や発表も代行するという。
新華視点の記者は、専門医と称して複数の論文工場に接触し、国際学術誌に掲載されるSCI(科学技術分野の論文データベースの1つ)の論文を依頼した。記者は各業者に前金を支払い、基本的な研究情報を提供した。うち1社は、記者に対してすでに作成された英語論文を薦めた。作成と投稿を含めて、料金は3万7500元(約68万円)。
地下論文工場で働いていた男性は、医学分野の論文を「生産し」「品質を維持する」にはある程度の医学知識を身につける必要があると話した。書き手には「(大学の)医学部で学び、医学博士号を持つ人が多い。バイオ関連企業に勤務した経験もある」という。
男性によると、一部の書き手は入社前、「論文工場に採用されたと知らなかった」。ただ「研究成果を売買することは、科学研究を行うことより儲かる」という。
男性は、論文工場は「各雑誌の好みを研究し」、論文の構造が決まっている科学研究分野を選び、論文の「大量生産」を実現していると述べた。
「新華視点」の記者によると、論文工場は大量投稿を通じて、一部の雑誌出版社と良好な関係を築いた。一部の書き手は雑誌の審査員となっている。論文工場は、論文が支障なく掲載されるために、雑誌の審査員に賄賂を渡すこともあるという。
独ルプレヒト・カール大学ハイデルベルクの生化学センターのヤナ・クリストファー(Jana Christopher)氏らは2018年、中国の論文工場の存在に気付いた。
クリストファー氏が編集者を務める欧州生化学連合(FEBS)科学ジャーナル、FEBS Lettersは昨年6月、「他の論文と文章構造が似ている」「注釈スタイル、図表などの構成が他の論文と同じ」「異なる作者の原稿は同じパソコンを使っている」など、中国側のねつ造論文の8つの特徴を指摘した。
(翻訳編集・張哲)
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